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ナギ記  作者: 竜顔
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ホレイーズ脱出

少し遅れました。

 転移ポータルが現れるとほとんど同時に新たなメッセージが届いた。



【最終クエスト:ホレイーズを脱出せよ】


ファルカナンド王都を含むホレイーズの全ての脅威を排除することに成功した。

転移ポータルは準備してある。後はそれに乗って脱出するだけだ。

解放条件:チェインクエスト①~⑤をクリア


PS.向こうで待っている。 byラドムス・デックマン



 最終クエストはどうやら転移ポータルを踏むだけみたいだ。


「ナギちゃん? どうかしたの?」


「別に」


 クゥちゃんの問いかけに答えて、私の方を見ながら転移ポータル手前で待っているみんなのもとに向かう。


「これは特に罠ってわけでもなさそうだ、じゃあみんなで一緒に踏むぞ?」


 カッサが転移ポータルが罠でないことを確認すると、円形の転移ポータルを囲うように手をつないでみんなで円を作る。


「3、2、1」


「「「ゼロ!」」」


 で一緒に転移ポータルを踏む。踏むと一瞬光で周囲が見えなくなり、気づけばビギだった。


「おかえりー」


 そこには何人かのプレイヤーがいた。私達と一緒に向かったはずなのに、気が付いたら私達がいなくなっていて何かあったのか、と待っていたらしい。


 私以外のメンバーは数日間顔を合わせることもあって顔見知り程度にはなっていたみたいで、普通にただいまと返していた。ホレイーズのイベントでは全員強制参加と言うところで思わぬ人との繋がりができる人も多かったらしく、その一端を垣間見た気分だった。


「そういえば、メッセージ来てると思うから確認してみるといいよ」


 と待っていた人達の一人から言われて一斉にメッセージを確認する。



【アップデートについて:From運営スタッフ】

この度はホレイーズ脱出おめでとうございます。

ホレイーズ脱出につきまして元のサーバーへとお戻りいただきました。

大規模なアップデートにより追加実装されたエリアをご紹介させていただきます。


・ビギ北西に『ピクシーの森』

・ビギ北西に『エルフの里』

・エルフの里北に『獣人集落密集地帯』

・ルージュナ北に『カッスール公国領』

・ビギ南東あるいはゴブリン王国東に『ファルカナンド王国領』


これからも後日実装予定ですので、引き続きお楽しみください。



 この中で真っ先で行くとしたら『ファルカナンド王国領』かな、とか考えながらメッセージを閉じる。


「他の人達はもう向かったんですか?」


 待っていた人達にここにいない人たちのことを尋ねた。


「いや、街をぶらついてるみたい、職人さんにしてもそんなにたくさん帰ってきてるわけじゃないから消耗が増えるようなことは極力避けるっぽいね」


 と答えてくれる。そして


「それにほら、あそことかエルフの人いるし、ビギにしても目に見える変化があるから今行けるところでその変化を確認しているのかもね」


 とその人が指差す先には高身長で髪が長く、耳が尖っている美人な女性と、背が高く髪が短いこれまた美形の男性が二人で並んで歩いていた。


「うわぁお! エルフだ! …でも彼氏持ちか」


「「チィ! リア充め」」


 カッサはエルフに感動したかと思うとカップルなのを見て表情が変わり舌打ちをする。阿吽の呼吸でクゥちゃんも合わせる。


「まるで私達みたい」


「ね~」


 バカップルは放置でいいか。


「あれだけ身長があったら大体の女の子にリーチで勝てそうだね~」


 シンセさんはなんか発想が怖い。彼女が身長を伸ばさなかったのは胸の大きさしかり、現実の身体と乖離することに恐怖心を抱くタイプだったからだろう。彼女のその性格に一応感謝しておく。その辺考えない人間だと大きな胸での圧殺や長いリーチを生かした捕縛も躊躇なくやっていそうだし。


