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女勇者、成功

「……改めてみると」「結構広いよねー」


 『魔王』の力によって数日前の過去に転送されてきたレインが、作戦の成功によって手に入れた『豪邸』を空から見下ろした。眩い月の光が、建物や敷地を埋め尽くす黒と肌色、そして白の洪水を煌びやかに見せ付けていた。


 つい数十分ほど前まで屈強で下品な男たちが何百人も住み着いていた巨大な豪邸は、大量のレイン・シュドーによって埋め尽くされていた。豪邸の床ばかりではなく、オーラを応用して空も飛べる彼女によって、天井も屋根も、大きな壁の一番高い場所も、見渡す限りあらゆる場所が純白のビキニ衣装の美女でいっぱいになっていたのである。


「「おーい、レイン!」」



 周りには一切の人影も無く、聞こえるのはかすかな虫の声だけ。誰もいないこの場所で、ついレインは大声で叫んだ。その直後、空の彼方を飛ぶ2人の彼女に向けて、2498個もの声が重なり合い、まるで天国の天使たちによる合唱のように響き渡った。



「レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」レイン!」……


 

 一度やってみたかった、と全く同じ考えを持つ女性たちは笑顔を交わした。遥かな空から地上を見下ろし、そこを覆い尽くす無数の自分自身が放つ声が大地を包む情景を堪能する――遠い未来、世界が永遠の平和に包まれる頃に実現するであろう光景を、ほんの僅かだが実現させる事ができたからだ。

 だが、それは同時にまだその『夢』に向けて自分が歩みだしたばかりである事も大いに知らされる結果となった。今はまだまだ自分たちは未熟、『魔王』の力を借りなければ、このような楽園を生むことなど不可能である、と言う現実を見た彼女は、夢の一端に浸るよりも先に自らの任務を遂行する事にした。


「おまたせ、レイン♪」「お帰りーレイン」

「じゃ、早速やる?」「おっけー♪」「やろうやろう!」「準備もばっちりだもんねー」


 数日後の世界から、魔王が所有する不思議な『水』のちからで場所に送り込まれたレインの数は100人。これだけでも、油断しきった憎たらしい男共を屈服させるには圧倒的な戦力であったが、レインはそれだけに飽き足らず、自らの持つ『魔術』を駆使して次々に新たな自分自身を創造し、有無を言わさぬ数と実力を持って征服に成功したのである。男たちが自らに恐れおののく様子を見る中で、たった100人では物足りない、もっともっとレインが欲しい、大量のレインと一緒に喜びを噛み締めたい、という欲望に駆られていたのかもしれない。

 その結果、この豪邸にいるレインの数は、2500人にも達していた。



 だが、彼女たちはそれでもなお飽き足らず、さらに自分たちの数を増やそうと動きだした。というより、元から彼女は自らの数を大量に増やす事も目的に、この場所にやってきたのである。


「うわー……」「下品な光景……」「早くやっちゃおうよ」「そうだねー」


 レインの掌に現れた黒いオーラの中から現れたのは、指でつまめるほどの小さな丸い錠剤だった。以前『魔王』によって渡され、その効果をしっかりと確かめた彼女は、それを無から創り出すための方法を魔王からしっかりと伝授してもらっている。勿論、この錠剤がどういう意味を成すかについても。

 そして、倒れ込んだ何百人もの男たちを一箇所に集めた純白のビキニ衣装の剣士たちは、男たちの口を魔術で無理やりこじ開け、例の錠剤をその中に含ませた。これだけで、錠剤の効果は十分に現れるのだ。




 最後の男に錠剤を含ませた次の瞬間、屈強かつ下品だった男たちの体を、目が眩むほどのまばゆい光が包み込んだ。その中で、良くも悪くも大きい彼らの体が次第に縮まり、小さくなっていった。やがてその胸が大きく、髪は長く、体つきもほど良く整い始め、やがて光に包まれながら、レイン・シュドーと全く同じ姿形の女性が姿を現し始めた。



「……うふふ、はじめまして、レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」…


 大量の優しい声に揺り起こされるように、つい先程まで「ならず者の男ども」だった存在が――。


「うふふ、おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」おはよう♪」……



 500人の『レイン・シュドー』として、心地よい目覚めを迎えていた。





 なお、当然ながらたった3000人だけで満足するレイン・シュドーでは無かった。


 数日後――レインが魔王の『水』の力で過去へ移動した日の翌日――に魔王がこの場を訪れ、レインたちに一旦撤収する事を伝えに行ったとき、魔王を待っていたのは――




「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「

            あ、おはよう、魔王!

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」



 ――豪邸どころか、その周りの森にまで増え続けた、5000人の純白のビキニ衣装の女剣士であった。

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