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ナギ記  作者: 竜顔
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ホレイーズ脱出作戦:秘密

「おはよぅ渚」


「おはよ、結衣ちゃん」


 朝、学校では当たり前の風景がそこにはあった。座っている結衣ちゃんに声をかけて周囲を確認する。まだ京ちゃんの姿はない。と思っていたら


「おっはよう渚!」


「うわぁ!」


 背中をそこそこの強さで叩かれて思わず体が前のめりになって結衣ちゃんの机にダイブするところだった。


「大げさね」


「いやいや、今結構激しい音がしたよ?」


 睨み付ける私にきょとんとする京ちゃんと、私の味方の結衣ちゃん。


「あ、ほら彼氏も見てるよ」


「はぁ? って違う!」


 京ちゃんがいやらしい笑みを浮かべて指さす方を見ると舞浜君がこっちの様子をうかがっていた。心配そうな表情をしている。京ちゃんにばれてしまったのは彼のせいなので気にしているんだろう。


「何の話?」


「ゲームの話!」


 つまらなそうに問いかける結衣ちゃんに私は素早く答えて京ちゃんが何かを言う隙を与えない。


「そ、この前ゲームでやっと渚に会えたの」


「やっと…ね、まるで会う気満々だったような言い方ね」


 結衣ちゃんの言葉に京ちゃんは笑ってごまかすしかなかった。


「それで渚ったら「ゲームの話よりさ!」――ちょ、渚!?」


 京ちゃんの話に割り込んで妨害する。そのやり取りを見て結衣ちゃんは


「…よくわからないけど、楽しそうデスネ」


 感情を失ってしまった。


 昼には朝の出来事はなかったことになっていて、普段通りの時間が過ぎる。





「やっほーナギちゃん、待った?」


「ううん、私も今丁度ログインしたところ」


 学校から帰ってログインすると、ちょうどクゥちゃんと同じタイミングだったみたいだ。


「あれから考えたんだけどさ、列車の廊下を歩き回るってのはどう?」


 クゥちゃんは今日の行動の方針を提案する。クゥちゃんによると昨日最初に出発した人の中に、常に廊下に出ていてあの存在と戦った人がいたらしく、向こうが来ないならこっちから出向いてやろうということみたいだ。


「多分第三棟でうまくいかないのもそれが原因なんじゃないかなって」


 クゥちゃんは一連のことがチェインクエストみたいになってるんじゃないかと考えているらしい。


「じゃあまずは列車まで行かないとね」


 と私はクゥちゃんの提案に乗ることにして、次の出発に向けて準備を整える。


 現在最も進んだところで第四棟までだそうだ。もうすでに第四棟まで着いたのか、と考える人がいる一方でそこまで進んでも死に戻るのは第一棟ということで進んでると言えるかわからないと考える人もいる。


 そして、第四棟から第五棟に向かう列車に乗ったことがある人は、こっから先は進めない、と言っているらしい。理由は鬼畜だからだそうだ。まぁそれはそのうち分かるだろう。


 特に定時が決まっているわけではなく「人が集まったから」と集団が出発する。昨日はやる気で満ち溢れていて集団の規模も一回一回大きかったのに、今回は結構縮小されてしまっている。


 人数が少なくなっているので集団の中央に陣取ってもゾンビの顔を拝んでしまうことが何度かあるので、割り切って集団の端っこで寄ってくるモンスターを駆除する…骸骨のみ。ゾンビはクゥちゃんに任せて私の視界から早く消していただく。


 人数が減ったせいか、はたまたこれまでと違って積極的に戦闘に参加したせいかわからないけど列車の停車場に着く時間はいつもより長く感じた。


「大丈夫?」


「…大丈夫、と思う」


 クゥちゃんの心配にも曖昧に返すのがやっとな精神状態だ。ゾンビへの恨みは強くなる一方で気分の方はよくならない。


 列車の出発は回復なんて待ってくれないので気分が悪いままに乗り込む。部屋でしばらくくつろいでいたら気分もよくなってくる。


 気分がよくなったところで作戦を開始。まずは部屋を出て廊下をぐるぐる回る。クゥちゃんの仕入れた情報では敵の攻撃が当たると部位に関係なく即死させられるみたいで、注意が必要だ。


