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ナギ記  作者: 竜顔
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変身

 精霊樹からビギに戻ってくると、ジェットさんは何やらやることがあるということでどこかへと消えていった。


「じゃあナギちゃん、Lv上げ手伝って」


 とカッサがお願いしてくるので付き合うことにした。


 今や人の影も見当たらない第一エリア。そこに私は一匹のプニット――言うまでもなくカッサ――とともに足を踏み入れる。


 カッサが戦闘する姿を見るのは初めてかもしれない…まぁその姿はプニットになってるわけだけど。


 早速獲物を見つけたカッサはプニットに突進する。それで吹き飛ばされたプニットを追いかけてまた突進。操作に慣れないようで途中で何度か動きが止まるも数発突進することでとりあえず一匹を撃破した。


「スキル構成を戦闘用にしてみよ」


 そう言った後カッサは再び獲物を見つけてとびかかる。こちらは一撃だった。どうやらカッサは普段はローグライク用のスキル構成にしていて、戦闘用のスキルも取得して地味にLvを上げているみたいだ。


 3分経つと変身した姿が解ける。クールタイムは3分なようだ。


「上昇具合は?」


「2に上がったところ」


 プニット数匹を倒してそれらしい。


「次はウサギッチに殴りかかるか」


 クールタイムが終わるとカッサは再びプニットの姿に戻…変身して一羽のラビッチョに群がるウサギッチにちょっかいを仕掛ける。


 同じようにしてその一群を殲滅する。そのあと変身を解く。そしてノータイムで再び変身する。


「なるほど、クールタイムってわけじゃないみたいだな」


 カッサによると変身を途中で解いたらその分の変身時間は残ったままらしくいつでも変身可能だそうだ。だけど全部の時間を使い切ると満タンになるまで変身はできないみたいだ。


 現状では3分使い切ってしまえば再び変身するまでに3分待たなければいけないけど、2分59秒で変身を解けば1分後でも2分後でも使えるようだ。そして時間経過で変身可能時間は回復するようなので、2分59秒で変身を解いてから1分後に再び変身すると1分1秒の間変身を持続できるみたいだ。


「さあ、もう一回溜めて操作に慣れたら第二エリアへ行くぞぉ」


 カッサは変身を繰り返しようやくLvが3になった。3になったらウサギッチとラビッチョに変身できるようになったらしい。


 そして第二エリア。ここは新米冒険者ゴブリンの訓練場にもなっているので、あちこちでゴブリン達が戦闘を行っている。


「じゃあ早速やりますか」


 今になって気づいたけどちょっとカッサのテンションが上がってる気がする。罠を解除するときに比べるとそうでもないけど。


「じゃあナギちゃん、サポートお願い」


「わかった」


 足元のウサギッチに頼まれて了承する。ウサギッチは第二エリアには出現しないので、精霊樹で聞いた声の言う通りならば第一エリアと違って一方的に殴ることはできないはずだ。


 さっそく平原ワームに突進するとすぐさまカッサウサギッチの方を向いて突っ込んでくるので、カッサが攻撃を受けないように【誘惑】で動きを止める。そのうちにもう一発カッサが叩き込む。


 いかに戦闘が苦手なカッサでも第二エリアのモンスターくらいは余裕なようで私のサポートもあってスムーズに倒していく。


「はぁはぁ、さすがにきつい…」


 カッサが値を上げ始めた。VRは本来自分の生身の体を使うような感覚で動けるというものだ。変身は生身の体を使ってモンスターの身体を操作しなければならないこともあって単純な動作でも骨が折れるようだ。


 特に躱しきれなかったつもりだったのにサイズが小さくなってる分躱すのに成功していたり、ちょっとした一撃で吹っ飛ばされたりという実際に自分が使っている本来の姿とのずれを把握するのが大変らしい。


 変身中プレイヤーから攻撃を受けた場合どうなるのか、という検証も行った。その結果ダメージ判定は相変わらず受けないけど変身状態が解けてしまうということが分かった。ただし、変身時間の方は自分で変身途中に解いたのと同じ扱いのようだった。


