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ナギ記  作者: 竜顔
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カッサご立腹?

 ログインするとカッサがご立腹な様子で「ダンジョンに付き合え!」と私と舞浜君とクゥちゃんにメッセージを送りつけてきていたらしく、現在カッサ含めた四人、ヴォルカの北門に来ている。


「イベント告知は見たか!?」


 カッサはヴォルカの南にある火山よりも熱く私達に話しかけてくる。


「まぁ、見たけど」


 舞浜君が「なんなんだ?」という表情で答える。


 今日発表されたイベント告知。来週からの三週間は一周年記念に向けた前夜イベントが行われるそうだ。一週目である来週はエリアの超絶拡張による超長期のアップデート期間中もプレイヤーが遊べるようにエイローイベント同様別サーバーを作ってそこにキャラデータも移行して、イベントを強制全員参加で行うらしい。


 内容は


『超巨大廃墟監獄、ホレイーズを脱出せよ』

全部で6棟ある廃墟と化した監獄であり街にもなっているホレイーズを脱出せよ。

安全地帯は廃墟の最上階広場とホレイーズの棟と棟とをつなぐ鉄道だけ。

君は脱出できるか


 ということになっている。今のところ詳細はよく分からない。とりあえず脱出しなければいけないことだけは分かった。


「それがどうかしたのか?」


 舞浜君はイベントの内容を思い出しながら、カッサに問いかける。


「脱出ってことは俺の力が必要になるはずだろ? ちょっとこの前のお仕置きはやり過ぎだと俺は怒ってるんだ…今やワームを見るだけで恐怖だ! だがダンジョンに付き合ってくれたらチャラにしてやるって言ってるんだ」


