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レイン、出勤

「……んん……っ」


 魔王の指示の下で本格的に世界を征服し、真の平和を創り上げるための行動を行う中で、レイン・シュドーには日々の楽しみが増えていた。その1つが、毎日彼女を眠りから覚ましてくれるほのかな陽の光であった。

 これまでずっと世界の果ての荒野の真下に暮らしていた彼女たちを照らしていたのは、魔王が創り上げた『偽り』の太陽だった。これが無ければ永遠の闇に閉ざされていたであろう巨大な地下空間を根城としていた彼女であったが、今は違う。レイン・シュドーしかいない町や村の中で、思う存分暖かい日差しを独占する事が出来るようになったのだ。



「……ふう♪」


 今日も彼女は、爽やかな朝を味わうためにベッドから元気良く目覚めた。衣装は普段どおり、健康的な肌を思う存分に露出する純白の『ビキニアーマー』と呼ばれるものである。これが彼女が一番大好きな服なのだ。

 1人のレインが起きると、それに次いで両隣の2人のレインも目を覚まし始めた。そしてその隣、また隣、上、下、右、左――寝室を埋め尽くす全く同じ姿形をした大量の美女たちが、一斉に動き始めた。


「おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」おはよう、レイン♪」…


 大きな胸に滑らかな腰つき、柔らかい唇から放たれる一番大好きな名前、それらを思う存分味わえる朝の時間が、彼女は大好きだった。自らの力で部屋の中の空間を歪ませ、幾らでも大好きな存在が入る事が出来るようにしていたのだ。

 そして、部屋の中を埋め尽くしていた2万人のレイン・シュドーは、朝食の前に一斉に外へ飛び出した。もう1つ、この場所でしか味わえない楽しみがあるのである。それは――。


「うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」うわぁ……!」…


「おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」おはよう!」…


 ――屋敷の傍に聳え立つ山を、肌色と黒、そして白色で覆いつくしながら次々と現れ続けている、何百万人ものレイン・シュドーの大群であった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 この場所は、ビキニ衣装の女剣士にしてかつての勇者、レイン・シュドーが毎日生まれ続ける場所。魔王やレインたちが佇む本拠地、彼女が占拠する町や村と共に、新たな彼女の生産拠点として魔王の指示で制圧した山である。人里から遠く離れ、行き来するものもほんの僅かしかない所だが、それ故に彼女たちは思う存分この場所を改造する事が出来たのだ。

 その結果が、山から栄養を貰って大きくなる植物の全てから日々生まれ続けるレイン・シュドーの大群であった。この山の植物は、その大きさも種類も関係なく、永遠の命と屈強な体を得る代わりに永遠にレイン・シュドーを生産し続ける『レイン・プラント』に変貌していた。今日もまた巨大な皮を破り、新たな純白のビキニ1枚のみに身を包んだ美女の集団が大量の実の中から生まれ、山肌を覆いつくしたのである。


「うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」…


 そして、そんな彼女たちの監視と案内、そして愛撫を担当しているのが、山の傍にあった建物に住む2万人のレイン・シュドーであった。


「今日もたくさんレインが生まれたねー♪」「うんうん、気持ちいい光景ね♪」「早起きして良かった♪」「ほんとほんと♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」「うふふ♪」…


 確かにこの場所は人里から離れてはいるが、だからと言って人がやってこないわけは無い。現に彼女たちが占拠している建物は、この場所なら安全だと言う勝手な思い込みで町を見捨てた貴族が移り住んでいたところである。そのために魔王は彼女に指示し、他の占拠地域と同様に監視の目を光らせるように命令した。とは言え、レインたちはこの場所で新たな自分が生まれるのを毎日見るのを元から楽しみにしていたので、わざわざ命令しなくても大丈夫であったが。


 ただ、それでも彼女たちはこの場所から毎日必ず離れなければならない時間があった。

 空を眺め、太陽が程よい具合に南の方向へ動き始めた辺りで、朝飯を済ませた2万人のレインが動き出した。


「……さて、そろそろかな?」そうね、レイン」そっちのレインも準備できた?」


「大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」大丈夫よー♪」…


 数百万人のレインが、見張り役の自分自身の声に明るい返事をした。空中に浮かぶ彼女たちの体は、少しづつ漆黒のオーラに包まれ始めていた。この力を使い、現在の彼女たちの総本山である『本拠地』へと瞬間移動をするためである。この場所にずっと留まるわけにはいかない、彼女たちもまた魔王の下で世界に真の平和をもたらすために活動をしなければならないのだ。そしてそれは、2万人のレインもまた同様であった。

 ただし、瞬間移動を行う前に彼女たちにはやっておかなければならない――いや、ぜひやっておきたい事があった。


「じゃ、私たちも……」そうね、レイン」でも、まず先に……」そうよね、レイン♪」


 数百万人の自分自身にあらゆる方向から見守られる中、レインたちはそっと目を閉じ、右手の掌を自分の前にかざした。そして閉じた目に強く力を入れた瞬間、彼女の掌から一斉に大量の漆黒のオーラが現れ、それらはあっという間に姿を変え、僅か数秒で非常に見慣れた存在となった。

 そして、目を開いた2万人の彼女たちを待っていたのは――。


「うふふ、レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」…


 彼女と全く同じ姿形――お揃いの髪型、お揃いの体つき、お揃いの純白のビキニ衣装を持つ、2万人のレイン・シュドーたちだった。

 

 今やレインにとって、新しい自分を魔術で創造することは日常的な行為となっていた。魔王の指示以外にも、暇つぶしや留守番、日々の鍛錬など様々な機会を見つけては、彼女は漆黒のオーラを体から放ち、そこから新しい自分自身を次々に生み出し、それを楽しんでいたのである。今や一瞬だけ精神を統一さえすれば、あっという間に自らの手でレイン・シュドーを作り出すことが出来るようになっていた。

 そして今回新たに自分自身を創造した目的は、2万人のレインに代わってこの場所の監視を勤める事。彼女たちが『本拠地』へと戻り、やる事を済ませてくる間、新しい彼女たちはこの場に残って重要な役割を果たすのである。


「それじゃ、いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」いってきまーす♪」…

「いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」いってらっしゃい♪」…


 こうして、数百万人の新たな自分自身と共に、2万人のレインは大量の自分たちに見送られながら、静かにその場から姿を消していった……。

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