表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナギ記  作者: 竜顔
147/276

嫌な時間はすぐに過ぎる。

 シンセさんのところで子猫の相手をしたあの日からは決意をより固めてログインすることもなくテストに向けた準備をしていた。中間テストだからと必死さを見せない人も多い中で、私は結構必死だ。テストの点数が悪くなってると何言われるか分かったものではないので。


 これは、これからも『○○記』を続けられるか否かがかかった重要な戦の第一戦目だと考えるべきだろう。結衣ちゃんもテスト勉強に協力してくれるのでありがたい。


 舞浜君も私を見て触発されたのか結構頑張っている。彼はこれまで一夜漬けタイプだったらしいけど、確か彼の1学期の成績は私よりも良かった気が…。と思うとちょっと悲しくなってきた。


 翌週。週末に向けて直前になってやる気出す組もボチボチと本腰を入れ始める。各教科の先生もいつになく緊張感があると驚いていた。


 そんななかでもマイペースな京ちゃんから今週のアップデート情報を伝えられる。どうやらエイローが実装されたらしい。そして一周年記念とハロウィンイベントの合体による仮装パーティ用のコスプレ衣装装備が報酬で受け取れるクエストがそれぞれの町で受けられるようで、町やクエストによってその衣装も違うらしい。


 そんな面白そうな話を聞いてもログインせずに耐える。テスト前日に舞浜君に衣装の話を振ったらちゃっかり集めているらしいことが分かった。なのでできれば私の分も…とお願いしておいた。


 中間テスト初日。手ごたえはまぁまぁ…。いや、大丈夫なはずだ。帰りのホームルームの後京ちゃんが駆け寄ってくる。


「どうだった、渚? あと今日はどうする? このまま直で帰る?」


 テスト期間中は午前中で終わるので、お昼をどうするか聞いているんだろう。


「じゃあ、食べてから帰る」


 あえてテストのことには触れない。


「そ、じゃあ結衣にも聞いてくるね」


 そう言って京ちゃんは結衣ちゃんのもとに駆けていく。


 その日は三人でランチを食べながらテストの答え合わせみたいな感じでワイワイした後、そのまま家に帰って次の日の教科の確認を行った。


 二日目…。手ごたえは完璧! と思ったら舞浜君と話していると間違ってると思われる個所が結構あって不安が募った。


 帰りにはいつもの参院でランチを食べてぶらぶら…。休日を挟むので「まぁいいかな」と言う気持ちになったのは事実だ。


 家に帰ったら久しぶりにログインする。


『おひさー』


 ログインしたらすぐにクゥちゃんからコールが来た。


『テスト終わった?』


『まだ、でも明日休みだしと思って…』


『ボクもそんな感じかな』


 と少し会話した後場所を決めて集合する。


 クゥちゃんもテスト期間中らしいけど時々ログインしていたみたいで、すでに目的の仮装用の衣装をゲットしているそうだ。


「どんなの?」


 と聞いたら


「秘密…それはその時のお楽しみで」


 と言われた。


 クゥちゃんから「ナギちゃんは衣装どうするの?」と聞かれたけど、それは舞浜君に任さてあると伝えると一瞬微妙な表情をされた。何かまずかったかな。


 街は仮装用の衣装を身に着けてうろつく人も多く一足早くハロウィンムードになっている。ゲーム内で夜ということもあってそのムードを余計に醸し出している。


 衣装ゲットのクエストがあるので聖樹も人が多いみたいで、クゥちゃんによると狩りに行くにはやめておいた方がいいということでビギに戻って昼の時間帯が来るのを待つことにした。


 エイローはピクシーの森やエルフの里に近いところにあるそうで、出てくるモンスターもそんなに強いわけではないらしい。第六エリアで安定して戦えるならばなんら驚異のない道のりになるそうだ。


 でも私達は第六エリアで安定して戦えるわけではないので苦労しそうだ。


 今日はあくまで気分転換が目的なので、生産系の人の援助でもしようか、ということになった。ホレイーズでの積極的な生産と消費、その後の戦闘系のプレイヤーへの協力、そして現在のイベント前の狩りムードで生産系プレイヤーも、持っている素材が偏ったり必要な素材が満足に足りてなかったりするらしい。


