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レイン、表裏

 ダミーレインに対して初めて勝利を収める事が出来たレイン・シュドーと、長年の懸案であった光のオーラを自らの意志で自在に操る術を身につけたレイン・シュドー。互いにその健闘を称え、改めて世界を平和に導く誓いを立てあった後、彼女たちは皆の記憶や経験を共有しあう事にした。漆黒のオーラの力でレインたち全員の心を繋ぎ、それぞれの思いを1つに融合する事で、皆一切の区別が無い存在となるのである。世界で最も美しく麗しく逞しい存在が自分と全く同じとなる事は、レインにとって最高の喜びの1つであった。

 しかし、いざその作業を行おうとした直前、光のオーラを『自力』で身につけた本拠地のレインたちは待ったをかけた。


「「「「「え、どうしたの?」」」」」

「「「「「「「うーん……ちょっと思ったんだけど……」」」」」」」


 ダミーレインに占領されていた『村』を手に入れた際、レイン・シュドーはダミーレインも本物のレインに変え、仲間に加えた。そして全員の記憶や経験を一斉に共有させ、誰が元ダミーレインか一切区別がつかない状態となった。その際に、ダミーレインの能力も一緒に取り入れた可能性が高い、とその場にいたレインたちは考えていた。どこか体がふわりとしたり、漆黒のオーラの力が少し高まったり、その兆候は様々に見られた。


 この出来事を経験したレインの口から発する説明を聞いた本拠地のレインは、ある思いを抱いたのだ。

 もしダミーレインの力を取り入れたのならば、『光のオーラ』も使えるようになったのではないか、と。


「「「「「「……あ!!」」」」」」


 この事を別の自分に指摘されるまで、レインたちはずっとその事を考えていなかった。本拠地にいる自分たちは大丈夫なのか、と心配するあまり、彼女たち自身が身につけていた能力をより深く追求するのを忘れていたのである。迂闊だった、と恥ずかしがるレインたちだが、今回は別に悪い事ではなくむしろ良い事である、と周りに居る彼女たちは一斉に励ましの言葉をかけた。今回の場合は、何より無事に作戦を成功させた旨を報告するのが第一だった事も大きかった。



「「「「それならレイン、その場で『光のオーラ』、作ってみたら?」」」」

「「「そうね、記憶を共有する前に試してよっと」うんうん」うんうん」うんうん」うんうん」…


 そして、大量の自分たちに囲まれながら10人のレインは静かに目を瞑り、右手を高く掲げた。

 ダミーレインの能力を吸収したと言う実感を彼女たちが本格的に感じたのはまさにこの時だった。ただ『光のオーラ』を作りたい、と考えるだけで、心や体が勝手に動き出し、掌の上に眩く輝く光の球を作り出してしまったのだ。勿論オーラを消したいと思えば、光の球もすぐ掌から消えた。その事には周りのレインたちは勿論、作り上げた彼女たち自身も驚いてしまった。ただその一方、レイン達が魔王による鍛錬の中で身につけた『光のオーラ』とは微妙に異なると言う事も改めて気づいたようであった。


 互いの力を確かめあったレインたちは、改めてこの場にいる全員の記憶と経験を共有した。何百万回にも及んだ鍛錬の内容も、ダミーレインを圧倒している間に抱いた緊張感も、全てのレインが心の中でしっかりと記憶し、自らが経験した出来事へと変わっていった。


「「「「よし、っと……♪」」」」


 一斉に声を合わせたビキニ衣装の美女たちは、外見も中身も一切区別できない存在となっていた。毎回この快感を楽しみにしているレインであったが、今回はさらに喜びが大きかった。『光のオーラ』を一気に2種類も操れるようになったからである。


 レイン・シュドーが鍛錬の成果で身につけた光のオーラは、文字通り『浄化』とも呼べるどこか暖かい光であった。攻撃に用いるために球体として凝縮しても、まるで柔らかい綿のような感覚で浮かべる事が出来ていた。しかし、そこに至るまでレインたちがこの光のオーラに対して抱いていたイメージは、ダミーレインから吸収した無機質な『浄化』の光そのものであった。確かにあらゆるものを光で包み込み綺麗さっぱり元通りの清らかな状態にしてしまうのは同じであったが、こちらは浄化と言うより、むしろ光を使って『殲滅』するといったほうが正しいような雰囲気を出していたのである。球体として纏めたときも、まるで硬いものを載せているような心地であった。


「「「「「同じ光のオーラなのに……」」」」」

「「「「「こんな違いがあるなんて……」」」」」


 その原理を確実に知っていそうな魔王は、あいにくこの場にはいなかった。まるで勝手にしろ、と言わんばかりに、彼女たちが平和への誓いをしあっている間に姿を消してしまったのである。そのため詳細な事は分からなかったが、彼女たちはある程度の推測を立てた。ダミーレインの『光のオーラ』は、感情を表に出さず日々命令に従い続けるダミーだからこそ放てる力なのではないか、と。レインを含めた魔物――彼女たちの生みの親であるゴンノーを除く――に対する強い憎しみを抱く彼女たちは、ほとんどの魔物に対して絶対的な効果を持つこの力を「消し去る」方向に活用していたのかもしれない、と考えたのである。彼女の左手を包み込んだ無機質な光のオーラの輝きが、それを証明しているかのようだった。



「「「「「とても『浄化』だなんて、言えないよね……」」」」」

「「「「「「でも人間たちはこれも浄化の美しい輝きだ、って言うんでしょ?」」」」」」

「「「「「「「面白いものよね、ある意味」」」」」」」」」


 相手を優しく包み込む力も、相手を殲滅する力も、纏めて『浄化』と呼んでしまう不思議さを、改めてレインたちは考えた。そして、右手に出した漆黒のオーラ――人間たちが魔物が使う恐ろしい力と見做す一方、レインたちにとっては完全に体の一部となっている力をじっと眺めた。

 どんなものでも、見方を変えれば味方にも敵にも、希望にも絶望にもなる――すぐこの大事な真理を忘れてしまう人間たちとは違い、自分たちはずっとこの事を考え、そして力を使うときに役立てていこう、とレインたちは全員で思った。排除するのではなく『利用』していく、これが自分たちのやり方だ、と。



「「「「「「「なんか、魔王の考えが少し分かった気がする……」」」」」」」」

「「「「「「「「……ちょっと、ね」」」」」」」」」」




 その後、本拠地にいる大量のレインたちの中から数十名が、無事取り戻した『村』へと帰還する事にした。あちらで帰りを待っているであろうビキニ衣装の美女の大群に、この場所で起きた様々な出来事を伝え、そして新たな力を教えるためである。しかし、後者に関しては特にその必要は無かった――。



「おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」おかえり、レイン♪」…


「「「「「「「あはは……ただいま、レイン♪」」」」」」」」」


 ――『村』にいたレインたちは、既に自分たちで光のオーラを出し合い、自分を増やしつつ鍛錬を行いながら彼女たちを待っていたからである。




 ともかくこの日、世界は大きく変わった。

 全ての流れが、レイン・シュドーと魔王の方へと向かい始めたのである……。

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