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ナギ記  作者: 竜顔
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ファルカナンド王国:帰還

 ペルケステスの遺品や、怪物の骨を回収した後、密かに簡単なペルケステスの葬儀が行われた。それからのリーステスの行動は早く、ペルケステスを病気による急死として王都の人間に伝え、自身が次の王位につくことを伝えた。


 王都の人間の反応は様々だけど、ペルケステスに比べればその身から放つオーラともども物足りないが、人柄にしろ能力にしろ素晴らしいというのが元々のリーステスの評価なので、きっとうまくやっていいけるだろう。


 私の方も表彰を受けた、褒美としては王家の紋章の印ということだ。右手の甲に意識を集中させると王家の紋章が青白い光を放って浮き出てくる。これを見せればファルカナンド領内で厚遇してもらえるそうだ。といっても次来ることはないんだろうけど。


 私が褒賞を受けたことは王都の人々にも伝えられた。ペルケステスの急病にいち早く気づいた兵士ということにして。


 ゲーム内での翌日には王位継承式や、それに伴ったパレードが行われ、私もそれに参加させられた。その時にはミルト姫がいないという噂を払拭するかのようにミルト姫も目立つようにリーステスの横につきっきりだった。


 私の予想通りミニスさんはミルト姫だった。彼女は城に戻ればまた殺されかねないということでトルーマスさんのところで身を隠していたそうだ。


 そんなことをしているうちに現実でも夜が来てログアウトした。




 翌日、ログインするとゲーム内は昼だった。


「お、もう出ていくのか?」


「はい」


 割り当てられた城の部屋を出るとゴルトンと遭遇する。


「旅人ならそういうもんかな、国王様にぐらいは挨拶して行けよ、王室か謁見の間にいらっしゃるはずだから」


「わかってます」


 そう言ってゴルトンと別れてリーステスを探す。彼は謁見の間に一人でいた。


「ん? なんだ、もう行くのか…挨拶などよかったのに」


 と私に気づいたリーステスは口元を綻ばせる。


 少し話をした後リーステスと別れ王都の発着場へと向かう。パレードの時は兵士の正装をさせられて今と全然恰好が違ったせいか昨日あれだけ歓声を浴びせてくれた人も私に気づくこともなくスムーズに発着場までたどり着く。


 発着場には見知った車掌さんがいた。


「次の列車は乗られないんですか?」


「ええ、次は私ではないんですよ」


 私が話しかけると優しい顔で丁寧に答えてくれる。


「あのぅ、お名前をお聞きしてもいいですか?」


 もう会うこともないかもしれない。時系列ではまだとはいえエストノークの時もこの人にヒントをもらったのだから、恩人の名前を憶えておきたいと思った。


「ラドムス、正式にはラドムス・デックマンと言います」


 と車掌さんは答える。やはりこの人が話の中で出てくるラドムスさんだった。


「今回の件お疲れ様でした、それとありがとうございます」


 ラドムスさんは軽く頭を下げてお礼を言う。


「いえ、ご期待に添えられてよかったです」


 私の質問に丁寧に答えてくれたり、むしろ感謝したいのはこっちの方だ。それを聞いたラドムスさんはほほ笑んで、


「欲望に溺れた者はその身を滅ぼすものです、あなたも欲望に溺れてはいけませんよ」


 と言う。私はどこかで言われた気がするけどどこで言われたんだっけ。と考えながらラドムスさんの言葉に頷く。


 そしてもう一つラドムスさんに聞きたいことがあるんだったと思って尋ねる。


「謎の脱獄者ってラドムスさんのことですよね?」


 ヒントっぽいことを教えてくれるからきっとそうなんだろうと思った。もしそうならもっと詳しくホレイーズを脱出する方法を聞こうと思っていたけど、私の言葉を聞いたラドムスさんは急に険しい表情をして首を横に振る。


