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初任務

[クローク]

‐No.003‐ 初任務


今ミラン達がいるのは、図書室内にある個室だ。あの後カイル達と別れて今はイーラに様々な事を教えているところだ。


「いいか? よく聞けよ。まず、この世界の成り立ちについて説明する。」

「はイ。」


約30年前。世界に異変が現れたのはこのころからだ。

元々、式神やディーバなど、世界には存在しなかった。

しかし、原因不明のエネルギー反応が、ヨーロッパを中心に発生。道を歩いていた泥酔した男性が、言葉を喋る犬をみたという情報が入る。

しかし、単なる酔っ払いのうわ言だろう。と処理されていたが、その後アメリカを中心に『言葉を話す○○』という情報が多数発生した。


「これが、私達の始まりよ。」

「そーいやー、ジェシカはどこから来たんだ?」

「そんなの覚えてないわ。」

「ライも、突然ワタシのまえニ、あらワレた。」

「ライ? お前の式神の事か?」

「そう……。」


どうやら式神は、ディーバと成りうる者の側に突然現れるようだ。


「式神が突然ディーバの元に現れるのは、ディーバ本人の細胞の突然変異が原因よ。これもヨーロッパで起きたエネルギー反応が原因とされているの。」


突如その場に、アヤの声が響く。


「あっアヤ博士!?」

「どうして?」

「あなた達だけじゃ、知識不足だと思ってね。」


そう言ってアヤは引き続き話し始めた。


「そして、その細胞突然変異には、エネルギー反応があった……。」

「あっ分かった! 何かで、そのエネルギー反応が、最初に観測されたエネルギー反応と似ていた事が分かったんだよな?」

「そうよ。」


そして現世界は変異を始めた。

時間にズレが生じたのだ。

最初の事件は日本。

三日間旅行に行っていた一人の女性が家に帰宅したとき、家族に『どこに行っていたのか? 心配した。』と言われたことから始まった。勿論、家族に無断で旅行に行っていた訳ではない。

娘と夫は快く、送り出してくれていた。そして女性が旅行へ出掛けたのは、日本時間で8月の1日〜3日。しかし女性が日本に帰ってきたのはなんと一ヶ月前に戻った7月の上旬だった。


「その後、この女性の話しによれば、家族が自分は6月の中旬から約半月間行方不明だったら事を聞かされたらしいわ。」

「つまり・・・。8月に旅行へ、しかし帰宅が7月になった。6月から行方不明……。」

「という訳ね。」

「そうよ。時間が逆回転したって事。」

「原因は?」


そう。この事件の原因だ。なんとそれは人為的な物だった。


「私達は、この時間の歪みを『ヒズミ』と呼んでいるわ。このヒズミを悪用した者が居た……。」

「それが、『アンリアル』」

「直訳で『非現実』……。」


彼らはその時間のヒズミに干渉出来る何らかの技術を持っているらしい。


「奴らの悪行を止めるのが、私達の仕事って訳だ。」「ワタシと会ったトキの事件は?」

「あれは、死んだ者自体の時間を巻き戻した事でおきた怪奇よ。」

「調査の結果、奴らの体に突然変異が見つかった。だから容姿が醜かったんだ。」


時間は操る事は出来ても、人間そのものの時間を操る事は出来ない……。そのためあのような形が出来上がってしまったのだろう。


「奴らは、死体を集めて実験をしていたんだと思うわ。自分達の技術で、ヒトの時間を操れるのか……。」


その結果があれだ。失敗したのだろう。


「調査の結果と肉片サンプルを調べたら、あれは、式神によって肉体改造さていた人間だったことが分かったわ。」

「式神のタイプは?」

「ズバリ、・・・解らないわ。」

「やっぱり……。」

「でもきっとあれは、この世に存在ならざるものね。」


アンリアル達が使用している式神は、この世界に存在しないものだ。


「式神ノ、タイプ??」

「えぇ。確認されているタイプだけでも、8タイプあるわ。」

「その中でも、大きく5つに分けられるんだ。」

「イアン君のウェンディのような、自然を司る式神。私のような、氷結を司る式神。貴女のライのように、炎を司る式神。」

「そして、セオのように水を司る式神。」

「私は科学者だけど、一応ディーバなのよ。」

「そういや、アヤ博士の式は何タイプなんだ?」

「私のは、雷を司る式神よ。」


『炎』『水』『氷結』『自然』そして『雷』

大きく分ければ、この五つだ。


「そしてその中でも珍しいタイプがあるわ。今は、日本にいるけど、そのうちイーラとも会うことになるわね。あら、もうこんな時間? 皆に怒られるといけないから、私はそろそろ戻るわね。」

