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ナギ記  作者: 竜顔
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ホレイーズ脱出作戦:ファルカナンド王国

 ご飯の後の探索で5階層まで探索を終えて、それらしいものを見つけられず翌日へと持ち越しになった。


 翌日にはすでに「攻略特化組」と呼ばれるどんどん先へと進んでいく精鋭たちによって第六棟の発着場の前に立ちふさがっていたボスを倒すことができたらしい。しかし発着場へと至る扉は閉ざされていて、ボスを倒しても開かなかったそうだ。


 扉を開けるには鍵が必要らしく、それを探すために多くの人達が捜索を始めた。それのついでに私達の事情を知った人たちが手伝ってくれるようにもなった。


 私達からのメッセージを呼んだカッサも第四棟へと向かっているみたいだ。だけど前の棟から第四棟にやってきた人によると、今は先の棟へと向かう人が減っている、とのことなのでカッサ達もやって来れるか怪しい。


 ということで6階層目から探索を始めて10階層目…下から数えると20階にいる。


「この辺も何もないなぁ」


 ジェットさんが呆れたように呟く。今日もジェットさん達三人は時間を合わせて協力してくれている。この牢屋の横にある脇道もただ行き止まりに通じているだけで、また隣の牢屋にも何もなかった。


「おーい!」


 この牢屋に何もないことを確認して出るとどこからか大きな声が聞こえてくる。その声で一瞬カッサ達かとも思ったけど近づいてくる声は下の階へと向かう側から聞こえてくるので違うと察する。


 もしかしたら他の人へと向けたものかもしれないと思ったけど足音が聞こえてきたのでしばらく待つ。数人の男女がやってきた。


「何だ、俺達に用でよかったのか」


「はぁはぁ、ああ、あんた達が探してるんじゃないかってものが見つかってな」


 ジェットさんの言葉に息を切らしながら走ってきたパーティのリーダーと思われる男性は答える。


「俺達が探してる?」


「ああ、怪しい死体が置いてある牢屋があるんだ…だけど誰も近寄れないから入れないんだ」


「なるほど、だから俺達なら入れると」


「ああ」


 ジェットさんとやり取りしているうちにパーティの面々は息を整えていく。そして彼らにその場所まで案内してもらう。


 それは12階にある一つの牢屋…演出なのか趣味の悪い死体が置いてある牢屋はいくつかあったけど、そこの死体は確かに変だった。


 私の記憶が正しければその骸骨だけの死体が身に着けている物は看守たちの装備に見える。


 とりあえず誰も近寄れない――結界みたいなのに触れるとダメージを受けるらしい――みたいなので私が近づく。


 結界に触れたと思った瞬間にもわっと周囲に黒い煙みたいなのがまとわりつく。しかしダメージは受けない。その死体のあちこちを探すと、鍵が見つかる。



【第四棟の鍵:非常通路】

特殊アイテム


非常時用発着場の鍵。



「どうだった?」


「私達が探してたものです」


 牢屋を出ると一番に尋ねてくるジェットさんに答える。


「教えてくれてありがとうございます」


 私がお礼を言うと教えてくれたパーティのリーダーと思われる男性が、


「いや、まぁ、このイベントは困ったときはみんなでやるもんだって感じだからさ、気にしなくていいよ、報酬とかも別にいいし」


 と照れくさそうに話す。結局ローエスさんが彼らに武具の修復や回復アイテムの供給をしたわけだけど。


「ありがとうございます」


 お礼を言う男性と別れを告げて今度は脇道探索に移る。


「考えたんだけどさ、低い階にあるんじゃないかな?」


 再び探索中の20階へと向かおうとするときクゥちゃんが呼び止める。


「その可能性もあるかもなぁ…ナギちゃんに任せるよ」


 クゥちゃんに言われて考えていたジェットさんも結局私に振る。


「クゥちゃんの勘を信じる」


 ということで下の階から探索することにした。


「1階はベタすぎてないと思うけど、くまなく探そう」


 1階に到着するとジェットさんの指揮のもと(?)探索が始まる。クゥちゃんは今の言い方が気に食わなかったのかジェットさんを少し怖い目で睨んでいる。ここだけの話、多分ジェットさんとクゥちゃんの相性が悪い。


