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ナギ記  作者: 竜顔
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ホレイーズ脱出作戦:決戦

 トルーマスは視線にとらえたミカちゃんに飛びかかる。


「危ない!」


 その叫び声とともにミカちゃんとトルーマスとの間にゆうくんが割り込んで攻撃を受ける。その衝撃に雄君はわずかに押し飛ばされて、その真後ろにいたミカちゃんも巻き添えを食らう。しかしダメージはほとんどない。


「チィ! タイミングがずれたか」


 トルーマスは苦虫をかみつぶしたような表情になる。ミカちゃんを狙った分だけその前に割り込んだゆうくんに思ったような攻撃を加えられなかったらしい。


 見た目は中年のただのおやじなのに素早い身のこなしで攻撃を次々と躱していくトルーマス。先ほどのクゥちゃんの蹴りからの連携が効いたのかクゥちゃんの動きへの警戒が強まって躱すことへの意識が強くなっている。


 こうなると全く攻撃を当てられない。向こうも攻撃をしてこないのでお互い決め手を欠く。


「ナギちゃん! 誘惑は?」


「使ってるけど効かないみたい」


 普段誘惑で足止めしているけど、今回はペルケステスやエストノーク同様誘惑が効かない。私の返事を聞いたクゥちゃんは少しでも隙を作ろうと積極的に前に出る。シンセさんのウルフもクゥちゃんの動きに合わせて奮闘している。


 すると周囲に急に音楽が響き始める。モンスター達への指示に徹していたシンセさんがこのままでは埒が明かない、と戦い方を変えて楽器での演奏を始めたみたいだ。


「うぐぅうう」


 音楽が響くとともにトルーマスの動きが鈍り苦しそうになる。


「長くはもたないから今のうちに」


 普段のどこかのほほんとした口調とは違う凛とした口調でシンセさんが攻撃を促す。そのシンセさんの言葉にクゥちゃんがすかさず反応する。蹴りを入れて爪でひっかいて、そして最後は背負い投げを決める。そしてそこにミカちゃんの光魔法での攻撃、シンセさんのウルフの攻撃。


 舞浜君やゆうくんの攻撃は跳ね起きたトルーマスによって躱されたけど、私のダガーが突き刺さる。


 だけどシンセさんの演奏が続いているおかげかやはり動きが鈍っている。


「くそ、耳障りだ」


 トルーマスは今度はシンセさんを狙う。舞浜君を躱し、ゆうくんを躱し、かみついてきたウルフを気にせず進む。シンセさんの近くにいたミニゴーレムは動かない。


「もらった!」


 ウルフに足元をかみつかれてることもあって、最後は倒れこむようにしてシンセさんに殴りこむ。がしかし、


「アースウォールだと!?」


 トルーマスの拳はシンセさんの目の前に現れた土の壁によって阻まれた。どうやらミニゴーレムの魔法みたいで、ちょっと胸を張っているようにも見える。


 そこでシンセさんもMPが尽きたようで演奏が止まる。演奏が止まったことでトルーマスの表情に余裕が生まれる。


「ぐぉあ!」


 しかし立ち上がろうとするトルーマスに弓矢が突き刺さってその場に倒れこむ。


「麻痺矢っていって当たったら麻痺する矢だ、少しの間なら無防備だ」


 戦闘が苦手と言っていたカッサのいい場面での一撃だった。さっきからクゥちゃんが何か溜めてるし。


 クゥちゃんは左手を下、右手を上に、映画で見るようなカンフーの構えに近い構えをしていて、手に付けている爪は左手側は上向き、右手側は下向きになり、そのまま左手は下顎右手は上顎で巨大生物の口を表現しているようだ。


「ナギちゃん、ちょっと浮かせて!」


 と言われたので急いでトルーマスに駆け寄って投げ上げる。それを見て一瞬クゥちゃんも「え!?」っていう顔していたけどすぐに元の表情に戻ってトルーマスめがけて駆け出す。


