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ナギ記  作者: 竜顔
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ドッキリとドキドキ

 日曜日の朝、ログインするとすでにカッサやクゥちゃんという面々はログインしていて、ルージュナにある喫茶店まで来るように言われてしまった。舞浜君はまだログインはしてないみたいだ…少し羨ましい。


「――ということなんだけど」


 集合場所に着くと早速、カッサがドッキリの内容を教えてくれる。


「それ大丈夫なの? あとは流れで、が多い気がするんだけど…それにさ――」


 肉体的な気怠さは精神にも影響を及ぼすようで、VRの中とはいえ疲れを感じる。そのせいかちょっぴり不機嫌な感じになってしまったけど問題点を指摘してみた。


 そもそも待機状態だとアバターだけ残して私の精神だけ現実に戻るんだから、またゲーム内に戻るタイミングが分からないし。


「やっぱり問題あるよね…じゃあもう一度練り直そう」


 私の指摘にカッサは納得し、作戦会議が始まる。


「じゃあ待機はなしで、ナギちゃんは聞こえないという体でやろう」


 カッサはすぐに案を出す。


「でもそれって私がポーカーフェイスじゃないとだめだよねぇ?」


「「がんばれ!」」


「うわぁ」


 そんなことできるだろうか? と思うも今日の気分ならできなくはなさそうだな、と思った。疲れてると反応が薄くなることってよくあるから。


「おお、遅くなったすまん!」


「ローエスさん?」


 作戦会議に夢中になっていると背後から声が聞こえてそちらを向くとローエスさんが立っていた。


「見ろこれ! と思ったけど俺持てないんだ、頼む」


 そう言って私にとあるものを渡された。トレード機能を使えば持てない物でも手渡しできる。ローエスさんから手渡されたのは看板だった。


 それを受け取って持ってみせる。見てみると看板には「ドッキリ大成功!」の文字が書かれていた。またローエスさんは変な物を作って…。


「「おおー!!」」


 私の反応とは違ってクゥちゃんとカッサは感嘆の声を上げる。


「これで大丈夫なはずだ! 成功を祈る!」


「「ラジャー!」」


 なんだろう…この感じ。カッサとクゥちゃんがローエスさんに染められていってる気がする。


 ドッキリの方は、舞浜君を呼び出し、機を見てカッサが話しかけて、そのあと階段を駆け上がり降りてきてネタ晴らし、という大まかな手順は変わらず、リアルで私と舞浜君の視線が合うことを使って恥ずかしい思いをさせることになった。


「で、舞浜君は来るの?」


 私はドッキリの主役が来なければ意味が無いんじゃないかと思い聞いてみた。


「奴は来る、と思う」


「え?」


 カッサのいまいちはっきりしない答えに戸惑う。


「舞浜が来るって言ってたし」


 クゥちゃんはその根拠を提示してくれる。


「まぁとりあえずはドッキリの舞台で待っとこうか」


「…そうだね」


 カッサに促されて聖樹へ。


 ここ最近は聖樹を利用するゴブリンの数も減ってきている、その理由はしばらく休養ということなようだけど彼らも王国に仕える兵士であることを考えたら書類と向き合う仕事をやらされてたりして、と思わないでもない。


 聖樹の4階には誰もおらず、ちょうどいいのでドッキリの舞台にする。


「【動画珠】も乱獲してきたからいろんな場所に隠しカメラとして設置できたらと思って作ってきた、設置作業だ」


 ローエスさんが取り出した【動画珠】をみんなで手分けして設置する、最近では【動画珠】を埋め込みハンドカメラを作ることが流行しているらしく、ローエスさんが持ってきた動画珠もそれだった。しかも小型サイズで、現実と違って画質のスペックが通常に劣ることはない。


 設置し終えると同時にフレンドリストを開くと、彼がログイン状態になっていた。


「あ、舞浜君来てる」


「お、じゃあ呼んで」


 カッサにせかされてコールしようかと思った時だった。


『みんないるみたいだけど…今どこ?』


 向こうからコールが来た。向こうはどうやら私達が全員一緒だと思ってるらしい…間違ってはないけど。


『聖樹の4階、そっちは?』


『こっちもルージュナ、すぐ向かう』


 私が聖樹の4階にいることに疑問を感じないみたいで、すぐに来るそうだ。それをみんなに伝えてみんな自分の位置に着く…クゥちゃんとローエスさんが5階に行くだけだけど。


 カッサは少しして変身。私達は戦い始めた。


「あれ? みんないると思ってたのに、一人なんだ」


 4階にたどり着いた舞浜君は予想と違って一人でいる私を見てきょとんとした表情になっている。


「しかも…ウルフ」


「うん」


 すぐに冷静さを取り戻した彼はカッサウルフの存在に気づいたらしい。


「松木さん、【調教】とったんだ」


「あの、さぁ」


「あ、ごめん! つい、二人になるとどうしても、ね」


 彼が本名で呼ぶので、ちょっと怒気を込めると、すぐに察したらしく謝ってきた。


「二人になると…ね」


 実際は二人じゃないんだけどね。


「リアルでは話したことがないからどうしても愛称で呼ぶ感じに抵抗があって」


 彼にもどうにもならない部分があるらしい。


「おいおい! 二人って、俺のことを忘れてもらっては困るぞ! おいお前! うちのご主人様を何口説いてんだ」


「え!」


 カッサが頃合いと思ったのかついにドッキリが本格始動する。


「どうしたの?」


「今、このウルフしゃべらなかった?」


「さあ?」


 私は何言ってるの? みたいな表情で舞浜君の方を見る。そこにカッサウルフが寄ってくるので私はしゃがんでウルフの頭辺りを撫でる。カッサによると、自分の膝したくらいにウルフの胴体が被る感じだといっていたので、ウルフの頭を撫でてもカッサを撫でることには物理的にはなってないらしいということで抵抗はほとんどない。


「ああーご主人様の手は優しいなぁ、あーウルフに生まれてよかったぁ、兄ちゃんこんなことしてもらったことあるのかよ?」


 カッサは舞浜君を挑発するように言う。これには私もポーカーフェイスが危うい。


「そう言えば最近、ご主人様リアルで視線が合うやつがいて怖いとか言ってたなぁ…そいつはすぐ本名を呼ぼうとしてくるって言ってたな」


 カッサの言葉ラッシュは続く、ネタ晴らしのことも考えて全部の工程を9分程度に納めないといけないから大変だ。


「どうしたらいい? かな」


「ん?」


「あ、いやこっちの話」


 舞浜君はウルフと会話をし始めた。


「武器を捨ててそこのモンスターと肩組んだら本当の意味で二人きりにさせて謝らせてやるよ、大丈夫、ご主人様は激甘だからな」


 カッサに言われて舞浜君は武器を捨て近くにいた「マンパンジー」の肩に腕を回す。そして


「ぶふ」


 顔を殴られる。そのマンパンジーを倒した頃にカッサウルフは上の階に駆け上がった。


「ナギさん!」


「はひ!?」


 ウルフが走り去ったのを見て真剣なまなざしで舞浜君から肩を掴まれるので、思わず声が漏れる。


「おー! ナギちゃんに舞浜じゃないか! あ…お邪魔だったかな?」


 カッサが現れる。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン使い】Lv1【STR増加】Lv7【幸運】Lv45【SPD増加】Lv4【言語学】Lv41【視力】Lv40【アイドル】Lv13【体術】Lv26【二刀流】Lv31【水泳】Lv20


 SP16


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人

ドッキリというよりはただのイタズラレベルかも。

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