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ナギ記  作者: 竜顔
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ファルカナンド王国:ホレイーズの罠

 王位継承のごたごたの顛末と、弟を擁護した連中への処遇から寛大な人柄だと思われていることが分かった。


「他に何か聞きたいことはあるかい?」


 一通りペルケステスのことを話すとおじさんは次の質問を催促してくる。


「じゃあホレイーズについていくつか」


「むぅ、ホレイーズか…ペルケステス様が最近色々と手を加えているという話だからなぁ、俺の知ってるのは少し古い情報になるかもしれんが…」


「じゃあまずは、王都を守るもう一つの防護壁って聞いたんですけどどういう意味か分かりますか?」


「それはだなぁ、この王都を囲むようにして監獄棟が立っているからだよ」


 車掌さんが言っていたことと同じだ。だけど私が知りたいのはそれよりももう一歩先だ。


「じゃあホレイーズの外にまだ国の領土があるってことですよね?」


「ああ、そうだ…そうだな、最近はペルケステス様も意向でホレイーズのすぐ外を囲うように壁が作られて本当の意味で王都のもう一つの防護壁って呼べるようになったな」


 元々は棟周辺は囲われていて脱獄を防ぐようにできていたけれど、第四棟~第六棟以外はガチガチの監獄棟がぽつりと立ているだけのような状態だったらしい。しかし現在は列車のレールの横も含めてすべて王都から外側だけ壁が建設されていて、「もう一つ」の防護壁となっているそうだ。


 それと裏の発着場も最近になって設置されたみたいで、ペルケステスは王になるとすぐさまホレイーズの強化(?)に力を注いでいるらしい。


「まぁそうだな…王都の城を一番上と考えたら、王都の下に第一棟、右横に第二棟、真上に第三棟、左斜め上が第四棟、左が第五棟、左斜め下が第六棟だな」


 とおじさんはぐるりとまわりを見渡しながらその方角を指さしていく。時計で言うなら6時のところに第一棟、3時のところに第二棟、12時のところに第三棟、10時と11時の間くらいが第四棟、9時が第五棟、7時と8時の間くらいが第六棟だ。


 ちなみに王都からの直線距離では第六棟が最も遠く、その上第五棟と第六棟は立地が悪く、特に第六棟はホレイーズの列車を使わなければ出入りできないような場所だそうだ。


「そして第一棟はこの王都と第二棟と、あとは第六棟と繋がっていて…」


「え!?」


 おじさんの言葉に私は思わず大きな声を出してしまう。


「一番危険な第六棟と第一棟が繋がっていて不思議だろう? だがそれは第六棟で何かあった時に看守やら国の持っている兵士やらを王都から送り込みやすくするためだ」


 という理由なようだ。


「でもそれじゃあ、今はどうやって王都から…ホレイーズの外へ出るんですか? 第六棟は第一棟と第五棟と他にどこかと繋がってるんですか?」


 ホレイーズは直線ではなくてループするような形状と聞いていたので第一棟と第六棟が繋がっているのは理由があるんだったら驚く要素じゃない。だけど第六棟を通過すれば脱獄できると考えている私達にとって第六棟を通過したら第一棟に戻ってきた、になるのは困る。


「今は第三棟を使わないと外に出れないんじゃなかったかな? 噂じゃラドムスはこの計画を知ってたからペルケステス様の王位継承に反対…って嬢ちゃん大丈夫か?」


 今このおじさんが言ったことが本当なら第六棟からは第一棟にしか行けないことになる。驚きのあまり少しフリーズする。


「ん? というか嬢ちゃんは別のところから来てるんだからその辺は知ってるんじゃないのか?」


「か、確認ですよ、確認」


「そうかそうか」


 おじさんの追及にも軽くごまかす。もしかしたら第六棟を突破しても無駄足になるかもしれないと思ったので一応クゥちゃんに連絡を入れることにする。これから第六棟に向かう人を少しでも足止めできればいいだろう。


