ロールシャッハテスト
少なくともこの星は僕らのように非生産的な人間でも受け入れていて、吐き気がする位にあからさまな偽善行為にだって嫌気がさしてる。
美しい国なんて、汚いことから目を逸らすやり方しかできない、矛盾と破綻の中で自分だけは小奇麗な生き方をしたい人達の作った理想郷。
時間だけがただ無常に過ぎていくだけで何をそんなに不安に思うんだい?
時間が有限だって?何でもかんでもやれば良いって訳でもないだろう。
ただ此処に居て、悩んで答えは見つからない(それってそんなに悪いことだろうか?)
そして時間が流れる。
夕凪に投影される影法師。人はすぐには変われない。
ヒーローは居ない。世界は当たり前でできていて、その枠の中でしか生きれやしない。
一歩ずつしか人は進めない。瞬間移動の方法なんて知らない。
それが嫌になったんだ。それに見切りをつけたんだ。
正しいことは解るのに、それで良いと思えないのはなぜか?
誰か教えて欲しい。
僕はずっとここで停滞している。
前に進んでも壁しかみえないじゃないか。戻る道は、消されていく。
生きているのが酷く困難に思える。
眠りはすごく自然な状態に僕を近づける。死に最も近い安らぎ。
一歩を踏み出しても壁が近づくだけで、景色は見えない。
近道に見えるそれは、さらに深い地下への入り口なんだ。
正しいことばかり、僕は知っている。自分が一番正しくないことも知っている。
だからって、どうすればいいのだろう。
ここは温かくて、君が思っているよりもずっと居心地は良い。
でもそれは、幻想だって気づいている。目が醒めたらここがどんなところなのかを嫌でも思い出している。
僕はここで、時間も空間も動かせないままに停滞している。
いつか魔法が解けたら、呪いと言い換えてもいい。
地面は刹那に崩れ去り、二度と這いあがれない闇へと墜ちる。
けれども僕は、前にも後ろにも進むことができずに、とどまり続ける。
誰もが、ここが危険だって知っている。(もちろん僕も)
僕は停滞している。
諦めたわけじゃないけれど、無意味だって知っている。
危険なのはこの場所だけじゃない。それも知っている。
無責任な誰かの声だけが偽りの希望を吐き出して、狼少年みたいに信用を失っていく。
また、誰かが僕を惑わせる。天使のような声で、ハリボテの救済と幸福を保証する。
傍から見れば、停滞する僕の姿は滑稽で惨めで愚かに見えるだろう。
僕は悲観的なわけじゃない、ただ情報ばかりが頭では溢れている。
絶望しているんじゃない、ただここで身動きの取れない自分の姿を見ているだけだ。
停滞している。影法師が永久運動を繰り返し、変化する明日を見届ける。
通り過ぎていく過去も、到達しつつある未来も見えない。
僕は途方に暮れている。そして、僕は停滞している。(それは絶望ではない)