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ナギ記  作者: 竜顔
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タコでイカがなものでしょうか。

「やっとお出ましですか? 京ちゃん」


 私は「キョウ」さんに睨むような視線を向けながら言う。


「あらーばれちゃった? 残念」


 全く残念な感じなどなく京ちゃんは兜を取りその素顔をさらす。


「ナギちゃん知り合いなの?」


「現実の…ね」


 クゥちゃんの質問には即答する。


「お待たせしました…って何か取り込み中でしたか?」


 そこにルーナさんがやってきた。今の状況が読めずに困惑したような表情を浮かべている。なので現実の知り合いと遭遇してしまったことを教える。


「遭遇してしまったとは何よ? いつも一人にしないでとか言ってたじゃない」


「言ってない」


 言ってないはず。京ちゃんによる勝手な私の創造はやめていただきたい。


「まぁ一人で暇してたからクエストでも受けようかなと思ってたら、ナギ様? ぅぷ、の名前を見つけてきたのよ」


 とここに来た理由を明かす。


「今笑ったよね?」


「大丈夫、セーフ!」


 本人はこらえ切れたと思っているのだろうけどこらえきれずに一瞬噴き出してるから絶対にアウトだ。


「ところでこれで全員?」


「あと一人」


「ふーん」


 そうして暇そうな表情になる京ちゃんにクゥちゃんが話しかける。【拳】系メインのプレイヤー同士息が合うのかなにやら真剣に話し込んでいる。


 それと同時に私は「少しまずいかも」と思っていた。私達が待っているあと一人は舞浜君だからだ。京ちゃんが変なこと言いませんように。



【今気づいた:From舞浜】


今気づいたから向かってるけど…大丈夫?



 舞浜君からのメッセージが来た。彼からの反応がないから見切って先にクエストに出発しているかもしれないという意味だろう。別の意味でいいなら大丈夫じゃない。


 舞浜君には大丈夫じゃないと言って、クゥちゃん達には「舞浜君は今日無理らしいよ」ということも考えたけど…


「あ、今連絡来た」


 彼はきちんとクゥちゃんにも連絡を入れていたらしい。きっと彼のことだから私達が戦闘中でも迷惑にならないようにメッセージという手段を使って連絡してきたんだろうけど、私だけにコールしていたならごまかせたのに。…多分。


「もうすぐ着くみたいだね」


 とクゥちゃんは京ちゃんことゲーム内では「キョウ」さんとの会話を終えて気持ちの準備に入っている。


「あっ来たみたいです」


 ルーナさんに言われてその方向を見ると、舞浜君が立っていた。しかし彼はなんという素晴らしいお人であろうか。遅れてきたことに申し訳なさを感じてすぐにクエストに向かえるように兜を被っている。フルフェイスの兜を、だ。


 これで一応彼が現実のクラスメイトの舞浜君であることは京ちゃんにはばれないだろう。


『京ちゃんがいるから兜は取ったらだめだからね』


『京ちゃん? …あ、了解』


 舞浜君も察してくれたらしい。


「あら、女だけかと思ってたら男もいるのね?」


「どうも」


 無難に会話をする舞浜君。


「じゃあ行こう」


 クゥちゃんの言葉を合図に船に乗り込む。船のおっさんNPCは「やっとか、待ちくたびれたぜ」と言いながら出港する。


「モンスターが出る海域はもうちょっと先だ、それまではくつろいでくれていいぜ」


 と言われたので全員が一旦くつろぐ。


「で、その人まだ紹介されてないんだけど…見た目でタンカーなのはわかるけど」


 京ちゃんもとい「キョウ」さんが舞浜君を見ながら私に問いかける。


「あ、まいは「どうも、舞浜です!」」


「…ど、どうも」


 クゥちゃんが紹介しようとしていたところに強引に割り込み、舞浜君は自己紹介をする。下手をすれば現実での知り合いということがばれてしまうところだったけど何とかなったみたいだ。


 京ちゃんも何か怪しいと思ったみたいだけど今は特に追及してくることはない。


「そろそろ出てきてもおかしくない場所だ、気を引き締めてくれ!」


 NPCから言われて各自戦闘準備に入る。


「来た」


 クゥちゃんが言うが早いか、船が揺れて海から現れるは巨大なタコだ。その足が甲板に侵入してくる。


「気を付けて! 吸盤は引っ付くから!」


 京ちゃんが注意を促したのと同時に私の背中に何かが当たり体が宙に持ち上げられる。


「えっ?」


「ナギちゃん!」


 どうやら吸盤に引っ付けられてしまったらしい。


 すぐさまクゥちゃんや舞浜君が足を切って救出してくれる。そして足が切られて暴れ始めるタコ。


 戦線復帰した私はタコの顔を重点的にダガーを投げつける。私とルーナさんがタコの本体への攻撃を優先し、他の三人が主に足を攻撃する。


 八本の足はみるみる短くなっていき、ついにほとんど顔だけになった巨大なタコは短くなった足を船の底に張り付けて、まるで何度も頭突きするかのように船に突進攻撃をし始めた。


 船が揺れるせいでルーナさんも何度か詠唱を失敗する。


「全く…クゥさん、次の頭がここに来たら踵落しするよ」


「はい」


 そう言って京ちゃんはクゥちゃんとともに船首に立つと、タコがぶつかってくるタイミングを計る。


 そしてタコが船にぶつかる直前に宙へと跳び、タコがぶつかり船が揺れるのとほぼ同時にその踵がタコの頭に落とされる。


 二人同時の踵落しが効いたのか少しの間タコの動きが止まる。その隙に全員で攻撃を仕掛ける。ヒーラーって何? ていうくらいにルーナさんも攻撃魔法中心になり、ついにタコを倒す。


「おお! これでこの海域も安心だ!」


 NPCのおっさんは私達の勝利にそう言ってくれる。そしてポルトマリアに帰りつくと報酬を受け取る。


「今日は周回するつもりなんですけど」


「いいわよ、付き合うわ、知り合いがお世話になってるみたいだし」


 クゥちゃんに対してどこのいいお姉さんだろうかという感じで京ちゃんは返事をする。できればいなくなってもらっても構わないような気もするけど。


『俺…ボロがでないか不安なんだけど』


 舞浜君も弱音を吐いている。


 二周目、三週目とやってクリアする。そのたびに


「おお! これでこの海域も安心だ!」


 というNPCに対して、どこが? とつい言ってしまいたくなる気持ちを抑えながら周回していく。


 四週目には、イカが出てきた。イカはタコよりもレアなのでその分強いけど報酬も上がる。ラッキーだなんて思っていた矢先事故は起こった。


 盾を構えていた舞浜君にイカの攻撃がクリーンヒットして舞浜君は吹き飛ばされる。そしてそこに丁度京ちゃんがいて、彼を受け止める形になる。


「ありがとう塚原さん」


 無意識的にだと思うけど彼は京ちゃんの名字を言ってしまった。


「ほぅ」


 と呟いて特に何事もなかったかのように戦闘を続けていたけど、嫌な予感がしてたらやっぱり帰港後に


「どういう関係かな? なんで隠そうとしてたのかなぁ?」


 と詰め寄られることになった。


 私は京ちゃんをなんとか躱しながら舞浜君を睨むことを忘れなかった。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン使い】Lv19【STR増加】Lv20【幸運】Lv50【SPD増加】Lv17【言語学】Lv41【視力】Lv41【アイドル】Lv21【体術】Lv27【二刀流】Lv36【水泳】Lv22


 SP28


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人

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