「いえ、違います、あなたは勘違いをなさっている、欲望に溺れた者が力欲しさに運命を書き換えあなた方を利用してその力を手に入れようとしています」


「え!?」


 私は驚く。てっきりそういう設定なのかと思っていたのに。


「どういった経緯でここに?」


 とラドムスさんに促され、チェインクエストも含めてすべて教えた。


「なるほど、本来とは逆ルート…記憶にある中で一度だけ処刑の谷に連れて行かれた男が脱獄したという話を聞いたことがあります」


 とラドムスさんは話し始める。曰く処刑の谷とは処刑人が連れて行かれる谷のことで、もしかしたらそこにファルカナンド滅亡の際に設置された転移ポータルがあるのかもしれないということだ。つまり本来は処刑の谷「から」外に出ることが脱出なのにたいして、逆ルートと言うことは処刑の谷「に向かう」ことが脱出につながるのではないかと言う予想だ。


 その処刑の谷は第四棟の隠れた発着場から向かうことができるそうだ。


「第三棟から外に向かうのは、運命がいじられてないので道が塞がれていて不可能なままのようですから方法があるならそれしかないですが…運命が変わってしまったので全く同じかどうかは」


 と渋い表情をした後、ふっと表情を緩ませて


「ですが今私が知ってしまったので何とかしましょう、きっと大丈夫なはずです」


 と言いながら私の背中を押して列車へと乗せる。


「ラドムスさんには相手が誰かわかるんですよね?」


 「真実の目」を持っていて過去も未来も見透かせるらしいラドムスさんなら相手のこともわかるはずだ。


「ペルケステスのように欲望に溺れた者です、よく考えなさい、誰があなたをファルカナンド王国に導いたかを」


 ラドムスさんがそういうと列車のドアが閉まり、発車する。


 廊下の窓から遠ざかるファルカナンド王都を眺めながら、その列車の車掌に割り当てられた部屋に入る。


 しばらくすると列車が止まり、部屋を出ると紫色の壁色とわずかな光が照らす第四棟の秘密の発着場に出る。


 周囲を見渡すと前来た時はなかったはずの大きな扉があった。そこを開ける。


<第四棟の隠れた発着場の扉が開かれました>


 そのアナウンスがされるとともに広がる景色は広い階段だった。そこを昇っていくとどうやら第四棟の二階のようだ。


「ナギさん?」


 二階へとたどり着くと私の名前を呼ぶ声がするので見ると、知らない人たちだった。おそらくルージュナの件あたりで私のことを知った人だろう。


 その人達がどうしてそこにいるのか尋ねてみると、第六棟からは第一棟にしか行けないので何か見落としがあるんじゃないか、と各棟を詮索するプレイヤーがいて、その第四棟を詮索していた人達なようだ。


 詮索中に何もなかったスペースに急に階段が現れて慎重に観察していたら私が上がってきたということみたいだ。


 その人達に状況をかいつまんで話しておく。私が最上階に用があるというとその人達も一緒についてきてくれるということで行動することになった。


 最上階に向かいながらメッセージが新たに来ていたので確認する。



【チェインクエスト①:欲望に溺れし者】


謎の脱獄者を名乗る運命を書き換えるべく行動している者がいる。

その目的は強大な力を手に入れるためだ。

あらゆる手段を使ってその目的を防いでほしい。

あなたにならばできるはずだ。

解放条件:チェインクエスト②~⑤クリア

     あるいは

     リスポーンせずにホレイーズを一周



 これまでのチェインクエストと違って「君」ではなく「あなた」になっていた。きっとこれまでのチェインクエストとその差出人が違うんだろう。きっとこれはラドムスさんだ。と少し表情が緩む。


「あ、ナギちゃん!」


 第四棟の最上階に着くとクゥちゃんが出迎えてくれた。丁度休憩の時間と言うことで最上階にいたらしい。


 さあ、いよいよイベントも大詰めだ。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン使い】Lv25【STR増加】Lv25【幸運】Lv50【SPD増加】Lv21【言語学】Lv41【視力】Lv44【アイドル】Lv26【体術】Lv29【二刀流】Lv42【水泳】Lv22


 SP36


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人 ファルカナンドの救世主

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