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目的を思い出す厄病女神

 頭が物理的に痛いです。中というよりも外がずきずき痛みます。鏡で確認したらたんこぶになってました。女の子の頭を叩くなんて酷いです。

 私はシャワーを浴びながらぶちぶちと文句を呟いていました。

 そこで、私はふと何か違和感を覚えました。何か忘れているような……。頭の隅に何かが引っ掛かっているような感じ。

「はぁっ!」

 思い出しました!

「先輩に元カノのこと聞くの忘れてた!!」

 私は一人風呂場で絶叫しました。


 これでは、いけないのです。

 何故、私は風呂前で一人興奮するなどというわけの分からないことをやっていたのでしょうか? やっぱり、恋する乙女だったから?

 とにかく、私は直ちに先輩に対して例の檜さんなる人のことについて聞きたださなければなりません。

 お風呂上りでほかほかな私は直ちに先輩の元に向かいました。

 しかし、先輩は私の思惑を見事に裏切ってくれました。

「何で寝てるんですかーっ!?」

 私が叫んでも先輩は布団の中でじっとしたままです。まだ寝るには早すぎる時間です。世間の人とは少し違っている先輩の生活リズムから考えても少し早いです。

 私の追及から逃れるべくわざと寝ているのは火を見るよりも明らかです。

「先輩ー! 起きてくださいー! ちゃんと私の質問に答えてください!」

 耳元で叫んでも布団の上からぺしぺし叩いても、髪の毛を引っ張ってもびくともしません。普段ならば、もうとっくの前にキレているはずなのに……。

「それほどまでに言いたくないんですか!? どんだけ照れ屋さんなんです!?」

 掛け布団を剥がそうと引っ張ってもビクともしません。この人、起きてます。

「起きてるじゃないですかー! ちょっと、起きて下さいよ! 私の質問に答えてください! 速やかな回答を求めます!」

 しかし、先輩は頑固です。いくら私が騒ごうとも攻撃しようとも、全く動じません。布団の中に引き篭もったままです。天照大御神じゃないんだから。私はベッドの前で踊らなきゃいけないんですか?

 先輩はうんともすんともしなくて、結局、夜は更けてしまいました。


 先輩は自分が過去に付き合っていた人がいるといったことに言及したことは一度たりともありませんでしたから、かなり裏切られた気分です。まあ、彼女がいたことは一度もないとも言ってはいないのですけどね。そもそも、そういうことを、あまり話したがらない人ですし。

 しかし、気になります。過去に先輩が付き合っていたという女性はどーいう方なのでしょう? 先輩が誰かと付き合っている姿が想像できないです。

 檜という名前は私にとって聞き覚えのあるものではありません。ああ、今の生徒副会長が檜という名字だったかもしれません。でも、彼女が入学したのは先輩が卒業した後ですから、彼女という可能性は低いです。

 それに、私は先輩に会ってからは、日々、常に先輩を近くから遠くから観察していましたから、彼女がいれば当然気付きます。

 ということは、私が会う以前に付き合っていたということになります。

 先輩と草田さんは中学時代からの付き合いであるらしいですから、中学の時に交際していたのかもしれません。

 中学から交際なんておませさんですねー。

 初々しい先輩の交際風景かー。見たかったなーっていうか、私が成り代わりたいです。滅茶苦茶羨ましい!!

 というか、先輩とその檜さんという人はドコまで行ったのでしょうか?

 中学生ならば、手繋ぎとかキスくらいですか? あ、でも、最近の若者は進んでいるといいますしー。あ、私なんかは全然ですよ。まだ誰とも付き合ったことありません。純粋で清らかな身です。

 そーだ。よくよく考えてみれば、何も中学時代と決まったわけじゃあないんでした。もしかしたら、私が入学するまでの間の高一高二期間に付き合って別れたのかもしれませんしー。

 先輩は見かけだけは一丁前に良い方ですから、見た目だけで告白して、その後、例の極悪な人格を知って別れるなんてありそーです。

 あ、でも、先輩は観察眼があるからなー。人を見かけだけで判断するような女性とは付き合わないかもしれません。

 というか、高校生ならば行き着くとこまで行っててもおかしくはありません。


「ええっ! そんな! 私の先輩の純潔がぁっ!」

 そんな悲鳴にも似た絶叫と共に私は起きました。

 いつの間にか寝ていたらしく、窓の外は天晴れな晴天です。

 そして、ベッドの上から先輩の姿は忽然と消えていました。どころか、何処を見渡しても先輩の姿が見えません。お風呂の中にもトイレにもいませんし、ドラ○もんみたいに押入れで寝ているわけでもありません。

「逃げられたっ!!」

 玄関からは先輩の夏靴が消えています。

 私はすぐさま部屋を飛び出しました。

 じりじりと太陽が肌を焼きます。たまに吹く風も蒸し暑く、涼しさは日陰でなければありません。こんな夏真っ盛りな中を歩いたら死んじゃいます! 先輩が! 先輩は暑さに弱いんです!

 だから、私が側にいて、先輩を守ってあげなければなりません!

 私は正義感に燃えながら木暮壮を後にします。

「あ、絹ちゃんだー。おっはー」

 木暮壮の大家にして管理人の木暮二十日さんが久し振りの登場です。そして、妙に古い挨拶です。まあ、私の世代的にはクリーンヒットなんですが、今の小学生は知っているのでしょうか?

「あいついるー? 一緒に酒を飲もうかと思ってー」

 そう言う二十日さんの手には日本酒の瓶が握られています。両手に。そんなに飲むんですか。朝っぱらから。

 しかし、今は無理です。

「生憎と先輩は家出してしまっていて行方不明ですー」

「えー? あいつ、実家から家で同然でこっち来てまた家出かよー。家出好きだなー」

 二十日さんは呆れたように言いました。

「それで、絹ちゃんは探しに行くの?」

「はいー」

「よっしゃ! 頑張って来い!」

 二十日さんに見送られ私は旅立ちました。いざ、先輩を探し出し、過去の恋愛遍歴を根掘り葉掘り尽く聞き出しましょうぞ!!

 私は炎天下にも負けぬやる気の炎を胸に秘め、コンクリートジャングルへ向かうのでした。


何とか更新できました。

次の更新は結構先になるやもしれません。ご容赦下さい。

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