表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナギ記  作者: 竜顔
145/276

ファルカナンド王国

 結局エルフの二人と別れた後舞浜君とも別れてログアウトした。それから一夜明けた火曜日の昼休み。


「ホレイーズが終わって、スキルの追加がされたみたいね」


 京ちゃんは携帯で公式サイトを見ている。今日の9:00から行われたアップデートの情報が載っているらしい。


「どんなスキルが追加されたの?」


 私は京ちゃんに尋ねる。


 『○○記』では「結局補正スキルで固めた方が強い」説が出ている。そんなことだから私も普段の戦闘では必要なさそうな【言語学】や【水泳】を控えに回して補正スキルを取ろうかと考えている。特にファルカナンド・エンブレムのことを考えるとMPを増やしたいし。


 でも新スキルが私に必要だとまたプランを変える必要がある。


「う~ん、【ヘアセット】に、【召喚】、あとは秘密だってさ」


 と京ちゃんが答える。どうやら趣味系と戦闘系一つずつが公表されているらしい。


「召喚って調教と違うの?」


 私はまた質問する。確か調教で使役できるようになったモンスターはアイテム化してインベントリから出し入れすることで連れ出したり収納できたはずで、呼び出すときは召喚と言う人もいた。


「調教と違って召喚で呼び出せるのは時間が決まっていて、調教のようにモンスターを育てることはできないみたいね、その代り最初から強いみたいだけど」


 一応差別化はされているらしい。


「はいはい二人とも、中間テストがあること忘れちゃだめよ?」


 ここで黙って話を聞いていた結衣ちゃんが口を挟む。来週の終わりからテストが始まってしまう。再来週からは『○○記』の一周年記念イベントがあるらしいのにこのままでは乗り遅れてしまいそうだ。


「だよねぇ~」


「そうなの? 私は一夜漬けで攻略するわよ、竜に付き合わないといけないしね」


 テスト前の勉強のことを考える私と違って京ちゃんは気にせずプレイ時間をほとんど減らすつもりはないらしい。ちなみに「竜」とは竜一君と言って京ちゃんの彼氏さんだ。キョウとリュウで行動しているのはお互いの愛称からきているのだろう。私の周りは自分も含めて安易なネーミングの人が多い気が…。


 昼休みの終わりに私の席の後ろに戻ってきた舞浜君に


「テストが始まるけど舞浜君はどうするの?」


 って聞いたら


「一夜漬けでなんとかする」


 と力強く宣言していた。




 家に帰りついてからログイン…。まだ大丈夫だし。多分。


 ゲーム内は夜ということもあって町には人が溢れていて、ログイン直後に人とぶつかりそうになった。ビギやブルジョールも人が多く、比較的少なかったルージュナで落ち着いたところで、届いていたメッセージを開く。



<褒賞について:From運営事務局>

この度は『○○記』をお楽しみいただきありがとうございます。

「ホレイーズ脱出作戦」の成功おめでとうございます。

今回は褒賞の件についてお知らせいたします。

ナギ様は全てのチェインクエストの工程を終了いたしましたので、

褒賞のアイテムの受け取りはファルカナンドの地で行っていただきます。

その際には必ず【ペルケステス】の腕輪をお持ちください。

ファルカナンドの地へはこの携行用転移ポータルをお使いください。



 という内容で、携行用転移ポータルが付属されていた。



【携行用転移ポータル:ファルカナンド】

特殊アイテム

 使用回数:1


ファルカナンドと繋がっている携行用の転移ポータル。



 さすがに何度も使える代物ではないらしい。


 舞浜君達と合流する前にちゃっちゃと受け取ってしまおうかな。と思って携行用転移ポータルを使う。携行用転移ポータルはシートみたいになっていてそれを地面に敷くと光り輝き始め、その上に乗る。


 すると一瞬で景色が変わり見たことのない土地に出る。


「やや! こんな時間においでになるとは! 予想外でした、すぐに準備をいたします」


 転移させられた場所には兵士が二人いて、その片方がそう言うとどこかへと走り去っていった。


「ここは遷都された王都になっております、突然のことでよく分からないと思われますがファルカナンドを救った者が再び訪れる、という言い伝えのもとここに転移ポータルが作られました」


 きょとんとしている私に残っている兵士が今の状況を説明してくれる。どうやら私のことが救世主として言い伝えられていて、これはその救世主が現れる専用の転移ポータルなんだそうだ。


