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ナギ記  作者: 竜顔
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炎天下

ほぼリアルで構成されています。

 灼熱地獄がもうすでに始まっている朝、グラウンドに響き渡るは地を踏みしめる音。今週の土曜日の開催される体育祭に向けて今週は全時間体育祭の練習となっている。


 家に帰ってゲームをやる余裕があるだろうか、と考える私はまだこの地獄を甘く見ているのかもしれない。いや、もしかしたらそう思うことで少しでもこの地獄に耐えられるように心の健康を保っているだけかもしれない。


 朝から行進の練習を始める。この苦行を終えると全体集合での開会式やら諸々の練習がてらに始業の挨拶なんかが行われる。夏の日差しが未だ消えないこんな日ではそんな諸々だけでも大分体力が奪われていくのが分かる。


 それらに2時間くらい使った後はブロックごとの練習。女子はビニールを裂いて作ったボンボンを持ってダンスの練習だ。この振り付け覚えてる? から始まり、新たなステップに次から次へと進みとてもじゃないけど容量をオーバーしそうだ。


 最初に割り振られたのがトラック内ということで、蒸し風呂という名の体育館へと向かったブロックの女子の皆さんに自分もそのうちその死地に向かうということを頭から消し去り心の中で「ご愁傷様」と呟く。


 4時間目からはスタンドでの応援練習。こんな暑い中で大きな声を出すのはなかなか難しいし辛い。


 昼休みに入り一度教室に戻って昼食をとる。お弁当開けていつも通り私は自分の席で待機。京ちゃんと結衣ちゃんが寄ってくるのを待つ。


「ごめん、渚、京子」


 結衣ちゃんは私の席に近づいて京ちゃんと私にそういうと教室のドアの前で待っている男子とどこかへ消えていった。


「え、もしかして、彼氏?」


「かもね、夏休みほったらかしにしてたし…ゲームばっかりで」


 驚く私に対して京ちゃんはあっさりしている。それどころか私にいやらしい笑みを向けている。私がなんだかんだ言ってゲームにはまって結衣ちゃんをほったらかしにしていたと言いたげに。そして、


「じゃあ私も結衣を見習って」


「え」


 理解が追い付かない私を放置して、颯爽と京ちゃんはどこかへ。おそらく彼氏のもとに向かったんだろう。今日は一人でお昼を食べることになったみたいだ。


 午後の最初は体育館でのダンス練習だ。身を焼かれて少し冷やされたと思ったら今度は蒸される。どこの地獄だろうかと思いながら取り組む。


 次の時間体育館からグラウンドに出る時に感じたささやかな風が、まるで天国に来たかのように優しくこの身体を冷やしてくれた。




 そんな体育祭の練習が行われている期間中。短時間の、顔を出す程度にログインするだけの日々が続いた。舞浜君へのドッキリに向けてクゥちゃんとカッサは二人でLv上げに励んでいるらしい。


 だけど周囲のモンスターの動きを止められる私の存在がないとそのエリア以外に出現するモンスターに変身してのLv上げが大変だそうだ。


 結構張り切っている二人を見ていると、逆に舞浜君が気の毒に思えてきて、その上クゥちゃんから現実でばらしてはダメ、ということと気づかれてないか監視してほしいという要望も受けて舞浜君に視線を送り続けることが多くなる。


 向こうも私が見ていることに気づいているのかたまに私の方を見てくるし、視線を交わすことも増えた。却ってドッキリに気づかれていそうな気がするけどきっと気のせいだろうと思うことで処理する。


 短いログイン時間でふと【ブーメラン】のスキルLvが最大値になっていることに気づいたのでSp8を消費して【ブーメラン使い】に進化。名前だけだとイマイチ進化したような感じがしないけどれっきとした進化だ。それと【変身の心得】を取らずにSp節約しておいてよかった。




 グラウンドに突き刺す光は太陽の光。周囲はざわざわとした喧騒に包まれ、だけどどこかしんと静まる中。スタンドの裏では総勢…何人いるんだっけこの学校? の生徒が並んで待機している。


