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ナギ記  作者: 竜顔
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かぼちゃ

 テストが終わってから数日。最近のクゥちゃんは凄まじい。というのもイベント用の衣装は自動鉄壁の効果のおかげでダメージは受けない。最初は普段のようにヒット&アウェイを繰り返していたクゥちゃんも「なんでこんなことやってんだろ」と今ではノーガードで一方的に殴り続ける。


 その時にはもちろん猛獣のような空気がまとわりついていて、これが普通の虎ならば恐怖を感じたことだろうけど多少デフォルメされた虎の着ぐるみなので何とも言えない感覚に襲われる。


 今回のイベントでは午前11:00になると最新のランキングが公表される。【猛者の証】の有用性を知っているホムラやジェットさんあたりが常に上位をキープしていてがんばっているみたいだ。


 週末になり、ゲーム内の時間に左右されない各ダンジョンは人で溢れていた。私達が狩場にしてきた聖樹も例外ではなく普段使っている12階も割り当てられるのは一室のみだ。


 そしてやってくるモンスターは虎の着ぐるみのクゥちゃんによって一瞬で処理されてしまうので、何とも退屈である。


 とはいえ仮にダンジョンでない場所もすごいことになってるみたいだし、あとは別のパーティとは遭遇しないタイプのダンジョンだけだけど、運悪くそれを狙ったパーティにカッサがついていったためその手段をするには人を呼ばなきゃいけなくなるのでまた手間がかかる。


 より上の階層に行けばまた違ってくるだろうけど聖樹の構造がそれをまた妨げている。


 20階でボス、そして25階にもボスがいて、特に25階のボス「バラオー」は最強モンスターの一体に数えられるほど強いらしく、戦ったプレイヤー曰く2~3PT向けの相手にあのスペースで1PTしか戦えないとか無理、とのこと。さらに突破者曰く25階を突破できたら40階までいける、らしい。


 つまり25階が一つの大きな壁になり、イベントの性質上数を倒すことが最重要なので25階より下に人が集中してしまう。それに今の装備なら、とボスへの挑戦待ちをしている人も多いので上に行っても人が溢れてしまっている状態だ。


 中にはもう上位は無理と割り切ってノーダメージになる現在の装備で、普段ならいけない土地や、突破できないダンジョンの方に力を使って、イベントはそのおまけみたいな人もいる。


 とにかく、部屋にモンスターが入ってくる、クゥちゃんが戦闘モードになる、クゥちゃんがモンスターを倒す。のループ状態になって抜け出せない…というか周りは抜け出すつもりがない。


 今一緒のパーティメンバーはクゥちゃんの他に、舞浜君とバカップルだ。舞浜君はいつでもクゥちゃんと交代できるようにしているし、バカップルは別世界だし。


「お、またレッドパンプキンだ」


「おおーよかったね」


 私はクゥちゃんをほめてばかりだ。巷ではこういうのを寄生というらしい。でも仕方ない、本人はもはや乗り気だし…と言うか最近クゥちゃんの何かが覚醒したのか爛々とした雰囲気でモンスターに躍りかかっている。


 現在のクゥちゃんの状況について私はダメなことかもしれないと思ってみんなはどう思ってるか聞いてみたらミカちゃんは


「着ぐるみを着たことで本当に虎になったんじゃないですか? ほら、教科書にもありませんでした? 虎になる話」


 とのこと、虎になる話はあった気がするけど多分これは違う。ゆうくんは


「さぁ? でも今までああいいう雰囲気になることもありましたし…虎の着ぐるみもあってテンションが上がってるだけじゃないですか?」


 と彼女とは違いバカップルの片割れとは思えないほど冷静な回答が返ってきた。舞浜君は


「拳系の人って普段はヒット&アウェイが普通だけど今はノーガードで殴りっぱなしにできるからそれを楽しんでいるんじゃないかな?」


 とこちらも心配する必要はない、といった回答が返ってきた。同じ部屋にいる私とクゥちゃんのファンだという不審者に聞くと


「ドSなだけでしょ…はぁはぁ」


 と鼻息が荒く目も爛々としていて思わず舞浜君がその人から私を引き離したぐらいだ。その時ばかりはバカップルも警戒心をあらわにしていた。…肝心のクゥちゃんはモンスターを一方的に殴っていた。


 その不審者は話しかけた時以外は静かにクゥちゃんを見つめている。と思わせて私を見てるときもある。


 同じパーティになってかぼちゃをゲットしようとするわけでもなく、気が付けば出来上がっているMPポーションをクゥちゃんが休憩するたびに渡しているのでなんだかんだ放置している。


 とはいえ目的が分からないので舞浜君と私は一応警戒している。


「はぁ、思ったよりモンスター来なくなったねぇ…再生が間に合わなくなったのかなぁ」


 一通り戦闘を終えてクゥちゃんが私達のところにやってくる。その途中サッと差し出されたMPポーションを受け取ってクゥちゃんはそれを飲む。ゲームでなければそんな怪しい物飲んではいけない、と言うところだけどまぁ大丈夫そうだ。


「で、どうするのあの人?」


 私の近くにまで寄ってきたクゥちゃんは不審者を指さす。そのピンク色のナース服を着た女性は今も頬に手を当ててイヤンイヤンと体をくねらせている。そう、その不審者は女性だった。


 金色の首のあたりまで長さの髪、目はくりっとしていて肌は白くその頬は柔らかさを感じさせ、見た目だけなら十分男性を惹きつける魅力がある。身長は大体160とちょっとくらいで私やクゥちゃん、ミカちゃんよりも高い。


 そんな女性は私とクゥちゃんが会話をするときに限ってテンションが高ぶっている。これまで女性の「危ない」人には会ってきたけど、シンセさんみたいにかわいい物は何であれ愛でる、というタイプでもなく、ラズベリーさんみたいにからかってるわけでもない。


 そっちの世界の人なのかと思っていたら舞浜君と三人で話してるときにバカップルの二人から


「何々三角関係? ナギ様は実は二刀使いなのね、クゥ様負けてはだめよ、て聞こえてきたんですけど…あの人本当に怖いんですけど」


 と報告があったのでもしかしたら妄想の世界の人なのかもしれない。


 クゥちゃん問いかけにどうすべきか悩んでいると舞浜君が口を開く。


「出ていってもらうか、そろそろ聖樹から出る? 人も多いしなんか寄生してるみたいでいやだし…あとミカちゃんとゆうくんの二人が暇そう…ていうか二人だけの世界だし」


「そうだね、別の場所を探そうか、あればいいけど」


 と丁度その時だった。


「お、カッサからコールだ…どうやらカッサ空いたみたいだな」


 舞浜君のところに一緒に行動していたパーティと別れたとカッサから連絡が来たみたいだ。


「じゃあカッサさんも合流して他のダンジョンの方に行くんですか?」


 それを聞きつけたミカちゃんが問いかける。全員異論はなかったので結局カッサのもとに向かうことにした。


「待ってぇー」


 背後から聞こえる声に追いつかれないように走りながら――


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン使い】Lv27【STR増加】Lv27【ATK補正】Lv8【SPD増加】Lv23【言語学】Lv41【視力】Lv44【アイドル】Lv29【体術】Lv30【二刀流】Lv43【水泳】Lv28


控え

【幸運】Lv50


 SP37


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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