「あ、一応確認のために証拠を見せていただいてよろしいでしょうか」


 と言うのでファルカナンド・エンブレムを見せてみると


「はい、結構です、どうやら言い伝えの通りのようですね」


 と兵士は納得していた。


 しばらく最近のファルカナンドの様子を聞きながら時間を潰していると、走り去っていった兵士が戻ってきた。


「大変お待たせしました、これより城にご案内いたします」


 と戻ってきた兵士が言うのでそれについていく。


 そして小さな公園のようになっている転移ポータルのある場所から外に出ると、町の光が一斉に灯って明るくなる。


「「「ようこそ!」」」


「「「おかえりなさい」」」


 町中の人々が外に出てきていて歓迎の言葉をかけてくれる。ゴブリン王国の時とはまた違った意味で大変になりそうだと思いながら案内の兵士に付いていく。


 その通りを抜けていくと、大きく見えていた城がより一層大きくなって近づいてくる。


 城門をくぐって城の中に入り、そのまま謁見の間に連れて行かれる。


「救世主様を連れてまいりました」


 兵士が謁見の間の扉を叩きそう言うと、向こうから扉が開かれる。


「では、どうぞ」


 と兵士に促されたので謁見の間に一人で入って行く。謁見の間には兵士等大勢の人がいて、誰か連れてこれるならば連れて来ればよかったと思いながら玉座の前に至る。


 私が玉座の前で立ち止まったのを確認して、青白い髪の色をした40代ぐらいの王様が口を開く。


「よくおいでになった、リーステス王のときより言い伝えられし英雄よ、此度はそなたに我がファルカナンドからのお礼をいたしたい、申し訳ないが後ろを振り返っていただきたい、では、持って来い」


 王様に言われて私は後ろを振り返る。王様の言葉が終わると同時に謁見の間に3人の人がそれぞれ品物を持ったり連れたりして入ってきた。


「では左より授与せよ」


「はっ」


 そう言われた男性の持つ物は剣。それを私に差し出すので受け取る。



【リーステスの剣】

武器カテゴリー:剣

 ATK+0

耐久度∞

効果:誰でも装備可能

   ファルカナンドの力の消費MP0

   装備可能時間10分


かつてのファルカナンド王、リーステスが身に着けていた代物。



「こちらは誰でも装備できますがその代り少しの間しか装備できません、制限時間を超えると鞘に戻ってしまい、再び抜き去るのにはまた時間がかかります」


 と装備の説明をしてくれる。スキルみたいな装備ということか。CTが気になるけれどこれを手に持ったらファルカナンド・エンブレムを常時発動できるので切り札のように使えるかもしれない。


「では次」


「はい」


 次は真ん中に立っていた女性が小箱から何かを取り出して私に差し出す。銀色に輝くサークレットだ。



【ファルカナンド・サークレット】

装備カテゴリー:兜

 DEF+30

 REG+30

耐久度∞

効果:存在感

   MP自動回復(大)

   HP自動回復(微)

   被ダメージ1.5倍


ファルカナンド王族の女性が身に着ける髪飾り。その美しさは注目を集める。



「こちらは特に制約等ございません」


 と女性は頭を下げて後ろに退く。格下相手ならターゲットにされるだけで動きを止められる私には使いどころがある装備…かな。


「では次」


「はっ!」


 最後に呼ばれた男性の横には全身の鎧が飾られている。濃い青色で染められ金色の線が縁取るように描かれ、左胸には白くファルカナンド王家の紋章が描かれている。それを男性が私の方に運ぶ。



【英雄への贈り物:体】

装備カテゴリー:軽鎧

 DEF+400

 REG+300

耐久度∞

セット効果:軽量

      MP自動消費(小)

      満腹度減少2倍

      渇水度減少2倍

全身装備時:威圧感


ファルカナンドの英雄への贈り物として作られた鎧。



 こちらは頭以外の部分が一つの装備扱いになってるらしい。軽量はおそらく動きが鈍らないということだろう。そして全身装備時の威圧感は格下の能力を思い切り引き下げる効果だったはず。


「こちらが兜になります」


 と男性は兜を差し出す。顔が出るタイプの兜だ。



【英雄への贈り物:頭】

装備カテゴリー:兜

 DEF+50

 REG+50

耐久度∞

効果:軽量

   MP自動消費(微)

全身装備時:威圧感



 軽鎧の兜含めた全身装備の最高がDEF+600~800あたりだったはず。しかし魔法の防御力を示すREGも同時に高く備えているのは滅多にない。と考えればデメリットがあるのも頷ける。


「喜んでいただけましたかな?」


「はい」


 王様の問いに私は即答した。


「では、ペルケステスの腕輪を…返していただけないだろうか?」


 と言われたので渡す。


 それから様々な歓迎を受けて結局舞浜君達とは合流できなかった。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン使い】Lv25【STR増加】Lv25【幸運】Lv50【SPD増加】Lv21【言語学】Lv41【視力】Lv44【アイドル】Lv29【体術】Lv30【二刀流】Lv42【水泳】Lv28


 SP39


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