 周囲の喧騒を蹴散らすように入場の音楽が鳴り始め、それと同時に整列した生徒全員が一斉に足踏みを始める。


「全員、進め!」


 その号令とともにもっとも入場ゲートから近いブロックから歩み始め、ゲートをくぐってトラックに入っていき、行進が行われる。


 私達も乱れぬ足音、ずれない列、それを維持しながら行進していく。この一週間練習し続けて精度を上げていった行進は、おそらく他のブロックに点数で後れを取ることはないだろう。


 始まる長い開会式。校長やら様々な人のお話が行われて選手宣誓、準備体操、とプログラムは着実に進んでいく。


 式が終わって始まるは徒競走。各ブロックの俊足自慢が直線距離を思い切り走る。これは点数が低い種目なので全力で応援しつつも心のどこかで負けてもいいと考えてしまう競技だ。


 それからも様々な競技が行われて、午前中の目玉、男子生徒による組体操だ。各ブロック順に演技していく。私達のブロックは最後だった。よくわからないけどミスも少なかったし悪くないんじゃないかな。


 午前中最後はリレーで終わり。組体操は最後に結果が発表されるのでまだわからないけど、それ以外の種目の成績を点数化した順位では私達のブロックは堂々の最下位だ。


 昼休みを挟んで午後。午後最初の種目は部活動リレー。部活動に所属してない人間は当然ながら出番はない。


 部活動リレーは女子が陸上部、男子が野球部の優勝で終わる。


 部活動リレーの後にいくつかの競技が行われて女子のダンスが行われる。私達のブロックは二番目だ。


「渚、頑張るわよぉ」


「そ、そうだね」


 背後に何か禍々しいオーラを背負っている京ちゃんに気圧されながらも答える。


「終わったみたい! みんな、準備して!」


 前のブロックのダンスが終了して私達の出番が来る。


 なんの競技にも出ていなかった分エネルギッシュに、太陽に照らされた汗を自身の輝きに感じさせるほどまぶしく、そして練習の成果をいかんなく発揮するかのように舞った。


 …ええ、多少盛りましたとも、多少ね(嘘)。


 ダンスの後はまた普通の競技種目が行われて、見事に私達のブロックは惨敗していく。――




 ――体育祭の結果は、ダンスは私達のブロックが一番だったけど、それ以外の部分で惨敗だった。


 でもダンスは一番。私のおかげかもね。


「ダンスで一番だったのは私のおかげね!」


 帰りのホームルーム終了後ガッツポーズを見せる京ちゃん。同じことを考えている人がいたらしい。


「別に誰か一人でどうこう、て訳じゃないと思うけど…」


 結衣ちゃんは冷静に突っ込む。それを聞いても京ちゃんの態度に変化は感じられない。


「あら? 渚何か言いたそうね?」


 京ちゃんが鋭い目つきで睨んでくる。


「いえいえ滅相もございません」


「何よぉー!」


「きゃっ」


 京ちゃんから襲われる―!


 じゃれつく私達を見ていた結衣ちゃんが、


「じゃあ帰ろっか」


 と私達を止める。


「彼氏はいいの?」


「ん?」


「「ん?」」


 私の疑問にはまともに答えが返ってこなかった。最近彼氏と帰ることが多かったからてっきり今日もそうだと思ってたのに。


「別に彼氏じゃない、かな」


「そうだったんだ」


「よかったね、渚、まだ仲間外れにならなくて」


 結衣ちゃんの言葉にじゃああれは誰? という疑問が頭に浮かぶも京ちゃんの余計なひと言で消える。


「どういう意味かな?」


「おおー怖っ」


 余計なことを言う京ちゃんを睨み付けると京ちゃんは逃げるかのように私から距離を取る。


 そして仲良し三人組で帰った。


 明日は舞浜君へのドッキリなんだっけ。忙しいなぁ。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン使い】Lv1【STR増加】Lv7【幸運】Lv45【SPD増加】Lv4【言語学】Lv41【視力】Lv40【アイドル】Lv13【体術】Lv26【二刀流】Lv31【水泳】Lv20


 SP16


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人

今振り返ってみると体育祭の細かな段取りって思い出せないものですね。

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