 廊下にある窓は真っ暗で、廊下には明り一つない。


「近くにいる」


 クゥちゃんは私に小声で教えてくれる。どうやらその存在は私達の正面にいるみたいで、目を凝らしてみると暗闇に何かがいるのが分かる。【視力】のスキルがあるので暗闇に関係なく見えるはずだけどよく見えないのは、何か別の理由があるんだろう。


 よく見えなくてもその動きは何となくわかる。暗闇の中にいる何かは急に動きの速度を上げる。


「来るよ!」


「了解!」


 近くに来た何かは私にナイフの刃を向けるけれど、私の誘惑で動きを止める。…別に変な意味じゃない。


 動きを止めたその何かの顔に爪を突き刺しながら殴り飛ばす。廊下の壁に打ち付けられナイフを落とす。そして何かはすぐに立ち上がるも、ナイフを拾わずクゥちゃんに向かっていく。


 クゥちゃんに飛びかかるところでどこかに忍ばせていたのか、いつの間にかナイフがその手にはあった。クゥちゃんは腕をうまく交差させて爪で攻撃を防ぐ。


 交差させた腕を解き放ち何かを吹き飛ばす。そして黒い何かもうまく着地を決めてクゥちゃんと距離を取り始める。


 私はペーパーブーメランでもって攻撃すると意表をつかれたのか慌ててこちらを向いた何かは見事にそれを受けて頬のあたりを切る。


 その一瞬を見逃さなかったクゥちゃんが思いっきり肩でタックルして何かを壁に叩きつける。クゥちゃんの肩は何かのお腹に当たる。


 まるで邪気でも抜けていくかのように何かから黒い煙が放出されていく。そして再び動き始めた何かの動きがややおぼつかないようになっている。


 そこでクゥちゃんが畳み掛ける。黒い何かは攻撃を止めさせようと必死にもがいていたけれどクゥちゃんを止めることはできず黒い煙がどんどんと放出され、最終的には消え去り何かが纏っていた布だけが残った。



【第一棟脱出完了:from謎の脱獄者】


第二棟の最上階を安全地帯にすることに成功した。

これでみんな無事に第一棟を脱出できるはずだ。

まだ先は長いが一つずつ進んでいけば問題ない。

健闘を祈る。



 新たにメッセージを受信していた。っていうかこのメッセージは確認出るんだね。そして何かが落としていった布を拾い上げる。



【????】

????


????


 何にもわからなかった。


「ナギちゃんそれ何?」


「分からない、あっトレード不可みたい」


 クゥちゃんにも確認してもらおうと思ったけどそれは叶わなかったみたいだ。


 周囲を見ると真っ暗だった廊下は、まだ薄暗いままだけど電気がついていた。それと私達の騒動に気づいた近くの部屋の人が何をやっていたのかと言う顔でこちらを見ていた。その人には適当にごまかす。


 クゥちゃんの方を見ると何やら考え込んでいた。


「どうしたの?」


「いや、ボク達が倒す前に戦った人たちは勝てなかったのかなって、タイミングを考えたらボク達が倒したことが原因だと思うんだけど」


 確かにクゥちゃんが集めた情報が正しければ遭遇した人はそれなりにいるはずだ。もしかしたら複数いるうちのあたりを引けばみたいな感じなのかも。とか適当に答えを出して部屋に戻ることにする。


 だけど丁度、第二棟に着いたみたいだ。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン使い】Lv19【STR増加】Lv20【幸運】Lv50【SPD増加】Lv17【言語学】Lv41【視力】Lv41【アイドル】Lv21【体術】Lv27【二刀流】Lv36【水泳】Lv22


 SP28


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人

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