 これでカッサに変身した姿で探索してもらっているときに他のプレイヤーから攻撃を受けてさようなら、てことにはならないことが分かった。でもその瞬間に本当のモンスターがいればカッサは生きて帰って来れなくなるかもしれないこともわかった。


 Lvが5に上がったあたりで私の方が夜ご飯の時間帯になったので切り上げる。


「Lv5では第二エリアのモンスターに変身できるっぽいな」


「変身した感想は?」


「楽しかったよ、これで斥候役として幅が広がりそうだ」


 そのカッサの顔を見て、妙にテンションが高かったのは斥候としての役割に行かせると思っていたからか、と納得する。


 ビギの街についてカッサと別れて、私はログアウトする。


 食事を取った後お風呂に入ってそのまま眠りについた。




 ――翌日


 昼食の後にログインするとカッサからメッセージが来ていた。フレンドリストでカッサがいることを確認してコールをする。


『カッサ、今大丈夫?』


『大丈夫どころか待ってた、今日は第三エリアでやろうと思う南門に向かう』


『じゃあ私も今から行くね』


 私もビギの南門に向かう。


「お待たせ、あれから進展なしだから」


 南門に先に着いたのは私で、待っているとカッサがやってきた。どうやらカッサも昨日から何もしていないようだ。


「じゃあ行こうか」


「了解」


 第三エリア。ビッグワームを狩りに来たPTやそれが終わるまで待っている人達で少数とはいえ人がいる。


 カッサは獲物を見つけるとすぐさま平原ウルフに変身して荒野ワームに突進する。爪や口で攻撃しようとしているのか所々動きがぎこちなくなり、当たっているのかよく分からない。


 荒野ワームが反撃に出たところを私が【スポットライト】を使って注意を引いて釘付けにする。他のモンスターもカッサの方に寄ってきていたのでそれも引き受ける形だ。


「お、ありがと」


 カッサもそれに気づいたのかすぐさま自分が獲物としている荒野ワームを倒す。そして次の標的へと向かう。私もこの様子じゃ一対一で戦わせた方がいいと踏んで寄ってきていたモンスターを倒す。


 3分が経過し休憩する。


「ウルフだとかみつきとかひっかくとかやろうと思ってたんだけど以外に再現できないなぁ」


「変身って大変だね」


「そもそも変身して戦うというのが違うのかも、武器使えないし」


 カッサの言っていることは間違っていないかもしれないと思った。


「と思ったんだけどどうも変身状態で戦闘を行わないとスキルLvが上がらないみたいなんだよなぁ」


 違ったらしい。分かっていたならなぜさっきのような推測を立てたの、と問い詰めたくなった。すると


『ナギちゃん、今日は大丈夫?』


『うん、大丈夫だよ』


 クゥちゃんだった。昨日は先客がいるからと言ってそのまま放置しっぱなしだった。多分向こうはずっと私が抜け出せないと思ったんだろうけど、昨日のカッサに付き合うのにクゥちゃんも一緒でよかったんじゃ、と今更ながら思う。


『どこにいるの?』


『第三エリア』


『なんでそこ!? とりあえずボクもそっちに行くね』


『分かった』


 クゥちゃんは私が第三エリアにいると聞いて驚いていた。まぁ当然かもしれない。いつものように聖樹に誘われるかと思ったけどなにか新しく取得したスキルのLv上げと思ったのかこっちにくるみたいだ。それは間違ってない…私じゃないんだけど。


「どうかした?」


「クゥちゃんが来るみたい」


「おっ」


 私の答えを聞いたカッサはちょっといやらしい表情を浮かべる。ああこれは悪い顔してます。


「よし、作戦会議だ、クゥちゃんは今どの辺にいるか分かる?」


 カッサは作戦会議を始めた。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン】Lv30【STR増加】Lv7【幸運】Lv45【SPD増加】Lv3【言語学】Lv41【視力】Lv40【アイドル】Lv12【体術】Lv26【二刀流】Lv31【水泳】Lv20


 SP24


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人

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