 生産系の人達同士でお互い足りない素材や必要な物を取引して賄っているみたいだけど、戦闘系プレイヤーから持ち込まれる素材が偏りなく持ち込まれないと、そのうち特定の素材だけが足りなくてそれが必要な物を欲する人々に手間がかかることになるだろう。


 自分で集めた素材で装備を作ってもらったりするのはある意味当然だけれど、素材が無い、と断ると別の生産者に依頼されてしまうのでは、と言う不安は常に付きまとうみたいだ。


 ビギの露店を巡りながら足りない素材で簡単に集められそうなものがないか聞くとダントツで「キノミンイエロー」のドロップ品でもある黄色の木の実だった。


 そして露店群を回っていると生産系中心のギルドの人から「ギルドの方に渡してくれないか」と言われたのでそれに頷き、昼になると同時にビギの西門を出る。


 聞いた噂ではこのエリアでは「カッタリー」、「チェイサー」、「イノボン」あたりを倒すクエストで手に入る衣装が人気なようで、それ以外のモンスターには目もくれないプレイヤーが多いみたいだ。


 そのおかげなのか大量にいる…アントが。凄まじい勢いで寄ってくるアントを倒しながらキノミンを見つけては倒し、キノミンが擬態した姿ではない普通の木の実の方は着いてきた生産者の方が収集していく。


 森中のアントを狩りつくしたんじゃないか、という頃に目的の木の実も大量になった。何か文章がおかしい気がするけど気のせいだろう。


 集めた分は全てギルドの方に渡して、報酬は金銭で受け取る。


 結構な時間になった、と思ってログアウトする。


 ログアウト直前にクゥちゃんから


「こうやって油断してゲームするとはまっちゃって勉強を後回しにしちゃうんだよねぇ」


 という不気味な一言をいただいた。


 週末はちゃんと「ほどほどに」ゲームをしてちゃんと勉強した。残りの教科数を考えて油断したのは事実。日曜日からイベントが開始されたけど相変わらず生産系のお悩み解決に力を注いだ。


 特にイベント内容は、特定の装備、つまり仮装装備でドロップするアイテムをどれだけ多く集められるかみたいなイベントで、その装備では通常ドロップがでないため、足りてる足りてないにかかわらず外から持ち込まれるアイテムが減った。


 週が変わってテスト三日目。手ごたえは十分。ちなみにこの手ごたえはいつもよりいい点が取れそう的な感じなだけで決して満点に近づいてるとかそういうのじゃ…。この日は翌日に備えて、できることをやった後は早めにベッドに入った。


 テスト四日目。最終日となる今日はテスト終了後も集会やら何やらが行われる。一応授業も行われないし話を聞くだけで楽なんだけどね。


「終わったぁ~」


 最後の教科のテストが終わり、解答用紙を回収後、自分の席に着いた時に思わず声が漏れた。自分で思ったよりもボリュームが大きくなり、周りの注目を集めることになって顔が赤くなる。


「お疲れ様ー」


 隣の席の女の子がそんな私に微笑みながら声をかけてくれる。


「渚ちゃんなんかあったの? 今回やけに気合が入ってたけど」


 その女の子からの次の言葉は私への質問だった。自覚がなかったけど今回の私はいつもと違うオーラを出していたらしい。それに周りが触発されて、受験直前の受験生みたいな緊張感が出ていたとか。


 ――言えない、ゲームを咎められることなくやるために必死になったなんて言えない!


 その子にはなんとなくはぐらかしてその場を乗り切る。そして私の魂胆を知ってるらしい京ちゃんはそれを見て必死に笑いをこらえていた。


 さて、私にとっては今日からイベントイベント。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン使い】Lv27【STR増加】Lv27【幸運】Lv50【SPD増加】Lv23【言語学】Lv41【視力】Lv44【アイドル】Lv29【体術】Lv30【二刀流】Lv43【水泳】Lv28


 SP39


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

さりげなーくエイロー追加にイベント突入。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