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レイン、豊胸

「「「「ねえ、レイン……?」」」」

「「「「「どうしたの、レイン?」」」」」


 今日も無事に過酷だが楽しい鍛錬――自分同士で命を奪い合い、奪われた相手は自らの滅びを超える増殖の力を発揮して闘技場を埋め尽くす――を終え、レインたちは日課である風呂に入る準備をしていた。今のレインは何もせずとも自分の力で自在に疲れを癒し、明日への活力を創り出すことが可能になっているのだが、水平線が見えるほどに空間を歪ませに歪ませた途轍もなく巨大な風呂の中で多くの自分と語らうと言う行為をとても楽しみにしていたのだ。

 そんな中、全身の僅かな部位を纏っていた純白のビキニ衣装を脱いでいたレインたちの一部が、ある事に気づいた。決して鍛錬にも日頃の生活にも関係しないが、彼女の嗜好の面では非常に大きな影響がある内容だった。


 レイン・シュドーの体が、以前よりも『美しく』なっていたからである。



「「「「そう言えば……そうよね、レイン……」」」」

「「「「「あぁ、本当ね……」」」」」


 そう言いつつ、レインたちが一斉に持ち上げた彼女たちの胸は、以前よりもその大きさ、重み、そして柔らかさが一回り増していた。前後左右を埋め尽くす自分たちの腰つきも、以前より滑らかかつ艶やかな形状に変わっていた。そして、ビキニ衣装を着たままの尻に目が行ってしまったレインたちは――。


「「「「「あぁん、もう……って私もか……♪」」」」」

「「「「「「えへへ、ごめんごめん……♪」」」」」」

「「「「「「そっちこそ……♪」」」」」」


 ――つい一斉に、その心地を確かめ合ってしまうほどだった。



 確かに今までも、レイン・シュドーは自分と言う存在の美しさに幾度となく酔いしれ、愛で続けていた。ビキニ衣装から覗く豊かな胸や、どんな動きにも柔軟に体を支えてくれる腰つき、そしてしっかりと大地を踏みしめ、空を飛ぶ時にも原動力となるむっちりとした健康的な太ももなど、幾多もの戦いを潜り抜けてきた彼女の全身は魅力にあふれ続けていた。かつてはその体のみを愚かな人間たちに評価されてしまうという事態もあったが、今は全くそのような心配もなく、レインはたっぷり自分を味わい尽くすことが出来たのである。


 しかし、それがある意味では仇となってしまった。あまりにも自分と言う存在が身近にあった事や、その美しさの変化を味わう暇がないほどに彼女が追い詰められ、そして怒涛の反撃を行い続けていたせいで、こうやって自分の体と改めて向き合う余裕や感情が持てなかったのである。そして、彼女たちは以前よりもより『美しさ』が増していた自分の体に、これまで心の中の固定概念として宿っていた『レイン・シュドー』と言う存在を書き換える必要がある事を痛感した。



「「「「レイン……そんなに美しくなってたなんて……」」」」

「「「「全然気づかなかった……」」」」



 ただ、あまりにその事を意識しすぎると、身動きが取れなくなってしまうと言う事も、レインは同時にたっぷり実感してしまった。より自分の感性を直撃する自分自身の体が四方八方数限りなく存在する、と言う当たり前の事実でも、それを何度も心の中で反芻してしまうと、風呂に入る前なのに全身が照れや嬉しさ、恥ずかしさで火照ってしまい、ビキニ衣装を脱ぐことすら忘れかけてしまうほどであった。

 長い戦いを経る中で、こんなに自分は美しく、可愛く、麗しい存在に生まれ変わっていたのか、こんな素晴らしい美女が自分自身であり、さらに無限に増え続けているという事実は、なんと嬉しい事なのだろうか――。


「レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」レイン……♪」…



 ――あっという間に広がる、自分の名を呼ぶ艶やかな声の中で、レインはつい目をとろけさせてしまった。まるでほのかに広がる香水の匂いのように、彼女の心は彼女の体を抜け出し、この空間の中に溶け込んでしまいそうな勢いであった。

 だが、このような『誘惑』に完全に負け、理性が欲望の中へと完全に呑み込まれてしまうほど、レインは愚かで哀れで脆弱な存在ではなかった。



「「「「「「「「……はっ!!」」」」」」」」」」



 自分の体のあらゆる部位に別の自分の感触が走るという強すぎる刺激が、逆にレインの冷静さを取り戻させたのである。

 慌ててビキニ衣装を完全に脱ぎ、生まれたばかりの姿になったレインは、顔を火照らせながらも理性を持った笑顔を見せあうことが出来た。確かにこの美貌をじっと眺めているだけでも今のように魅了されてしまうかもしれないが、やはりレイン・シュドーの一番の魅力は、『レイン・シュドー』と言う存在でい続ける事だ、と。こうやって日課の風呂で疲れを癒した後、無数の自分と語り合いながら美味しくご飯を食べ、明日に備えて体を存分に動かし合い、そしてぐっすりとレインで埋め尽くされた夢を見る――いつもと変わらないが、幸せな日々があってこそ、レインは魅力的な存在である、と彼女は認識していたのである。



「「「「えへへ……でも危なかったわねー、レイン」」」」

「「「「「本当ね、レインがこんなに魅力的だったなんて♪」」」」」


「「「「「「いつも素敵だけど、改めてみると……ね♪」」」」」」」



 あまり認めたくはないけれど、ダミーレインと言う存在を人間たちが次々に求め合った意味が理解できたかもしれない、とレインたちは互いに思いを伝えあった。自分たちですらつい惹かれてしまうような魅力を持っているのだから、愚かな人間たちが我先にビキニ衣装の美女を欲しがるのは当然の成り行きだったのかもしれない。

 だが、その世界で最も高貴な存在の価値を完全に知るのは、レイン・シュドーと言う存在であるという真実は、未来永劫変わることはないだろう、と彼女たちは思った。



「「「さて、そろそろ入りましょうか♪」」」

「「「「そうしましょうかね、レイン……あ、でも……♪」」」」



 その『価値』を、理性を保ちながらもっと味わいたいと思った彼女たちは、ほんの少しだけ巨大な浴場が鎮座する空間に操作を加えた。せっかくこうやって自分の体の変化を楽しめたのだから――。


「「「「「「「おーい、レインー♪」」」」」」」

  


「あ、レイン♪」待ってたわ、レイン♪」待ってたわ、レイン♪」待ってたわ、レイン♪」待ってたわ、レイン♪」待ってたわ、レイン♪」待ってたわ、レイン♪」待ってたわ、レイン♪」待ってたわ、レイン♪」待ってたわ、レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」レイン♪」…



 ――暖かい湯舟に浸かり、いつの間にか一回り美しくなった胸を無数に浮かばせながら笑顔を見せる、自分たちと同数のレイン・シュドーと言う光景を、その目に焼き付けたかったからかもしれない。


 そして、今回の入浴以降、『地下空間』に広がる巨大な浴場は、さらにその広さを増す事となった。普段から自分の体の温かさをたっぷり堪能し続けていたレイン・シュドーでも、流石に風呂の中ではたっぷりお湯の温かさを楽しみたかったのだ……。

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