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レイン、歓喜

補足:この話は別サイトで頂きましたアイデアを基に制作しました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

 商業で栄えていた海辺の町に突如現れ人々を恐怖に陥れた魔物が、勇者キリカ・シューダリアやその部下の活躍で呆気なく撃退された翌日。

 勇者たちの活躍で平和な日々が戻ってくるはずだった町は、異様な光景に包まれていた。光を一切受け付けないかのようにどす黒い巨大な半球状のドームによって、町の全てが覆われてしまったのだ。外から町の内部を一切見れないばかりか、内部に立ち入る事すら出来ない状況になってしまったのだ。当然、その内部がどうなっているかを知る手段は一切残されていない。


 これこそ、町が恐ろしい『魔物』によって制圧されてしまった証であった。

 世界中の村や町がこのような謎のドームに呑みこまれ、魔物、そして彼らの親玉である魔王の支配下に置かれ続けているのだ。


 一体ドームの中では何が起きているのだろうか。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」…


 漆黒のドームの内部にある、昨日までたくさんの人々によって賑わっていた町を埋め尽くしていたのは、大量の『魔物』の嬉しそうな微笑みであった。それもただの魔物ではない。全ての魔物や全ての人間の力を結集しても敵わないである、最強クラスの存在たちである。


「うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」うふふ♪」あはは♪」…


 『魔物』たちは、人間と非常に似た姿を有していた。長い黒髪を1つに結い、背中に長い剣を背負った、女性の姿である。彼女の健康的な褐色めいた肌や、一歩進んだだけで揺れ動く大きく豊かな胸は、漆黒のドームとは対照的な純白のビキニアーマー衣装1枚と長いブーツのみで包まれていた。

 その姿は、かつて人々に希望、勇気をくれる存在であった。魔物を倒すために立ち上がった勇者たちを率いるリーダー、剣の勇者『レイン・シュドー』として。だがここにいるレイン・シュドーと同じ姿をした存在は、彼女の姿を真似た魔物でも、魔王が生み出した偽者でも無かった。全員とも、人間に絶望し、魔王に協力することを決意したレイン・シュドー本人なのだ。


「うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」うふふ、レイン♪」…


 レイン・シュドーは、日々増え続けていた。彼女の強大な『魔術』によって作り出された黒い暗雲に包まれた結果、都市の生きとし生ける人間、動物など生きとし生けるもの全ては、その体や記憶、そして意志などあらゆる物がレイン・シュドーによって変化させられてしまった。お揃いの髪型に全く同じ顔、同じ胸のサイズにお揃いの純白のビキニ衣装――レインが一番大好きな姿に。

 だが、それでもレインたちが満足することは無かった。数万人の自分自身だけではまだまだ物足りないと感じていたのだ。その結果が、あらゆる場所から高度な『魔術』の力で自分の数を増やし続け、町を埋め尽くし続ける全く同じ姿形の美女の大群であった。


「ふふ、レイン♪」なあに、レイン♪」

「レイン、今日も綺麗よ♪」ふふ、ありがとう♪」そういうレインだって綺麗よ♪」あはは♪」うふふ、ありがとう♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」…


 町のあらゆる建物から、レインは際限なく姿を現し続けていた。家のドアや窓、煙突、市場に置かれた箱の中、さらには食堂の倉庫やトイレからも、全く同じ純白のビキニ衣装を身に纏い、顔に満面の笑みを浮かべながら。彼女たちは、あらゆる場所が自分で埋め尽くされていく事がとても楽しかった。あちこちから次々に自分と同じビキニ衣装の美女が笑顔で現れる光景を見るだけではなく、その一員に自分も加わると言うのも彼女にとって最高の娯楽であった。


「あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」あはは♪」…


 そして純白のビキニ衣装の美女によって埋め尽くされるのは、地面だけではなかった。

 町の中に立ち並ぶ建物の屋根と言う屋根は全てびっしりとレイン・シュドーの大群によって覆いつくされ、互いに押し詰めあいながら自分の肌の感触を思う存分確かめ合い、笑顔を見せ合っていた。その数は数千、いや数万はいてもおかしくないだろう。そして容赦なく増え続け、屋根の上がぎゅうぎゅう詰めになり、流石に入りきらないと感じたレインの大群は、自らの体を薄らと漆黒のオーラ――彼女の用いる『魔術』の基礎となる魔王直伝のオーラによって包み、空に浮かび始めた。

 1人、10人、100人、1000人――あっという間に町の空も、大量のレインたちによって覆われ始めたのである。


「レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」…


  だが、レインは決して自分が魔王の手下、そして悪の存在であるとは認識していなかった。むしろ、自分こそがこの世界を救う存在である、と今もなお考えていた。

 果てしない旅の末、彼女は自身が『勇者』である事に対しての絶望を感じた。勇者として自分を崇める裏で、誰もたった1人の人間として見ず、自分を魔物を倒す存在として都合よく扱い、挙句の果てに自身が命を落としても尊い犠牲の一言で済ませ、一切省みる事がない腐りきった「人間」そのものを、レイン・シュドーは悪そのものだと感じるようになったのだ。

 そのような世界は決して平和ではない、真の平和はこのレイン・シュドーで覆い尽くされた世界、たった1つだけだ――その強い信念の元、この町もまたレインにとって理想的な平和な場所へと生まれ変わったのである。


 360度、あらゆる場所がレイン・シュドーによって包まれた町。その中で一番大きな建物、この都市の全てを昨日まで司っていた『城』の頂上に、5つの人影が突然現れた。昨日この町を襲った魔物たちと全く同じ現れ方である。

 そして、黒いオーラを解いたその姿もまた、純白のビキニ衣装に身を包んだレイン・シュドーであった。しかし彼女たちは、この町のレインとはまた違う存在である。彼女たちの本拠地である、『魔王』が潜む世界の果ての荒野からやって来た、別のレイン・シュドーなのだ。


「「「「「おーい、レインー!」」」」」


 そして、5人のレインが満面の笑みで自分の名を呼んだ瞬間――。


「あ、レイン!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」おーい!」レインー!」…


 ――町は一瞬にして、何百万ものレイン・シュドーの朗らかな声で満ち溢れた。この場所も、自分たちによって『平和』になった事を喜ぶかのように……。


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