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咆吼  作者: 紅瞳 愁桜
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終章:死と生まれ変わり


このままでは殺されると悟り、形勢を変えるべく『ハイエナ』が地を蹴った。


もう一人の『ハイエナ』の屍のところまで退き、屍の手からブレードを奪い、間をおかず零に投擲した。

咄嗟の出来事で反応することが出来ず、右肺にブレードが刺さってしまった。

しかし、その痛みをこらえつつ、再び間合いをつめ、横に薙いだ。

綺麗に刃が胸部に食い込み、そのまま横に赤い線が伸びていった。


力無く、それでも満足そうに『ハイエナ』が倒れていった。


血降りをすると、零は樹の方へ歩いていった。

しかし、樹にたどり着くや否や、小さなうめき声と共に地に平伏してしまった。


急いで少女が樹から降り、零に近付いたが、すでに零は血の海に沈み、肩で息をしていた。


苦しそうな表情で、それでも笑顔を作り少女に微笑んだ。

少女は泣きそうな顔で必死に零にしがみついている。


「俺はもう駄目だ……だが、その分までお前は生きろよ……」


血まみれの掌で少女の頭を撫でる。

クリーム色の髪に、紅い筋が入った。


小さな声で少女に囁く。


「しっかり生きろ……。お前は自由だ……。

 好きなところへ羽ばたいて行けるんだ……。

 あぁ、そうだ……これを持っていけ」


懐から小さな紙片と青い宝石のようなモノを取り出し、刀と共に手渡した。

血だらけの手から震えながらも少女はそれらを受け取った。


「この紙の……場所へ行って……そこの男に……紙を見せれば俺の家を使えるようになる……分かったか?」


涙を流しながら震える少女を抱きよせる。

少女は言葉にならない声で泣いていた。

そんな少女をとても愛おしく感じた。


「そう言えば……名前を聞いてなかったな……。名は何だ?」

「……ミ……澪……澪だよ」

「そうか……澪か……。なら今日から俺の姓を引き継ぎ、神代 澪として生きろ……名前と共に……お前は生まれ変わった……んだ……」


とうとう堪えきれずに大声を上げ泣き崩れた少女を、強く抱きしめた。


俺の背負った罪は消えない……だが、あの人への想いも、消えはしない……。

この子が俺の分まで幸せに長生きできるように……願う……。


そして、少女に幸せに……と言い残し、その息を引き取った。

泣き叫ぶ少女に腕を回したまま、静かにそれでも満足げな顔でこの世を去った。


少女は泣いた。

優しかった青年のため。

そして、その死のため。

声が嗄れても、日が変わっても泣き続けた。


やがて、涙も枯れ、零の躰を大樹の木の下に埋葬すると、重い足取りで紙に書いてある場所へと歩き出した。




 この先、この子には「奴隷」という束縛はない。

 零の死と共に 手に入れた様々なモノ。


 これから少女は「神代 澪」として生きていく。

 零の記憶と共に生きていく。



 その先にあるのは  光か 闇か。


  それが分かる者は     いない。



呼んで頂き、まことにありがとうございます。

いかがでしたでしょうか?


俺の感じたことが少しでも皆さんに伝わっていれば幸いです。

それでは……本当にありがとうございました。

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