ファルカナンド王国:夜
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読者の皆様大変ありがとうございます。
時間を潰すためにまずは近くの人とお話しするのがいいだろう。権力者と言えるほどでなくても高貴な方が多いようなのでペルケステスの弱点的な物を知ってる人がいるかもしれない。
そこでカウンター席に座っている一人のマダムに話しかける。
「どうも」
「あらぁ、こんなところにかわいい御嬢さんねぇ、どうかしたのかしら?」
細身のマダムは酒に酔っているのか顔がほんのり赤くなっているけど、その口からは流れるように言葉が出てくる。
「少し聞きたいことがあるんですけど」
「いいわよぉ、今は機嫌がいいから答えてあげるわぁ」
と優しいお姉さんのように微笑む。何故かここで女性として負けてる気分になって少し精神的なダメージを受けるも、話を続ける。
「このお店にはよく来るんですか?」
まずは当たり障りのない会話から。
「そうねぇ、お酒もお料理もおいしいのよ、その上宿にもなってるから素敵な出会いの場にも…ふふふ、御嬢さんには少し早いかしら?」
とマダムは優しく微笑む。
マダムによると一応貴族区画というものがあるらしいけど、そういうところへ地位の低い貴族が貴族以外の人を客人として招くと地位の高い貴族から小言を言われるので、ここで寝泊まりしてもらったりお話をしたりしているそうだ。
そして同時に家を継ぐ必要のないような貴族の子供や、地位は低くとも貴族の後ろ盾がほしい豪商の跡継ぎなんかの出会いの場にもなっているそうだ。このマダム自身も父親は商人で母が貴族だったそうで、今は母の家よりも上の地位の家に嫁いでいるらしい。
「へぇ、そうなると王族の方となんかも会ったことがあるんですか?」
「そこまで上じゃないのよ、でも面会できるような方からお話を聞いたことぐらいはあるわね」
マダムは一切その微笑みを崩すことなく答えてくれる。お見合いするのが嫌でこの酒場で素敵な人を探してたら、素敵な男性から口説かれたという武勇伝を語るだけあって、歳もそこそこだろうに美しくも扇情的な微笑みに精神的ダメージを受ける。
結局その素敵な人がお見合い相手だったらしいんだけど。お互い気づかずに恋に落ちてしまったらしい。
っと今はマダムの過去よりも、
「どのような方だというお話が?」
「ふふふ、そういうのが好きなのね、そうねぇ…今の国王様は仕事の時は機械みたいだけどそれ以外では面倒見もいいし優しくて人間味あふれる方って聞いたわね」
マダムは下唇に曲げた人差し指を当ててその時のことを思い出しながら語っていく。
「弟のリーステス様はしっかり者で似たもの兄弟って話ね、ただ機械みたいになることはないそうよ」
なるほど、つまりは似ているからこそペルケステスが自分より優れていると尊敬しているのだろうか。そして王位も譲ったと。
「妹のミルト様は…とてもお優しく、身分を気にしないお方という話ね、噂だけだと王位継承に名乗りを上げたことは本当とは思えないのよねぇ…」
「御嬢さん…そのくらいにしていただけませんか? マダムももう限界でしょう」
急にカウンターから声がかかる。マダムをよく見るとうつらうつらとし始めていた。微笑んでいるように見えたけど、単に睡魔と闘っていただけなのかもしれない。
マダムには一応お礼を言って話を切り上げ他の人に話しかける。
「御嬢さん…マダムと王族の噂話に興じていましたね、私の方が詳しいと思いますのでお相手しますよ」
丸いテーブル席に腰かけた若い男性が声をかけてくる。すぐに王族の話ができるならと思ってその男性の向かい側に座る。
「あんまり多き声でしゃべれない話だから隣に来てほしいなぁ」
酒に酔っている感じもなく、人目があるから変なことはされまいと思って隣に座る。すると肩を抱き寄せられる。
「ちょっ!」
「話をする前にお願いがあるんだ、一晩だけ付き合ってほしい」
「いや無理です」
男性の誘いに即答する。ゲームでもこれはセクハラじゃないの。っと運営に対して突っ込む。
