ポラリス
転移魔術を語る上で欠かせない存在がある。
ポラリス。
各地の戦争の終結。
そして世界的な同盟。
それを成し遂げたのがポラリスである。
最初の魔術師はレオニスで生まれ、そこで育ち、そして大成した。
そんな魔術師を崇め、尊敬する者たちは国内に留まらず、ヒドレ、スコルピオ、そして遠くスバルからも多くの魔術師が集まった。
最初の魔術師の死後、魔術師たちは共同研究機関を設立、そして転移魔術の理論体系を確立した後にはレオニス、ヒドレ、スコルピオ、スバルの4国で転移魔術同盟ポラリスを結成。
ポラリスはやがて転移魔術による各地域の紛争、戦争、政治的混乱への介入を始める。
世界中のどこの国へでも人、物、それらを一瞬で送り込める、そんなポラリスの力は圧倒的だった。
魔物の驚異の少ない土地を巡って、争い合う時代は終わりを告げる。
それは人類の繁栄の始まりでもあった。
魔物に対する根源的な解決が完遂するまでの間、ポラリスの許し無く一切の戦争行為が禁止され、多くの更なる加盟国を得てポラリスはさらに巨大な組織へと成長する。
物と人とが世界中を行き来し、さらなる転移魔術の検証と実験が繰り返された。
すべては最初の魔術師の考えを立証し、彼の疑問に答えを出すために。
「魔物はどこから来るのか?」
この最初に魔術師が抱いた疑問は、それでもすぐには解決されなかった。
ポラリスとは同盟を指し、そして転移魔術の研究機関そのものを意味し、さらにはそこに属する人間の事でもある。
ポラリスの名の下に、人が集まっていく。
そうしてポラリスはさらに膨れ上がる。
あらゆる矛盾、そして欺瞞を許しながら、転移魔術の理論はさらなる検証と実験が繰り返され、そして。
ついに、人類は発見した。
転移魔術によって起こる繋がり。
転移ひも。
決して視覚的に見る事は出来ない魔術的な繋がり。
転移する元と先のふたつにはそれが必ず存在する。
実際には転移魔術にとどまらず、あらゆる魔術の行使にはそれが存在している事が分かり、後に魔術ひも=コードとその名称は改められたが。
繋がりを辿って人が転移した先は、迷宮だった。