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ナギ記  作者: 竜顔
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ピ、ピ

 空へと伸びる光の道は林の木々の上を通るための道だった。


「マカ○ーニャの森のあの道みたいだな」


 ゲーム界屈指の名作とされながらシリーズでは凡作と評される、異世界のスポーツ選手の主人公が、ヒロインである召喚士とその仲間たちと旅するあの作品に出てくる森の名前をジェットさんはつぶやく。


 歩いていると、木の一本一本が大きくなっていき、最初は木々の上を通っていた道は段々木々の間を縫うようになっていった。木々の上を歩いていた頃にひときわ大きな樹が見えたので、おそらくその樹がこの道の終着点だと思う。


「今は山で例えるとどの辺なんですかね?」


「中腹?」


 下を見ると怖くて足が竦むくらいの高所になってきた緩やかに上り坂の光の道を進みながらそんな話をする。


 山に例えたのは、まだ木々の一本一本が普通の大きさで光の道が木々の上を通っていた頃に見えたこの道の終着点と思える樹が、それを取り囲む私達から見ると段々と大きくなっていく木々によってその幹が隠れているためまるで山のように映ったからだ。


 モンスターの類はいないらしく、落ちたら…、と考えなくて済むのでよかった。とはいえ下に目を向けると小さくモンスターの姿が見えるんですけどネ。正直怖いのでジェットさんの背中ばかり見ています。


 下を見ると恐怖するくらいの高所なのに、見上げてしまうくらいに大きくなった木々が一気に開けて目の前に遠くから山のようにそびえ立っていたその巨大な樹の幹が眼前に現れる。


「…これが、世界樹ですか」


「そうだと思うけど」


「違いますよ」


「「えっ?」」


 自分でも問いかけなのかわからない呟きにジェットさんの声が返ってきたと思ったら、そこに知らない声がやってきたのでジェットさんと声がハモる。


 声がした方に振り向くと、小さな…人? みたいなのが羽をはやして宙に浮いていた。いや、飛んでると言っていいのかな。その存在に呆気にとられているとその存在が口を開く。


「世界樹ではなくて精霊樹です」


 赤ちゃんくらいの身長の少年っぽい顔立ちのその存在は、右手の人差し指をぴんと立たせて私達の間違いを指摘する。


「おやぁ、他の種族がこの地に来るとは珍しいのぅ、してテンボー、この方達は?」


 テンボーと呼ばれたその存在と身長は同じくらいの老人顔が現れた。


「僕にもわかりません、あなた達は誰ですか? 世界樹の枝をお持ちだと思いますけど」


「あー、えーっと、なんていえばいいのかな」


 テンボーに問いかけられてジェットさんがとりあえず説明する。といっても【世界樹の枝】でどこに行けるのか興味があって来たのが主な目的なのでこれといって言うこともなかった。


「そうでございますか、精霊樹は私たちピクシー族の聖地にもあたるところでございます、あまり変なことをなさらなければ何も咎めること等ございません、お好きにどうぞ」


 ピクシー族の老人――長老らしい――に連れられて光の道を進み一本の巨大な枝から精霊樹に移る。


「ようこそ、我らが聖地精霊樹へ」


 老人ピクシーのその一言にとりあえず「どうも」と言っておく。


 精霊樹は木の幹が削られて、道ができていた。そしてその先、精霊樹の頂点付近に穴があけられ洞窟のようになっていた。そこがピクシー達が祭祀を執り行うばであるらしく、しかし穴のサイズは私達でも余裕で入れるくらいのサイズで、中も広くピクシーだけなら何十人と許容できる広さだった。


「他にピクシーはいないのか?」


 ジェットさんが質問する。長老とテンボー以外にピクシーは見かけなかった。


「ここはあくまで聖地です、この精霊樹の下に私達の里があるのですが…」


 ということらしい、そして長老が最後の方に非常に言いにくそうな顔をする。あ、これはまさか。


「まだ実装されてない?」


「ええ、そうです、いやぁそういってよいものかと悩んでおりましたが、そちらが知っておられるのなら話が速いですな」


 ジェットさんも私と同じことを思ったらしくて長老に突っ込むと、長老はつっかえがとれたみたいな表情になる。


「ここに来れてもあんまり意味はないのか」


 ジェットさんが残念そうに呟く。


「いえ、そんなことはございません、一度ホマレに会ってまたここに来ていただければあなた方にとってもいいことがあると思います」


 長老はジェットさんの呟きを強く否定する。


「ホマレ…?」


「はい」


「誰?」


「詳しく話すことは禁じられておりますので」


 ジェットさんの追及もむなしく長老はホマレとかいうのの説明はしてくれなかった。


 長老とテンボーは何やら用事があるらしくてそそくさとどこかへ行ってしまった。聖地に他の種族の来客を放置していいのかな、と疑問に思いながらもジェットさんと動ける範囲で周囲を見渡す。


