雨が上がった夜は
雨が上がった夜は
ビーフシチュー
深い夜に煮込まれた牛はホワホワとまだ残る雨雲にジャンプした
雨が上がった夜は
彼への気持ち
素直になりたいのに顔見ると憎まれ口が街灯を消してしまった
雨が上がった夜は
ミントアイスクリーム
まろやかな空気中でクールな風が眠たい木々を揺さぶり起こす
雨が上がった夜は
ザリガニのぬけ殻
脱ぎ捨ててしまった赤い衣は舞い上がり遠くの塔で発熱中
雨が上がった夜は
少女のみる夢
黒い瞳は雨を吸い込んだ土のように瑞々しくてそれは未来への憧憬
雨が上がった夜は
素麺が泳ぎだす
ポキポキの乾麺が夜に茹でられ流れゆく星をするすると追いかける
雨が上がった夜は
母からもらった優しさ
言えなかったありがとうを夜空に投げる 雲をすり抜け星まで届きますように
雨が上がった夜は
ビーフシチュー
すべてを深い夜に入れてコトコト煮込む まろやかで嬉し悲しい味になる