心得
総合評価1,000pt突破しました。
「おや、また来たのか、短いスパンだったな」
「まぁな」
私達が建物に近づくと、それに気づいたブライトさんが声をかけてきてジェットさんがそれに返す。
「で、今度は何の用かな?」
「精霊樹に用があってな、あとナギちゃんが聞きたいことがあるらしい」
「ほぅ」
ジェットさんが急に私に話を振り、ブライトさんも興味深そうに私の顔を見る。
「えっと、心得ってなんですか?」
ジェットさんがすべてっやってくれればいいのにと思いつつ、私はブライトさんに質問する。
「心得っていうのは○○の心得ってスキルだな」
「スキル、ですか」
「ああ」
ブライトさんによると、各人種の持つ特徴をスキルに表わしたものが心得スキルだそうだ。それを伝授してくれるNPCは多くいるわけではないらしいけど、このブライトさんはその一人だそうだ。
私達が今現在得ようとしているのはピクシー族の【変身の心得】、ブライトさんのような竜人族は【極みの心得】を伝授してくれるらしいけど、現在それを伝授してもらった人は一人しかいないらしい。
その人物はローエスさんだそうだ。通りで変な物から蘇生薬なんていうすごいものまで作ってるのか。
「まぁ、単純な能力値以外の部分も含めた補正スキルと考えればいいさ」
そうやってブライトさんは心得スキルに関する説明をしめた。
「じゃあ他の種族はどんな心得が…とは教えてくれないんですか? あと俺達もあなたから心得スキルを伝授してもらえないんですか?」
「ん? そうだな…」
カッサが食い下がるとブライトさんはまた説明を始める。ホーマ族は【適応の心得】、ゴブリン族は【群れの心得】だそうだ。ブライトさんはそれ以外の種族――どうやらまだ実装されていないらしい――については触れなかった。
とりあえずこれで【適応の心得】【群れの心得】【変身の心得】【極みの心得】の四つの心得があることだけは分かった。そして
「【極みの心得】を伝授するだけのところまで残念ながら君たちは達してないというべきか…まぁ条件を満たしてないから伝授することはできない」
ブライトさんから心得を伝授してもらうことは叶わないようだ。
心得スキルの説明を受けた後ブライトさんと別れて精霊樹へと向かうために【世界樹の枝】を使い光の道を歩き出す。
「マカ○ーニャの森みたいだ」
以前ジェットさんが言っていたことと似たようなことをカッサも呟く。
しばらく歩き続けているとテンボーに遭遇したけど、彼はやることがあるらしく軽く言葉を交わすだけだった。そして精霊樹にたどり着き以前案内してもらったピクシー達が祭祀を行うという場所にやってきた。
「で、ここで何をすればいいんだ?」
「さあ?」
ジェットさんの問いかけに私は首を傾げる。来たはいいけど何をすればいいのかが分からない。
「さっきテンボーに聞いておけばよかったな…」
ジェットさんはそう呟きながら天井を仰ぐ。
「祭祀を行う場所ならお祈りしてみればいいんじゃないっすかね?」
カッサは自身なさ気に、だけどゆるい表情で提案する。
「いいかもな」
ジェットさんがそう言ってみんなでお祈りのポーズをとってみた。
「これ片膝つく方がいいかな?」
「私やってるけど何にもないよ?」
「え!? ナギちゃんやってたの? あ、本当だ」
「ってか見えてなかったんですか?」
「目を瞑ってたから」
「え、それやるんですか?」
「「俺はやってる」」
カッサ、私、ジェットさん、私、ジェットさん、私、男二人の順だ。会話を終えて確認し、片膝突いて両手を指を搦めて合わせ、目を瞑るというポーズになる。しかしまだ問題が
「手の位置どこですか?」
「鼻につくくらい?」
誰にと言わずに発した言葉にジェットさんが返してくれる。こういうのって気になりだしたらどこまでも気になってしまうよね。
そうやって試行錯誤しているときだった。
「……おっほん、そろそろいいかのぅ?」