 私達の様子を見て待っていた人達は様々な反応を示しながら、去っていくもの、後続を待つもの、それぞれ分かれていく。


 私達も移動することにした。


「それにしても今回イベントでの報酬とかはないのかな?」


「あるんじゃないかな? …ナギさんはいくつか手に入れてるみたいだし」


 何故かビギに家を持っているシンセさんのその自慢の「ちょうきょ…コホン、マイスウィートホーム」に案内してもらう途中、切り出したクゥちゃんに舞浜君は答える。


「あ、そういえばナギちゃん、変な技使ってたよね?」


 舞浜君の答えで何かを…というかトルーマスとの戦闘を思い出したらしいクゥちゃんが私に問い詰める。


「あぁ~、なんかペルケ…とりあえずあいつが手に入れようとしてた腕輪も気になる」


 クゥちゃんの言葉に連鎖してカッサも腕輪のことを思い出して顔を私に向ける。


「どっちを先に話せばいいかな?」


「じゃあまず…腕輪?」


 と舞浜君がクゥちゃんの表情をうかがいながら私の問いに答える。クゥちゃんもカッサも問題ないみたいなので、ざっくりとはなす。


 その時にアイテムの情報を確認したら、全ステータス200%UPの効果は消えていた。


「じゃあただの飾り? それ」


「どうかなぁ、一応ファルカナンド王国の王様の腕輪の複製品だし」


「あぁ、新しく実装されたってところかぁ」


 クゥちゃんの疑問に答えるとカッサが空を見ながら何か考えながら言葉を漏らす。


「続きは中に入ってから、ね?」


 どうやらシンセさんの「ちょうきょ…コホン、マイスウィートホーム」に到着したらしく玄関を開けてにっこりとした笑顔を向け私達を手招きする。


「じゃあ!」


「ダメ! 一番最初はナギちゃんから」


 早速入ろうとした一番近くにいたミカちゃんが凄まじい形相で止められた後、にっこりとした笑顔で私の方見る。


「じゃ、じゃあお邪魔しまぁーす」


 そうして入る。靴を脱ぐ場所がないのでなんだか日本人としては違和感があるけれど、それを除けばごく普通の、どこかの家族の家を見せられてるような雰囲気の光景が広がっていた。


 私の後に続いてみんなが入ってくる。最後にシンセさんが入ってきて


「いらっしゃーい、私のちょ…マイスイートルームに!」


 と一言。何かさっきと違う気がするけどまぁいいか。


 リビングには3人掛けくらいのソファが一つあり、そこはバカップルが占領してみんなそれぞれ地べたに座る。


「じゃあナギちゃん、あの技…魔法? のことも教えて」


 と早速クゥちゃんが切り出すので私は【ファルカナンド・エンブレム】のことを話す。


「でもそれだとチェインクエストやってる人しか報酬がないってこと?」


 私ん話を聞いてクゥちゃんは少し不服そうだ。たしかサブミッションなるものをやってたんだっけ。それの報酬もないから余計に不服なのかもしれない。


「でも上位ランカーとかがあるイベントでもないし…元々大量アップデート中の時間つぶし説があるし」


 カッサはクゥちゃんを宥めるように話す。


「っていうかホレイーズ脱出イベントって火曜日までだったから正式にはまだ終わってないし」


 舞浜君は終わってないから報酬が出ないのでは、という考えのようだ。


「それなら脱出した時にもらえてもいいと思うんだけどなぁ、このイベントって物がなくなっていくだけで手に入る物がなかったし」


 というクゥちゃんの発言に「確かに」と一同苦笑いを浮かべる。これだけ物を消耗させておきながら見返りがないのはおかしい。


「まぁその辺は今は何とも言えないから…とりあえず、打ち上げやるか!」


 とカッサが締める。


 各自で食材になるようなアイテムを倉庫から取り出してそれをミカちゃんに料理してもらう。


 そのままログアウトするまで打ち上げは続き、現実の夜ご飯を目の前にした時に「うぷ」となってしまった…。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン使い】Lv25【STR増加】Lv25【幸運】Lv50【SPD増加】Lv21【言語学】Lv41【視力】Lv44【アイドル】Lv26【体術】Lv29【二刀流】Lv42【水泳】Lv22


 SP36


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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