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ナギ記  作者: 竜顔
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固定砲台

平日は17時、週末は11時を目安に投稿しようと思います。

 それからホムラの監視のもと荒野ウルフを数匹倒して、ゲーム内でご飯を食べながら反省会。


 回避行動をとるモンスターも常によけきれるわけではない、よけきれないタイミングは必ずあるし、速い一撃を放てばタイミングに関係なく攻撃を当てることができる。最初私の攻撃が躱されたのは、直進攻撃を回避するために横に移動しながらだったことと、攻撃間隔を短くするために、十分な力で投げなかったからと教えてもらった。


 それならビッグワームなんか倒さずに、最初からそう言えばよかったのに…、というと


「ナギは当てることだけを考えすぎだ、実際ビッグワーム前と後のウルフ戦の違いも動いてる標的に慣れただけな感じがしたし、その慣れることが目的だったから成果は十分なんだが、それでもまだ動いてるウルフのどの部位に当てるかとかその辺の考えが弱いな」


 ダメージ後の行動停止は「怯み」と呼ばれているらしく、怯みには二種類あり、一つは行動が一時的に止まるだけのやつ、もう一つは攻撃行動をキャンセルさせるやつで、例えばゴブリンが棍棒を振り上げたとき、腕に当てれば一瞬痛みで動きが止まるがそのまま振り下ろしてくる、一方目に当てれば目を抑えるという痛がる動作をとるため攻撃そのものをやめる。とのこと。


 狙って引き起こすには条件を満たす必要があり、特に攻撃キャンセルを引き起こすには弱点を突かなければ難しいらしい。


 この「怯み」しかり、牛系モンスターの「ガード」しかり、モンスターの動きを利用して隙を作ることが狙ってできるようになれば、楽に戦えるようになる。と言われた。そして、そのために動く相手でも狙った部位に安定して当てられるように練習することも…。


「あと、この斧って本当にもらっていいの? 相当ATKが高いけど…」


「ああ、それはもう寿命でな…修復ができないから、ロストするまでナギが大事に使ってやってくれ、威力的にも今の俺には使いどころがなくてな」


 てことは(今はイベントリにしまってある)あの赤い大斧はどんだけすごいんだろうか。とつい考えてしまった。


 それからは主に現実の話をした。お兄ちゃんたちは二学年上なので、大学生。二人は同じ大学に通ってることもあり、身内として兄の単位が大丈夫そうなのか聞いておいた。


――――――――――


 翌日は昼食を食べた後すぐにログインした。ジェットさんとの待ち合わせもあるので一応速めに武器も調達。ジェットさんから待ち合わせ場所のメッセージが届いていたので南門の近くで、露店でもまわりながら待つ。


「おーい、ナギちゃん」


 そうやってジェットさんが呼ぶ声がしたので振り返る、今見ていた露店を後にし、近くに歩み寄る。


「ジェットさんお久しぶりです」


「そうだね、結構会えない時間があったね、まぁそれが愛を育むともいうし」


 相変わらず変なことを言うジェットさん、あの点五つに込められた意味は予想通りだったようだ。


「で…ブーメランの専門家って……」


「黒鉄(くろがね)だ、よろしくな」


 そうやって自己紹介される。プレイヤーは漢字、ひらがな、カタカナで名前を付けることができる。しかし、音声認証があるため、字が違っても読みが同じ、読みが違っても字が同じだった場合は、この名前は既に使われていますの表記のもと絶望に落とされる。ただ問題はそこではなく


「タンカー…ですよね?」


 黒鉄さんの装備は全身が黒い重装備で固められていて、兜も目の部分以外覆われたフルフェイスだった。盾は持っていないけど、盾を持っていたら誰に聞いてもタンカーというだろうし、盾を持ってない状態でも後衛武器がメインとはとても思えなかった。


「ははっ、まぁそういうだろうね、黒鉄のスタイルはある意味特殊だから、でもこういうスタイルもあるってナギちゃんの参考にはなると思うよ」


 そうやって笑顔のジェットさん、


「実際に見せるから、ビッグワームでもやるか」


 そういう黒鉄さん、ビッグワーム…うっあの気持ち悪さは昨日の今日で慣れないって。あと、平然と言うけどボスモンスターだからね? ボスモンスターっていうのはエリアに1~3匹しか沸かないモンスターでPT推奨、つまりPT組んで戦えってこと。その分ノーマルモンスターより攻撃力やHPが一際高かったり、「怯み」も起こしにくかったりする…らしいんだから。


