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ナギ記  作者: 竜顔
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ネタ晴らしと憂さ晴らしと…

「え? カッサ? 一人?」


 舞浜君はサッと私の肩から手を離してカッサの方を向く。口から出る言葉は単語ばかりで、何故カッサが一人でここにいるのかが分かってないみたいだ。同時に丁度舞浜君の背後に立つことになった私はこの隙に「大成功」の看板を掲げる。


「どうしてカッサが一人でここに?」


 ようやく文章が出た舞浜君の問いにカッサは答えず、私を指さす。それを見て舞浜君は私の方を振り返る。


「…ドッキリ?」


 再び彼の思考は止まってしまったみたいだ。ここでネタ晴らし。


「私、視線が合って怖いとか思ってないよ」


 とできるだけやわらかい表情を作って言う。そもそも見ていたのは私の方だしね。


「やっぱりウルフの言葉が聞こえてたんだ…」


「いや、違うって」


 舞浜君の言葉をカッサが否定する。


「何が?」


「あれは俺、ほら」


 と言ってカッサがウルフに変身すると、理解したらしい舞浜君は右手で顔を抑える。


「二人きりだとか舞い上がって本名で呼んだらダメだろ!」


「るせ!」


 ウルフの姿のままのカッサの突込みに舞浜君は口元をニヤケさせながら手はそのままに言い返す。


「俺が適当に言ったこと真に受けて本当に肩を組むとは思わなかったな」


「じゃあ視線が合ってたのは…なんで?」


「あれはカッサが変身できることとか、何か企んでることに気づいてないか監視しといてって言われたからで、むしろ見てたのは私の方かな」


 と答えると舞浜君は力が抜けたようにガクリと頭を落として


「ゲームのことで話したいけど躊躇してるのかと思ってた、でも怖いと思わせてるなら悪いなぁって思って…」


「ありがとう、そんなに真剣に考えてたんだ、確かに肩を掴まれた時の表情はすごかったもんね!」


「え? あ、いや、うん、どうも」


 と舞浜君にネタ晴らしをしているとクゥちゃんとローエスさんが下りてくる。


「やっぱりみんな一緒だったんだ」


「そういう意味ではね」


 舞浜君の漏らした言葉に私は答える。


「うーん、ドッキリっていうよりただのイタズラだな」


 ローエスさんは早速設置していたカメラの一つを取って鑑賞していた。


「動画撮ってたのかよ…」


 舞浜君はもう呆れてしまっている。


「そもそもどうしてドッキリを?」


「元々はカッサが変身できることを使って驚かせるだけのはずだったんだけどね」


 舞浜君の問いに答え、そしてどうしてカッサが変身できるのか、とかを色々説明した。


「でも納得いかないんだけど」


 呆れていたと思ったら声のトーンを下げて舞浜君はカッサを睨む。


 それに一同「何が?」という表情で舞浜君の方を見る。


「カッサだけ得してないか? 撫でられるなんて」


「確かに!」


「え?」


 舞浜君の指摘にクゥちゃんが素早く反応し、全員が頷く。その状況にカッサの顔が青くなっていく。


「これは何かやり返さないとダメじゃないかなぁ?」


「はははは、何を?」


「死に戻り? トラウマになる死に戻りって麻痺で嬲られることだよね?」


 完全に反撃に転じた舞浜君と、完全アウェーになってしまったカッサ。そこに口を挟むクゥちゃんは企画に対して自分の案を積極的に出すタイプなのかもしれない。


「惚れ薬を使えばいいんじゃないか? これを使えば『心酔』状態にできるぞ」


 ローエスさんは怪しげな小瓶を一つ取り出した。それを見てカッサの表情が引きつる。私も心酔状態にトラウマがあるので引きつっているかもしれない。


 そのあと結局、カッサは第三エリアの荒野ワームに恋をして抱き着いては殴られて、を繰り返して死に戻ることになった。




 午後からはゲーム内に昼の時間が訪れる。私とクゥちゃんと舞浜君に、ミカちゃんとゆうくん、そしてルーナさんを加えてPTを組んで、第六エリアへと向かっている。


 ヴォルカに向けた第六エリアの攻略が本格始動。というべきだろうか。体育祭の疲れが精神にも来ているし、ドッキリ作戦なんてやっていたせいでその疲れもある。だけど折角休日で人も揃いやすいんだから、とこういうことになった。