 1階では見つからず2階へと移る。


 目の前では戦闘が行われていた。


 スケルトン3体と12人のプレイヤー。言うまでもなくプレイヤーがすぐにモンスターを殲滅する。


「あれ? あんたらもっと上でやってたんじゃないの?」


 そのうちの一人が私達に気づく。一応状況を話すと、


「実は丁度いいとこに来たと思ってたんだ、さっき変な扉を見つけたんだ」


 そういって案内される。2階の真ん中あたりにある脇道に入り、そこからくねくねとした道を進んでいく。するとそこには扉の模様…ではなくてきちんとした扉のようだ。


「鍵穴はないみたい」


 扉をチェックするけど鍵穴は見当たらない。


「かざしてみれば?」


 ジェットさんに頷いてかざしてみる。私は光に包まれて…気づけば発着場にいた。これまでの発着場と違い完全な室内のようで見上げると天井が視界を占める。


 とりあえずクゥちゃんとジェットさんにメッセージを送って列車に乗り込む。


 のっぺらぼうな車掌さんから割り当てられた部屋に籠って数分。列車がどこかへ到着する。するとガヤガヤとにぎやかな声が聞こえてくる。


 部屋から出ると廊下には日の明かりが差し込み、様々な人が大小さまざまな荷物を持って歩いていた。


 私もその流れに乗って降りる。


「ようこそ、ファルカナンド王都へ」


 その声の主を見ると、エストノークの過去を見た時の青年の車掌さんだった。思わずじっと見つめてしまう。


「どうかなさいましたか?」


「い、いえ」


 前も同じようなやり取りがあったなと苦笑いしながら首を横に振る。しかし先ほどの車掌さんの言い回しが引っかかったので聞いてみることにした。


「あのぅ、ファルカナンド王都、ですか? ファルカナンド王国ではなく?」


 チェインクエストではファルカナンド「王国」に連れて行くということだったはずだ。もちろん王都だから王国の中であることに変わりはないけど、何か意味があるのかもしれないと感じた。


「ファルカナンド王国と言ってもこの防壁で囲われているところだけではありません、今見えるよりも広く領土を持っています、それとファルカナンド王国の王都はそのままファルカナンド王都というんですよ、不思議でしょう?」


 車掌さんは多分変なことを言っていると思う私にも丁寧に答えてくれる。もしかしたらファルカナンド王国の王都の名前がそのままだから尋ねたと思われたのかもしれない。とりあえず変な人とは思われなかったようだ。


 当然というか、何故チェインクエストでの表記が「ファルカナンド王国」だったのかわからなかったので別のアプローチを使ってみる。


「ホレイーズってどこにあるんですか?」


 もしかしたらホレイーズは別の国にあるのかもしれないという考えからこう尋ねてみる。


「ホレイーズというのはこの王都を囲うようにして作られた監獄棟群の名称です、簡単にいうなれば王都を囲う広いもう一つの防護壁というべきでしょうか、今は列車が邪魔で見えませんけど王都の正面から第一棟が見えるはずですよ」


 車掌さんは丁寧に答えてくれるけどやっぱり私は変なこと聞いてる人だよね。とちょっと気まずいけど何となくわかった。


 滅んだ某国というのはこのファルカナンド王国のことだろう。そしてチェインクエストの表記は滅ぶ前の時代に連れて行くということを意味していたんだろう。


 それにしてもホレイーズは直線かと思っていたけど車掌さんの話ではどうも違うみたいだ。


 私は車掌さんにお礼を言うと街の出入り口の方に体を向ける。発着場は王都の防壁の外に設置されてるようで、防壁の一部は関所の門のように大きな穴があってそこから街と発着場を出入りするみたいだ。


 出入り口に向かおうと足を踏み出した時、


「安心なさい、まだエストノークと国王は接触すらしていません」


 何故そのことを、と思って振り返るとすでに他の客に対応していた。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン使い】Lv22【STR増加】Lv23【幸運】Lv50【SPD増加】Lv19【言語学】Lv41【視力】Lv43【アイドル】Lv25【体術】Lv27【二刀流】Lv39【水泳】Lv22


 SP30


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人

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