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食事後風呂前にて厄病女神

「先輩、つかぬことをお聞きします」

「つかぬことって何だ?」

 私が意を決して口を開くと、先輩はそう言い返してきました。

 あれ? そーいえば、つかぬことって何でしょう?

 考えてみれば意味不明な言葉です。意味不明なのに普通に使ってました。どーいう意味なんでしょう? そして、つかぬことの反対っていうのは、やっぱつくことなんでしょうか? 突く? 付く? 着く? 点く? 就く? 憑く?

「おい、貴様、人に聞いていて勝手に考え込むな」

 先輩が機嫌悪そうな顔で言いました。

 そうだった。今は日本語の不思議はどーでも良いのです。気になる人は国語の先生に聞くかインターネットか何かで調べれば良いのです。

 そうです。今は先輩に重要なことを聞かなければいけないのです。

 私は再び意を決します。

「先輩」

「だから、何だ?」

 先輩は大根の煮物を食べながらうんざりしたような顔で答えます。

「先輩って過去に女性と付き合ってたことありますよね?」

「ぶぶっ!」

 先輩の口から大根の煮物が一つ飛び出し、テーブルの上に転がりました。

「「………………」」

 私たちは暫し沈黙しました。先輩は気まずそうにテーブルの上に転がった大根の煮物を見つめています。

 それから、さっとティッシュを手にして、大根の煮物を取ろうとしました。

 私はその前に大根の煮物を拾って食べました。もぐもぐ。

「あぁっ!? 貴様!」

「何ですかー?」

「……く。何て奴だ……。信じられん……」

 先輩は苦々しい顔で呟いた後、手にしたティッシュの処理に困って意味もなく洟をかみだしました。

「先輩って高校時代に付き合ってた人がいるんですよね?」

「ぶげふぃっ!?」

 洟をかんでいる最中だった先輩はティッシュの中で変な音を出しました。

「くそ! 逆流した! 鼻の奥がツンとするではないか!」

 先輩は再び洟をかんだり、咳をしてみたり、食べ物を食べてみたりしながら怒ります。先輩怒ってばっかですー。まあ、いつものことなんですけどね。

「先輩ー。答えてくださいー」

「じゃかあしぃっ! 俺は今、忙しいのだ! ついでに機嫌も悪いのだ! 話しかけんな!」

 酷い言いようです。これは厳正に抗議すべきことです。

「先輩、酷いですー! 人でなしー」

「うるせぇっ! 誰のせいでこんなことになっていると思ってやがる!?」

 話しかけても怒鳴られるだけでちゃんと答えてくれません。

 先輩は自棄になったようにがつがつとご飯を口の中に放り込んでいくばっかりで、私が話しかけても答えてくれなくなりました。

「……けちんぼ」

「何だとっ!?」

 相変わらず悪口にだけは凄く反応が早い先輩です。


 先輩は何だか無理矢理な感じに質問を受け付けてくれませんでした。

 素早く大根だらけのご飯を食べて、さっさとお風呂に行ってしまいました。

「先輩! 逃げるのは卑怯ですー!」

「煩い! 俺は単純に俺の生活リズムに従って行動しているだけだ! 夕飯食ったら風呂! それの何がおかしい!? 何が悪い!?」

 お風呂の中から先輩が怒鳴ります。

 この薄っぺらいドア一枚の向こうに先輩の裸が……。この薄っぺらいドアを開けば先輩の裸が目の間に……。

 私は密かに生唾をゴクリと飲み干しました。

「はぁはぁ……」

 何だか、興奮して息も上がっちゃいます。だって、私は恋する乙女なんですもん!

 思えば、伊豆旅行の間も、こんなことがありました。露天風呂の垣根を越えた向こうに先輩の裸が! っていう状況です。

 あの時は先輩が温泉に行く気配を逃さないように夜も廊下に近い方に寝て、半分寝ながらも聴覚は全開状態で先輩が温泉に行ったのを確認して、自分も温泉に突入、露天風呂に突貫し、垣根越しに先輩と偶然を装って会話するという何の仕掛けもなかったら奇跡に近いことができたのです。

 その時も、垣根をぶっ壊して先輩の所に突っ込みたかったのですが、さすがにご厚意で格別の待遇をしてくれた鳴嶋先輩の実家の旅館の一部を破壊するのはどうかと思って自粛したのです。

 しかし、今、私の前に立ち塞がるのはこの薄っぺらいドア一枚です。私はゆっくりとした動作でドアノブを握ります。そして、ゆっくりと回し、

「……あれ? 開かない。鍵かかってる」

 私はぶちぶちと文句を呟きました。

 さすがに先輩の部屋のドアを一枚破壊するわけにもいかないので、私はその場でうろうろと思考しながら歩き回りました。

 するとガチャリとドアが開きました。これはチャンス。先輩は私がここにいることに気付いていないのでしょう。先輩の裸を拝めますよ!

「…………あれ?」

 お風呂から出てきた先輩はTシャツにジーンズ姿。

「……先輩、服着たままお風呂に入ってたんですか?」

「んなわけあるまい。貴様が更衣室に侵入した時の為に服を浴室の隅に置いとくようにしているのだ。ちょっと湿ってしまうがな」

 先輩は私を見下ろしています。あ、怒ってる?

 そう思った直後に、拳骨くらいました。痛いです。


かなり話が進まないです。困った!

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