 でもボスモンスターっていってもあくまでそのエリアのボスだから、強い人にとっては先のエリアのノーマルモンスター程度ってことでもあるけど…。


 なんて言ってる間にビッグワームと対峙する黒鉄さん。


 すぐにその特殊性を理解する。黒鉄さんは一歩も動かない、そしてブーメランは黒鉄さんの元に正確に戻ってくる。黒鉄さんは、ブーメランを投げて一発、戻ってくる際に一発、戻ってきたブーメランをキャッチし、また投げる、の繰り返し。その途中ビッグワームから攻撃を受けようと受けまいと関係がない。


 私とジェットさんはただ見てるだけ。しばらくして黒鉄さんがビッグワームを倒す。


「なんて…言えば正解なんですか?」


「無理に何も言わなくていいよ」


 昨日ビッグワームの後のウルフ戦で、私はほとんど動くことなく攻撃していた。それはホムラから、当てることだけ、といわれた理由でもある。


 そんな私にとって、一歩も動かない黒鉄さんの戦い方は違和感だらけだった。


「どんな武器でもそうだけど、アシストってのがあってね、投擲武器はコントロールのアシストがつく、スキルのレベルが上がるほどコントロールもよくなっていくんだ」


「ブーメランは思い描いた軌道で投げられるようになってな、当然自分が投げたところに正確に戻ってくるようになる」


 ぽかーんとしている私に二人が説明してくれる。


「それで黒鉄は投げたところに戻ってくることと、投擲とSTRの関係を活かして、重装備で身を固めて耐久力を上げ、さながら固定砲台のように投げまくるスタイルになったんだ」


 確かにブーメランの性質を利用すれば、そういう考えもできる。ということは黒鉄さんは重鎧の装備スキルを持っているのか。


 STRが高く重鎧を装備できるようになっても、重くて腕が上がらなかったり走れなかったりする、それを解決するのが装備スキルだ。当然対応した装備をしているとDEFの効果が高まったり、防御に関するアーツも覚える。


「えっと、ブーメランって必ず投げたところに戻ってくるんですか?」


 これは結構重要なことだ。投げてる最中に敵の攻撃がきて避けたら、戻ってきたブーメランをキャッチできなくなる、【二刀流】のスキルがなければもう一つ武器を装備することはできず、イベントリにしまうにも手で触れてなければならないので、下手をすれば丸腰状態になってしまう。


「いや、さっき黒鉄も言ったけどアシストのおかげで思い描いた軌道で投げられるようになる、だから自分の狙ったところに戻ってくるようにもできる、本来はそうやって動き回って戦うんだ、固い敵なんかにはじかれると戻ってこないし、いつでもそれを拾いに行けるようにね」


 そのあとブーメランの説明を受けた。投擲武器の中の火力役であり、広範囲のアーツも使える、その反面牽制には向きにくい性質がある。


 他の投擲武器はどんな場所もその一点だけを狙えるけど、ブーメランの場合は主に体の隅っこを狙わざるを得ず、胴体の真ん中を狙うと、ぶち抜けるほど高威力なら問題ないが、そうでないなら当たった後ぽとりと下に落ちてしまい当然戻ってこない。


 また、威力を出すのに最低限必要な間合いがあり、懐や足元に飛び込んできた敵に上から投げつけても威力はほとんど出ず、投擲武器で一番接近戦に向かない。というより0距離ではまず戦えないとのこと。


 そういう意味では黒鉄さんの戦い方はリスキーであり、一方で欠点である接近戦を防御力でカバーしているともいえる。


 それからブーメランでの戦い方のレクチャーが行われ、別れた。今回は何ももらえなかった、それはまだいい…けど、どこでブーメランを入手するのか聞き忘れた。


――――――――――

NAME:ナギ

 【投擲】Lv27【STR補正】Lv21【幸運】Lv18【SPD補正】Lv19【言語学】Lv8【】【】【】【】【】


 SP19

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