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レインとレイン

「「「「「それじゃ、レイン・シュドーの勝利を祝って……!」」」」」


「かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」かんぱーい!!」…



 長く続いた魔王とレインの戦いが、1人も敗者を出さないまま終わりを迎えた後、世界は再び大きく変わった。いや、本来あるべき理想的な環境を取り戻した、と言った方が的確かもしれない。


 全てを理解し分かり合ったレイン・シュドーとレイン・シュドー――『魔王』という存在を形作っていた仮面や衣装を脱ぎ、元の純白のビキニ衣装の姿をさらけ出した美女により、あっという間に世界は一様に覆いつくされた。右を見てもレイン、左を見てもレイン、前も後ろも、地平線の果てまで数限りなく全く同じ姿かたちをした自分が埋め尽くすと言う彼女たち全員にとって最も美しい光景が、誰からも妨害を受ける心配をする事なく展開されることになったのだ。

 その嬉しさを思う存分堪能するかの如く、彼女たちは次々に木やガラスでできた器を無から創造し、その中になみなみと注がれた飲み物を一斉に口にしながら宴を盛り上げ続けた。目の前に創造した机の上にある食べ物を頬張ったり、互いに口移しで分け合ったり――。


「「「「「「「「「「あーん♪」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「「ほら、あーん……んっ……ちゅ♪」」」」」」」」

「「「「「「「「「「あぁん、もうレインったら♪」」」」」」」」」」」


 ――その麗しい唇の風味を何度も何度も確かめ合ったり、彼女たちは思い思いの方法でその『味わい』を楽しみ続けた。

 そして勿論、レインたちは周りに溢れる豊かな胸、滑らかな腰つき、そして美しい形のお尻の心地をたっぷりと感じることも忘れてはいなかった。世界中の至る所でどこか照れ交じりの嬉しそうな声が響き、それに刺激されて別の場所からも次々に新たなレインの声が聞こえ、更にそれが別の刺激へと繋がっていき――。



「あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」あぁん♪」あはははは♪」…



 ――長い長い戦いの末、ついに勝ち取ることができた真の平和を、レイン・シュドーたちは心行くまで思う存分楽しみ続けた。



~~~~~~~~~~~


「「「「……それにしても……」」」」

「「「「「なあに、レイン?」」」」」


 それから数日間にも渡って絶えず世界中を覆い尽くした興奮がようやく収まり始めた頃、宴の始まりから更に数を増した純白のビキニ衣装の美女たちの一部が、穏やかな笑顔を見せながら両隣にいるレイン――自分たちと全く同じ姿形、同じ声、そして同じオーラを持っていながらも『自分』とはまた別の存在である美女にそっと語り掛けた。今こうやって世界中に広がる美しい光景を味わう余裕を得る事が出来るまで、魔王の正体がレイン・シュドー、それも自分たちがいる現在よりも何千何万、いや何億日も後かもしれない遠い未来からわざわざやって来た存在だなんて、思いもしなかった、と。



「「「「そうよね……」」」」私も『貴方』たちだった頃は……ね」」」」うんうん、考えもしなかった……」」」」


「「「「「「魔王を絶対に倒す!倒さないと平和は訪れない!」」」それしか考えてなかったのからね、私……」」」



 確かに、改めて振り返れば自身の正体がレイン・シュドーそのものである、と言わんばかりの行動を魔王は幾度となく起こしていた。レイン・シュドーしか知らないはずの様々な行動を先回りして感知していたり、あらゆる行動を的確に動かす助言を下したり、思い当たる節はいくつも存在した。そもそも、自分の行動を阻み続けていた勇者の一団のリーダーであったはずの彼女を保護し、危害も洗脳も加えないまま配下に置いた時点で、魔王とレインの間に深い繋がりがあると読むべきだったのかもしれない、と『現在』のレインは一斉に苦笑いをした。しかし、その時の自分がとった行動を完全に把握しているという事は、すなわちそれに反する行動、自分が思いもよらないような動きをすれば良い。それが『魔王』という脅威の秘密の一部だ、と『未来』のレインは優しく過去の自分の頭を撫でて励ました。別の時間の自分自身の手の温もりは、『現在』の自分自身にも負けない快感であった。


「「「「「「そっか……」」」私が魔王の正体を見抜けなかったのは……」」」

「「「「うん、それもあるけど……」」もう1つ、ここで教えちゃおうかな?」」

 

 そう言った瞬間、世界中を覆い尽くすレインたちの半数の前に、残りの半数のレインが驚く代物が姿を現した。あの時、彼女が最後の気合とともに断ち切った『魔王』の仮面や衣装が再び姿を現したのである。そんなに簡単に創造できるものなのか、と尋ねた現在のレインたちであったが、残念ながらその答えは「否」、より鍛錬を積み、格段に強さを増した『未来』のレイン・シュドーだからこそ創り出せるものであった。何せ、この衣装にはある一定の段階の強さを持たなければ着用した者の正体が暴けない、それどころか正体を見抜くという行為すら阻害してしまう、特殊かつ強力オーラの糸が縫いこまれていたのだから。


「「「「……ああ!!」」そういう事……!!」」


 その言葉を聞いた時、現在のレインは『魔王』に追いつくほどに強くなった自分自身をようやく実感する事が出来た。

 魔術も使えず仲間の真相も見抜けず剣だけに寄り縋っていた勇者だった頃のレイン・シュドーは勿論、そこから力を伸ばし、自分を無数に増やせる段階になってもなお、魔王の正体が暴ける強さの段階には及ばなかった。レインはただ魔王を倒し世界を平和にすることだけを考え、その様子を未来の自分が仮面の中から厳しくも暖かく見守ってくれている事にも気づけなかったのである。そしてあの憎き裏切り者の魔物との決戦、自分を破滅に追い込んだ勇者たちへの復讐を成し遂げてもなお、彼女の強さはまだ足りなかった。いつ果てるとも知れない魔王との戦いの中で、ようやくレイン・シュドーは魔王を形作っていた衣を剥がせるだけの力を身に着ける事が出来た、という訳である。

 そこに至るまで何度も焦り、時には涙を流すこともあったが、それでも魔王=未来の自分の助力も得ながら立ち上がり、彼女は自分を含んだ何者にも負けない、真の平和を掴む存在になったのだ。


 しかし、それは裏を返すと――。



「「「「「「……でも、なんかごめんね、レイン……」」」」」」

「「「「「「ん?」」」」」」



 ――レイン・シュドーの行なった行為は、ほぼ全て『未来』の自分の掌の上、と言う事にもなる。魔王を打ち倒したのも、裏切った勇者への復讐も、世界平和も、魔王の思いのままに進んだ結果が、この純白のビキニ衣装の美女でぎっしり埋め尽くされた勝利の宴なのだから。そもそも魔王が遥か未来のレインと同一の存在であるという事は、人々が息づいていた世界が混乱に満ち、彼女が勇者として立ち上がるきっかけそのものがレイン・シュドーによる侵略、いわば彼女による壮大な自演となるのだ。改めてその事実を思い返し、つい謝ってしまった未来の彼女の頭を、今度は現在の彼女たちが一斉に撫でる番となった。自分たちは全く気にしていないし、むしろ魔物を率いて世界を侵略しようとした事に感謝してもし足りない、という励ましの言葉も添えて。


「「「「だって、魔物が暴れなきゃ世界も1つに団結しなかったし……」」人間の愚かさや醜さも暴かれなかったんでしょ?」」

「「「「「「まあ、それもそうよね……」」」」」」


 それに、もし魔物や魔王という恐るべき脅威が現れなかったら、このレイン・シュドーは何の目的も持たず何故生き続けるかという疑問に答えも見いだせないちっぽけな存在のまま愚かな人間たちの中に埋もれ、生涯を終えていたかもしれない――あり得たかもしれない最悪の未来を防いでくれた未来の自分へ、レインはもう一度感謝の心を伝えた。ほんの僅かな心残り――自分を応援し続けたにもかかわらず、ここに至る過程で犠牲にしてしまった存在、女性議長リーゼ・シューザと浄化の勇者ライラ・ハリーナに思いを馳せながら。


「「「「「そうよね……2人には、悪い事しちゃったかな……」」」」」

「「「「「「でも、リーゼもライラも、今はもう人間たちに縛られる事は無いのよね……」」」ある意味、だけどね……」」」


 どちらもその人生にとどめを刺したり回復不能なほどに追い詰めたのは、魔物よりも恐ろしい人間の醜さ、愚かさ、哀れさなのは間違いない。しかし、そこに至る過程には間違いなく自分たちが関わっている。その事実を決して忘れてはならないし、2人のためにも、レイン同士で協力し合って世界を包む平和を守っていなければならない、と地平線の果てまでどこまでも覆い尽くした純白のビキニ衣装の美女は、手に持った盃の味わいとともに一斉に誓い合った。



「「「「「「「「「「「「……ありがとう、リーゼ……」」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「「「……ありがとう、ライラ……」」」」」」」」」」」」



~~~~~~~~~~~



 それから少し経ち、美味しい食べ物や飲み物、そして自分自身の心地のお陰で再びレインたちの気持ちが高ぶり始めた頃、現在の彼女たちの中に1つ気になる質問が浮かび始めた。

 確かに、この場に至るまで世界の全ては魔王によって動いていたと言っても過言ではなかった。人間たちの本性を暴き、レイン・シュドー=魔王側からみれば過去のあどけない無力な自分を鍛え上げ、やがて全ての命を巻き込む形で世界に真の平和が訪れた。しかし、そんな中で魔王=レインから生まれたにもかかわらず、彼女に歯向かい愚かな人間に味方をした存在がいた。レインを幾度となく追い詰め、彼女の心を苦しめ続けた忌まわしく憎い存在が。


 一体あれは何者だったのか、何のために生み出されたのか――そう尋ねた、まさにその時だった。



『……おやぁ、なんの話をしてるんですかぁ?』

「「「「「「「「「……!!!」」」」」」」」」」



 彼女たち――現在のレイン・シュドーの耳に、一番聞きたくなかったあの心に粘りつくような非常に気持ち悪い声が轟いたのは。

 慌てて上空に意識を向けた彼女たちは愕然となった。当然だろう、彼女の中で既に懐かしい思い出となろうとしていた存在が、意志も心も持たないレイン・シュドーを模して作ったという紛い物、ダミーレインで空を一面覆い尽くしながら悠々と浮かび続けていたのだから。



『お久しぶりです、レイン・シュドー♪』

『お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』お久しぶりです』…



 そして、心を感じさせないダミーレインの無数の響きと共に、トカゲの骸骨のような頭、骨で形作られた尻尾、そしてみすぼらしい漆黒の衣装を身に着けた裏切り者の魔物ゴンノーは、嬉しそうにレイン・シュドーに挨拶の声を世界中に響かせた……。

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