 なるほど。カッサは結構怒ってたのね。確かにワームに無理やり抱き着かせられて死に戻りはショックも大きいだろう。


「それはローエスさんに言わないと…最終的に【惚れ薬】を使ったのあの人だし」


 舞浜君は怒りの矛先が違うと主張する。


「それにそもそもカッサがナギさんに撫でてもらっていい思いしてたからああなったんだろ」


「だから、あれは俺であって俺じゃないんだよ」


 口げんかが始まりそうな雰囲気になりつつある。


「それでもちゃっかりおいしい思いしてるだろ」


「それに対する仕打ちが行きすぎだろって言ってるんだよ」


 まぁカッサであってカッサじゃないと思ってるから私も撫でたんだけどね。舞浜君にしてみればそう思ってても割り切れないところがあるみたいだ。


「でも地味にカッサも性格悪いと思うけど…」


 クゥちゃんが二人の言い合いに口を挟む。


「だってこれから第六エリアの洞窟に行くんでしょ? 私達が第六エリアで苦労してるとわかってるはずだよね?」


 クゥちゃんがカッサに問いかける。


「それは俺もわかってるから、気配消して極力みんなが死に戻りしないように配慮するよ、帰りもな」


 カッサはいつもと同じやわらかい表情になったけど口調は若干固い。


「まぁ、別にいいけど」


 クゥちゃんは問題ないらしい。そして


「ナギちゃんが舞浜を撫でれば舞浜だって文句ないでしょ?」


 ととんでもないことを言い出す。


「え!? いやそう意味で言ってるわけじゃ…」


 舞浜君も面食らったようだ。


「普通に頼めば普通に行くのに…」


 舞浜君的にはカッサの頼み方が気に入らなかったらしい。


「じゃあ頼む、俺はとりあえず気配消して狩人殺しが近くにいないか確認してくる」


「え、ちょっと、四人で行くつもり!?」


 早速出発しようとするカッサをクゥちゃんが止める。


「今日は四人だとどんなものか様子見だよ」


「…あっ」


 カッサの言葉にクゥちゃんは何か気づいたらしい。


「じゃあ行くよ」


 そう言ってカッサが第六エリアへと出るので私達はそれに続く。そしてカッサはすぐさま近くに狩人殺しがいないか確認するために、匂いを消し、音を消し、姿を消した。


 少しして戻ってきたカッサは「近くにいないみたいだから今のうちに」と言い残して再び姿を消した。おそらく洞窟に向かったんだろう。


「さ、俺達もいこう」


 舞浜君の言葉に無言でうなずき、出発する。ヴォルカの近くで狩りをするPTもちらほらといるので数は少なく洞窟にたどり着くまでに散発三回の戦闘回数で済んだ。


 洞窟の前にたどり着くとカッサが姿を現す。


「全員いるね、じゃあ入ろう」


 カッサを先頭に洞窟の中に入っていく。


 第六エリアの洞窟は第二エリアの洞窟と同じように、通路に変化はないけど入るたびに毎回罠や宝箱の類がリセットされ、他のPTと接触することのないタイプのダンジョンだ。


 今日はカッサの目的のためと、夜になる前にヴォルカに帰れる時間には終わらせるために宝箱は全て無視。道中の罠はカッサが、時折出てくるモンスターは私達が、それぞれ対応する。


 出てくるモンスターは「ブラインドウルフ」、「ブラインドバット」と攻撃されるとたまに「暗闇」状態にされてしまうモンスターばかりだ。彼らは一応目が見えない設定の為、息をひそめているとちょんちょんと触って確かめてくるだけだけど、少しでも動いたらすぐに攻撃してくるアクティブモンスターだ。


 その感じが妙にリアルとして、ファンタジー世界に転生した気分をより味わいたい人なんかにこの洞窟は人気だそうだ。


 モンスターの存在に気を配りながらもスピーディーに進むカッサについて行った先に一つの扉があった。


「ここからが隠し通路、クゥちゃんは何でここに来たか気づいていたみたいだけど」


「四人専用通路でしょ?」


「ビンゴ」


 この扉の先は四人PT専用の通路だそうだ。カッサはこのためにあれこれ理由をつけて強引にでも私達を連れてきたのか。


 その扉の先は少し様子が違っていた。いくつか部屋があったけど、四人で横並びになって同時に入らなければならなかったり、出てくるモンスターは同じなのに四人で一回ずつ攻撃しないと倒せなかったりと四人でしか通れないことを利用した仕掛けがいくつもあった。


「大体ウィキの情報と変わらないな、これ以上は時間的にも余裕がなくなってくるだろうから帰ろう」


 カッサも満足いく部分までは進めたようで、帰ることを促す。


 帰りは来た道をそのまま戻って洞窟を出る。洞窟を出てすぐにカッサが偵察して狩人殺しが近くにいないことを確認して戻ってくる。


「じゃあ、ヴォルカに入ったところで待っとくねぇ」


 といってカッサは消えた。


「…なんか、振り回されてる気がする」


「「確かに」」


 私の呟きに二人とも頷く。私達は勝手に四人専用通路のために集められたと思ったけど、今日の感じだとカッサの自己満足につき合わされた気もしなくもない。


 帰りはモンスターの数が増えていて、苦戦するも他のPTの助けもあって死に戻りすることなくヴォルカに到着した。


「あ、おかえりー」


「もう少しで死に戻るところだったんだけどな」


 のんきな感じのカッサに舞浜君は突っかかる。


「すまん、でもどのみち俺じゃ対応できないし」


 カッサの言うこともわかるのでこれ以上言及することもない。


「で、結局俺達は振り回された感じなんだけど、何がしたかったんだ?」


「あー、ちょっと来週までインできそうにないから、みんながヴォルカまで来れるんならちょっと行ってみたいと思ってねー、隠し通路がどんなものか気になってな」


 とカッサはいたずらっ子のような笑顔を見せて答える。


「来週までインできないんだ」


 クゥちゃんはカッサの言ったことを聞き返す。


「そ、だから行くとなったら再来週になるからさ…我慢なんて無理だろ?」


「まぁ…な」


 カッサに舞浜君も同意している。確かに気になることを確認する手段があるのに二週間待つのは我慢強くないと無理かもしれない。


 そしてその日はログアウトした。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン使い】Lv13【STR増加】Lv15【幸運】Lv48【SPD増加】Lv10【言語学】Lv41【視力】Lv41【アイドル】Lv19【体術】Lv27【二刀流】Lv34【水泳】Lv22


 SP19


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人

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