「そこをなんとか、一晩だけでいいんだ」
「いや、だから…」
「既成事実を作りたいんだよ、このままじゃ望まない相手とお見合いさせられる、相手を見たらとんでもないモンスターだったんだ! 何もしないから一晩一緒にいてくれるだけでいいんだ、そしたらこの話もご破算になるはずだから」
あまりにも切羽詰ってるなと思いながらも丁重にお断り。
「それで、王族の噂っていうのは…」
「んな! こっちのお願いは聞かないのになんて図太いんだ! あのモンスターよりも内側が醜い御嬢さんだ!」
話をしようとしたらさらっと侮辱された。
「そっちだって同じでしょうに…」
「……確かに、自分を見失っていたよ、取り乱してごめんなさい、それで王族の噂だったね」
世の全ての絶望がここに集まってるというくらいどんよりと沈み込んだ男性は話を始める…話し始めるとどこかの探偵だろうか、という感じでスイッチが入る。
「国王が悪しき心を持っていると言われたのは多くの人が知っていることだ、それなのにそんな発言をしたラドムスをそのままにするのはどう考えたっておかしい、これは何か裏があるか、優しさアピールと俺は考えてるんだ」
噂話じゃなかったんだろうか。とりあえず突っ込むのは控える。
「最近謁見の間に籠って何やらやっているらしい、誰も入ることを許されないから詳しくは分からないらしいけど謁見の間を任されている兵士の話じゃ何かの儀式のようなことをやってる声が聞こえるって話だ」
それは確かに怪しい。何故彼がそれを知ってるのか尋ねると、彼は商人の息子のようで城の兵士はお得意様なんだそうだ。
「それに最近どうもミルト様の姿が見えないらしい、国王によってどこかに追放されたとか聞いたけど」
男性は他の怪しい部分も話し始める。
「王位継承で名乗りを上げたから?」
だとしたら弟のリーステスはどうなるんだと思うけど、彼自身は王位に興味を示さなかったんだっけ。
「うーん、どうだろうか」
男性によるとシルヴァートというミルト姫の側近は元々ペルケステスの側近であり友人でもあったそうだ。だけどミルト姫が物心つくぐらいに「大事な妹を頼む」ということでペルケステス自らシルヴァートにミルト姫の側近をするように仕向けたそうだ。
その後も友好関係は続いていたようで、自分の腹心を妹の監視に当てているといっても過言ではない様子だったらしい。
「だからこそ怪しいんだよ、あえてシルヴァート様を第六棟に送り込んだんじゃないかと」
どうだ俺の推理は、と言うような表情で男性は話す。
「で、結局そのミルト様は今どこに?」
「え?」
と驚いた様子の男性。元々ミルト様の姿が見えないが出発点だったというと
「そうだっけ?」
ととぼけやがった。
結局そういうところも含めてペルケステスは怪しいということが言いたいようだった。オスカーが「とある命を受けて第六棟に向かっている」と言っていたからシルヴァートもグルというのは間違ってないのかもしれない。
その男性とはそこで別れて十分時間を潰したかな、と思って酒場を出ると夜空が広がっていた。
ペルケステスは夜になると城の謁見の間に籠るんだっけ。でも貴族の知り合いもいないのにそこに出入りすることができるだろうか。
時間が時間だったのでログアウトした。明日は休日だから思い切りできるはずだ。
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NAME:ナギ
【ブーメラン使い】Lv22【STR増加】Lv23【幸運】Lv50【SPD増加】Lv19【言語学】Lv41【視力】Lv43【アイドル】Lv25【体術】Lv27【二刀流】Lv39【水泳】Lv22
SP30
称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人
ホレイーズ脱出作戦開始にて
そして今安全な場所はこの6棟目の最上階と各棟の停車場しかない。
というところを
そして安全な場所はこの第一棟の最上階と各棟の停車場しかない。
に訂正させていただきました。
これからも応援よろしくお願いいたします。