 身体がマヒして身動きが取れないトルーマスは顔を青ざめてそれが来ないことを祈るようだが、それもむなしく獰猛な肉食獣の牙がその宙を舞う胴体に突き刺さる。


「ぐあああああああああ!!!」


 麻痺していることも忘れたトルーマスの絶叫が響く中、噛み付いた胴体を食い破るように牙と化した爪を自らの方に引き戻す。


「ぎゃあああああああ!!!」


 麻痺が解けていたのか、地面に落ちたトルーマスは転げまわっている。そこにクゥちゃんが次の一撃を加えるべく構えている。


「うわぁぁあああ!!」


 その姿を見たトルーマスは逃げても無駄と考えたのか、地面を這いつくばってクゥちゃんの足にしがみつこうとしたが、その顔を思い切り蹴られる。


「うがぁ!」


 青色のくのいちの服装になっている水色ショートヘアの虎を、最後の力と言わんばかりにトルーマスは睨み付ける。


 ただし彼の相手は虎だけではない。ミカちゃんの光魔法が、舞浜君やゆうくんの剣が、ミニゴーレムの土魔法が、ウルフの牙が、私のブーメランが、シンセさんの演奏を行進曲に、迫っている。


 それらすべてを受けたトルーマスにカッサの矢も遅れて突き刺さる。


 止めのようにしてクゥちゃんが爪を突き刺す。


「う……ん…めいを………か…え、る」


 何かを呟いたトルーマスは右手を空にかざした。するとそこに穴が生じる。前衛のメンバーはその穴から何か出てくると思ったのかトルーマスと距離を取る。でも多分逆、あの穴の中にトルーマスを入らせてはいけない。


 よくわからないけど、おそらくこの空間の過去であるはずのファルカナンド王都にもいたことを考えると時間を渡れるのかもしれない。だとするとあの穴は時間を渡るための入り口であり、今は逃げ道だ。


 トルーマスは何とか起き上がろうとする。近くにいた前衛のメンバーが距離を取ってしまったためこのままではトルーマス逃げられる。何とかしなければ。そう思った時、トルーマスの下に青白い光を放つファルカナンド王家の紋章が浮かび上がり、トルーマスの動きが止まる。


「なにあれ?」


「なんだあれ?」


 クゥちゃんとカッサがその地面に描かれた紋章を見て驚き、何を思ったのか前衛メンバーが一斉に駆け出す。


 ――あれって私にもできるのかな?


 ペルケステスの下に現れたあれをリーステスは発動できた。考えても仕方ない。とにかくやるしかない。


 私は右手拳を前に付きだし、あのときのリーステスの言葉を思い出しながら叫ぶ。


「プロビデンス!」


 その叫びとともに、私のあらゆる不安を吹き飛ばして、紋章から光の柱が立ち上る。トルーマスも、そしてトルーマスが発生させた穴すらも全て光で包まれていく。


「うあああああぁぁぁぁぁ!!」


 徐々に小さくなっていく叫び声。光が消えた後、そこには干からびたミイラのような老人が横たわっていた。


「勝ったっぽい? ですか?」


「今のもナギちゃんだったの? 先に言ってよ」


 ミカちゃんは戦闘の終了に安堵し、クゥちゃんは私を問い詰めてくる。


「いや、最後は私だったけど、地面に浮きあがったのは勝手に浮き上がっただけだから、急がないと、って思って」


 と弁明する。クゥちゃんは納得してくれたようで、干からびたミイラに近づいていく。私もそれについていく。


 そのミイラはどこかにうっすらとトルーマスの面影を残しているのでおそらく本人だろう。時間を渡りまくった末路がこれということと解釈する。


 トルーマスの生み出した穴は未だ消えずに残っている。


「なんか出てくるのか? これ」


「多分時間を移動する穴だと思うよ」


 カッサの疑問に私は推測を述べる。


「じゃあ過去に行けるのかなぁ、これ、この場合は時代を移動したというべきかエリアを移動したというべきか」


 とカッサは変なことを考え始めた。


 しばらくするとトルーマスの身体が消え、穴も消えた。


【チェインクエスト①をクリアしました】


 それが出るとともに、転移ポータルが出現した。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン使い】Lv25【STR増加】Lv25【幸運】Lv50【SPD増加】Lv21【言語学】Lv41【視力】Lv44【アイドル】Lv26【体術】Lv29【二刀流】Lv42【水泳】Lv22


 SP36


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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