 恐る恐る幹を削って造られた道の端っこから顔をのぞかせて下を見たりしたけど、生物は確認できなかった。


「せっかく二人で新しい冒険ができると思ったのに残念だなぁ~」


「ですね、今は何もできないみたいですし」


 伸びをしながら話すジェットさんに、下が見れない私は空を見上げながら言葉を返す。


「じゃあ帰ろうか、帰って何する? あ、そういえば俺、ナギちゃんの水着姿見てないから、よし、海に行こう!」


「あ、私ルージュナにちょっと用があるので海はまた今度で」


 帰った後の話でテンションが上がっていくジェットさんの勢いに負けずに答える。ルージュナでジョーカーのことを調べておかないとまた忘れてしまいそうだし。


「あ、そう」


 ジェットさんからはテンションが思いっきり下がった返事が返ってきた。


 光の道を逆行しブライトさんのところに戻る。


「お、戻ってきたか、どうだった? デートは」


 私達が戻ってきたことに気づいたブライトさんは開口一番それだった。


「ピクシー族に会ったな、種族については詳しく知らないんだけどなぁ」


「はは、まぁそれなりにはわかるけどな、一応この世界には八種類の人族が存在している、ピクシーもその一種だな」


 ジェットさんの呟きにブライトさんはちょこっとだけ種族について話をしてくれた。女神によって作られたとされる四種族と男神によって作られたとされる四種族の計八種族がこの世界には存在するらしい。


 そして私達のような人族を「ホーマ」族または霊人族と呼ぶらしい。ホーマ族やピクシー族は女神側、ゴブリン族やブライトさんみたいな竜人族は男神側だそうだ。どちら側だからと言って何かあるわけではないらしく、


「結局はそいつ次第さ」


 とのこと。他にはどんな種族がいるのか、ということは教えてくれなかった。そこは自分たちで会う方が楽しいだろう? という配慮なのかもしれない。


「ところで御嬢さんや、ブーメランだと立ち回りづらいということはないかい?」


「え? ええまぁ」


 種族についての話が終わるとブライトさんは唐突に私に話を振る。


「そうかい、じゃあジェット、ローエスにこれを渡しておくれ、それと嬢ちゃんにもおんなじ物をあげるよ」


 そういってブライトさんが渡してきたのは紙でできた手裏剣みたいなものだった。折り紙ではなく、簡単に言うと画用紙みたいな紙を十字に切り取ったようなものだった。



【ペーパーブーメラン】

 武器カテゴリー:ブーメラン

 ATK+10(+STR)


 狭いところでも使える紙でできた小さなブーメラン。油断すると敵まで届かない。



 新しい表記だ! STR依存じゃなくてSTRを「+」できるなんて。


「へぇ、でこれをローエスに渡してなんて言えばいいんだ?」


「あいつなら面白い改造をしてくれそうだからな」


「了解」


 私が【ペーパーブーメラン】に興奮している横で二人は普通の様子で話を進めていた。ちょっと恥ずかしい。


 そのあとブライトさんと別れ、第四エリアではイノシシ軍団に追いかけられながらビギに帰った。


 そしてルージュナの図書館にはジョーカーに関することは分からなかった。


――――――――――

NAME:ナギ

 【ブーメラン】Lv28【STR増加】Lv3【幸運】Lv42【SPD上昇】Lv39【言語学】Lv41【視力】Lv40【アイドル】Lv12【体術】Lv19【二刀流】Lv30【水泳】Lv20


 SP23


称号 ゴブリン族のアイドル 恋に惑わされる者

ホモ(人類)+ヒューマン(人間)=ホーマ

霊人族の霊は霊長類の霊です。(※ゲシュタルト注意)

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