 元々はルーナさんが第六エリアで活動したいと私に持ちかけてきたことがきっかけだけど。


 タンカー二人にヒーラー二人というのはバランスはいいとは言えないのかもしれないけど、狩りではなく突破に重点を置くならこの安定感は大切だろう。


 おさらいとして、第六エリアのモンスターはレアモンスターの「荒野の王」以外は全てアクティブだ。特にボスモンスターの「狩人殺し」は空を飛んでいるので厄介だ。


「準備は大丈夫?」


 舞浜君の確認に全員が頷き、第六エリアに入る。荒野の王は見当たらない。


「思ったより数がいますね…」


 普段マイペースなミカちゃんでも初めて見る第六エリアの光景に少し気圧されているようだ。


 数歩進んでいくとすぐさま「レオ」が私達の存在に気づいて迫ってくる。


 舞浜君がメインタンクとして受け止める。ゆうくんは主に他のモンスターが近づいてきたときに受け止める役だ。つまり基本戦闘は5人で行うことになる。


 舞浜君は盾で受け止めた後、バックステップで距離を取る。もう一撃は弾いて隙を作る。そこにクゥちゃんが爪でひっかく。私も続いて【蒼翼】を投げる。


 私達の横でゆうくんが盾を構えて寄ってきた「ジャッカル」の相手をしている。


 ルーナさんは攻撃魔法でレオを攻撃する。標的が変わりそうなところですかさず舞浜君が挑発をかけて注意を引く。私も誘惑で動きを封じる。クゥちゃんが爪で連続攻撃を行いレオは消える。


 今度はゆうくんの方に加勢する。先ほどと同様にして隙を作ってはクゥちゃんが攻撃を叩きこみ、隙がないうちは私がブーメランで削っていく。


 ジャッカルを倒したところで先を急ぐ。もたもたしているとどんどんモンスターが寄ってきて動けなくなってしまう。


 またレオやジャッカルが近づいてくる。今度はレオが二体だ。


「第六エリアってこんなきついんだ」


 舞浜君も第六エリアに来たのは初めてらしく、表情が険しくなる。


 二体のレオの対応を5人で引き受けてジャッカルはゆうくんに任せる。


 舞浜君は一体のレオを受け流し、もう一体を受け止める。受け流されたレオにクゥちゃんは足払いをかけて動きを止める。そこに【タイタンキラー】を投げてできるだけ大きなダメージをたたき出す。


 タイタンキラーを回収しに行く私とクゥちゃんはすれ違いPTの後方へ、どうやらもう一体何かが近づいてきたみたいで投げ技を用いてクゥちゃんはそれをPTの前方に投げる。三体目のレオだ。


 タイタンキラーを回収すると私はクゥちゃんの足払いを受けていたレオの顔を殴る。一応それでも隙ができたのですぐさま撤収。戻ってきたクゥちゃんがそのレオを攻撃し始める。そして私は三体目のレオに誘惑で動きを止めることを忘れない。


 いったい倒したクゥちゃんはそのレオではなく舞浜君の方に加勢する。誘惑による釘付け状態が切れるまでに一体消しておきたいということだろう。そこにルーナさんとミカちゃんの魔法で攻撃が加わり大きな隙ができる。クゥちゃんは連打を浴びせ、舞浜君は私に釘付け状態のレオのもとへ。


 私はステージフラッシュでそのレオにダメージを与えると、クゥちゃんの加勢をする…までもなかったのでそのままタイタンキラーを投げる。


 二体目のレオを倒したクゥちゃんが三体目に飛びかかる。しばらくして倒すと、今度はゆうくんが受け持っているジャッカルへと向かう。しばらくしてジャッカルも倒す。


「これ、ヴォルカまで持つかな…」


 クゥちゃんの呟きに答える人はいなかった。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン使い】Lv4【STR増加】Lv8【幸運】Lv45【SPD増加】Lv5【言語学】Lv41【視力】Lv40【アイドル】Lv15【体術】Lv26【二刀流】Lv31【水泳】Lv20


 SP16


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人

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