 そしてラドムスの故郷もホレイーズの外側にあるみたいで、方角的には第一棟に近いみたいで第三棟経由だと遠回りになってしまうことがペルケステスの王位継承に反対した要因と噂されているそうだ。


「とまぁこんな感じかなぁ、他にも手が加えられたそうだがそれは看守に聞いた方が早いだろう…酒臭いがな、かっはっはっはっは!」


 とおじさんは酒場を指さして笑う。だけどここまで聞ければ十分かもしれない。


 他にエストノークの過去を見た時のことを照らし合わせれば裏の発着場が作られたのも最近だろう。そしてそれはペルケステスによって行われた。


 王都へは列車を使うしかやって来れないというアクセスの悪さは、考え方によってはより防御を強固なものにしていると考えることができる。一方でペルケステスがこの王都を中心に何かを起こすとしたら王都の人間たちは簡単に逃げ出すことができない。


 そして王都の外へ出るための第三棟…。仮に第二棟からの列車が第三棟の裏の発着場に着くと考えると、転移ポータルを踏んで最上階にやってきた人々は逃げ場がない状態であのエストノークと対面してしまうことになる。


 そのあと再びペルケステスのことをおじさんに聞いてみたけど、詳しいことは分からなかった。


 おじさんと別れてどこへともなしに歩き始める。何をしたらいいかがわからない…いや、おそらくペルケステスを倒せ、とかそんなんだと思うけどどうしたらそこにたどり着けるかが分からないので悩んでいる。


「あ、御嬢さん!」


 元気のいい声が後ろからかかるので振り向く。ミニスさんだ。


「ミニスさん、配達ですか?」


「そうなんです! 次が丁度最後になるんですよ!」


 一言しゃべるたびに顔が近づいてくるのは気のせいではないはずだ。私が少しのけぞらなかったら顔と顔がぶつかっていてもおかしくない距離だ。


「へぇー次はどこへ配達に?」


 特に考えがあって言ったわけじゃなかった。


「ファルカナンド王国っていう少し変わった酒場のような宿屋のような所ですね!」


「え!?」


 聞き間違えだろうか…あるいは偶然だろうか、それとも意味があるんだろうか。私は興味をそそられた。


「一緒に行ってもいいですか?」


「いいですよ! じゃあ行きましょう!」


 テンション高いなぁ、と思ってたけど今はそのテンションにもついていける自分がいる。そして『ファルカナンド王国』というお店にたどり着くと、


【チェインクエスト④クリアしました】


<ホレイーズ第六棟の鍵が解除されました>


 同時に第六棟のアナウンスもあった。そしてメッセージが一つ来たので確認する。



【チェインクエスト⑤:ペルケステスを倒せ】

全ての元凶のペルケステスを倒せ。

しかし奴のカリスマ性で味方はいないと考えた方がいい、

単独で王城に忍び込み機会をうかがって討て。

解放条件:チェインクエスト④クリア

クリア方法:ファルカナンド王国で時間をつぶせ。



 …クリア方法が意味わからないし。まぁ時間をつぶせばいいのか。


 酒場と言ってもさっきのところと違ってべろんべろんになっているような人はおらず、見た目も少し上品な方が多い印象だ。


「ここのお客様は貴族やそれに準ずる方が多いんです、といってもあんまり権力がある方ではありませんが…」


 一瞬「誰!?」と思ったけど間違いなくミニスさんだ。場所が場所なだけにいつもと違う口調になっているのかもしれない。もしかしたらこっちが素なのかも。


「店に戻らないといけないので私はこれで」


 ミニスさんはそういうと店を出ていった。


 さて、時間をつぶそう。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン使い】Lv22【STR増加】Lv23【幸運】Lv50【SPD増加】Lv19【言語学】Lv41【視力】Lv43【アイドル】Lv25【体術】Lv27【二刀流】Lv39【水泳】Lv22


 SP30


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人

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