年老いた重い声がどこからともなく聞こえてくる。え? そろそろ? ってことはさっきまでのやり取り全部見られてた? 私の心が騒ぎ出す。
「いいですとも」
ジェットさんが淡々と答えている、でも多分内心少し焦っているはず。
「ふむ、条件を満たしておるようじゃな、ではお主たちに【変身の心得】を授けよう…と思ったのじゃがお主たちはここに来る心得を持っておらぬようじゃな」
「え? このポーズってダメ? やっぱりダメ? ですか?」
思わぬ指摘にジェットさんも動揺が隠しきれていない。
「求めればわしはいつだってここにおる、変なポーズやらはいらん! おかげでいつ出るかタイミングが分からんかったではないか!」
その声は急に怒り出した。とりあえず目を開けて周囲を確認してみたけど周りに人影は見当たらない。いわゆる天の声というやつだった。
それからしばらく天の声なのか精霊樹の声なのかよくわからない声に説教される羽目になった。心得を習得してれば抜け出すことを考えたんだけどスキルの選択肢に【変身の心得】なるものはなかったので終わるまで聞き続けなければならなかった。
「では【変身の心得】について詳しく説明しよう」
「ま、まだ続くのか…ですか?」
「まず【変身の心得】というのは…」
説教が終わったと思ったら説明に入った。思わず声を上げたジェットさんの言葉は普通にスルーされる。大事なことなのかもしれないけどちょっと休憩がほしい。
【変身の心得】はピクシー族に授けられた力で、それを使い各地の物に変身し、監視役を担って他種族を見守っている云々。
変身を使ってモンスターに化けることができるようになり、そのエリアにいるモンスターに変身すれば何をしても、どんなモンスターからもターゲットにされることがないそうだ。別のエリアのモンスターに変身した場合はアクティブモンスターから普段通り攻撃される。
最初のうちは弱いモンスターにしか変身できないのでメリットは攻撃を受けずに済むくらいしかないそうだけどレベルが上がれば強いモンスターにも変身できるようになるらしい。
「でも自分の身体を使わないんじゃなんか現実にどんな影響が出るか…とか言われてないっけ?」
「変身中は自分の身体を使う、他の者には見えないがのぅ、死んだあとの魂状態になるのと一緒じゃ、モンスターになった自分を本来の自分の姿で動かす感じじゃな」
「あー、じゃあ自分より体が大きいモンスターだったら巨大ロボを操縦する感じ?」
「そういう感じかのぅ」
説明が一段落したと思われるところでのジェットさんの質問にはきちんと天の声? 答えてくれる。
「モンスターで戦うのって大変そうだな」
「慣れるまではのぅ、ほれ、もう変身できるはずじゃ」
天の声に言われて確認するとスキルの選択肢に【変身の心得】が追加されていた。必要Spは10と何とも言えないコストだ。
「ん、なるほどねぇ」
カッサは早速習得したみたいで「プニット」に変身していた。そのプニットがこっちに飛び跳ねて近づいてくる。
「やぁ!」
プニットが話しかけてくるので私は足元のプニットを注視する。
「なるほど、俺としては面と向かって話しかけているつもりだけど、ナギちゃんにはプニットしか見えていないのかぁ」
うんうんとカッサ…プニットは一人で納得している。
レベルが低いので3分が限度らしくすぐにカッサは元の姿に戻る。
私はSpを一応節約して【変身の心得】は取得せず、ジェットさんも取得しなかった。カッサが元の姿に戻ってから私達は精霊樹を後にした。
――――――――――
NAME:ナギ
【ブーメラン】Lv30【STR増加】Lv7【幸運】Lv45【SPD増加】Lv3【言語学】Lv41【視力】Lv40【アイドル】Lv12【体術】Lv26【二刀流】Lv31【水泳】Lv20
SP24
称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者 ホマレの惚れ人