「あぁ。サンキューな。」

「いえいえ…。」


一通りの説明を終えた後、アヤは研究室へと戻っていった。


「今、アヤ博士ハ何ヲ研究してるノ?」


突然、イーラはこんな疑問を覚えた。

質問に答えようとするミランの顔が、少し曇った。


「実は余り知られてないんだがな・・・。博士は今人工的にディーバを造り出す実験をしてるんだ。過去に、ミスがあって人が死んでるって話だけど。」

「そうナんダ……。」

「今の話、他で言うなよ。公になるとちょっと厄介だから。」

「うん。分かっタ……。」


少し場の空気が凍ったが、すぐに平常に戻った。イーラが何故突然、あんな質問をしたのか、ミランは不思議に思い、逆に聞こうとしたが、その声は『緊急召集放送』のアナウンスによって掻き消された。


「それにしても、どうし……」

『緊急召集!緊急召集!ディーバの皆さんは、至急、「DIVE」に集合して下さい!繰り返し・・・ザー−ピッ・・・集!・・・緊………。』


電波状態が悪いのか、とぎれとぎれ、ノイズが混じり、繰り返しのアナウンスが聞き取れなかった。しかし、とにかく集まれという事だろう。


「なっなんだ!? 緊急召集だと?」

「なニ??」

「わかんねぇ!とにかくついて来い!」


ミランはそう言うと、個室を飛び出していった。イーラは慌てて後を追う。

図書館のなかを駆け抜け、出口を出たとき、ようやくミランは状況を把握した。


「そうか!」

「どうシタの?」

「私達の出番だ!」

「え?」

「『ヒズミ』が現れたんだ。時空の歪みが!」


ミランは入り組んだ通路を走りながらイーラに説明する。


「さっき話した通り、『ヒズミ』が現れた=アンリアルが現れたって事だ。奴らは、私達と同じ力を持ってるから、私らしか戦えない。だから緊急召集されたんだ!」


そう説明している間にあっという間に緊急召集場所に到着した。

そこは、数々のシステムがあり、まるで近未来都市のような場所だ。

非常に広く、戦闘機が5、6機はすっぽり収まるだろう。

そのホールの奥に、『DIVE』と呼称される物はあった。


「あレは?」

「時間がねぇから簡単に説明するぜ。今から私らは『ヒズミ』の中に行くことになる。」

「『ヒズミ』の中?」

「だから・・・時間がねぇ、説明は後だ! 今は黙ってついて来い!」

「それは駄目よ。」


ミランの声を遮ったのはアヤだ。


「たいした知識もないまま『ヒズミ』に行くのは危険だわ。イーラはすぐ後に行かせるから、あなたは先に。」

「分かった。じゃあイーラ後でな!」


そう言ってミランは『DIVE』の元へ走った。


『DIVE』とはそのままの意味で『ヒズミ』なある空間へ飛ぶ、つまり、ワープのような物だ。


「『ヒズミ』はどこに出来ているのか解らないの。過去かもしれないし、未来かもしれない。そこがどんな所かも、解らない……」

「ひょっとしたら、アンリアル達の罠かもしれねぇしな。」


二人の会話に入って来たのは、カイルだった。


「だから、少しでも安全を期すために、これを着て行きな、お嬢ちゃん。」


カイルに手渡されたのは、一着のコートだった。

しっかりとした生地で作られている。

コートのあちこちに仕掛けが施してある。長袖の袖部分には、チャックがあり、おまけにフード付きでサイズもピッタリだ。


「少しは防御になると思うわ、だから長袖は暑いかもしれないけど、我慢してちょうだい。」

「はイ。大丈夫でス。」

「いきなり戦場に行くなんて、お嬢ちゃんも運がねぇな。」

「しょうがないわ。初めてだからと言って、我が儘も言ってられないでしょ?」

「ワタシ、頑張りまス。」

「そうね・・・。さ、時間がないわ。」


そう言って、アヤは出発を促す。

イーラは『DIVE』の元へと向かった。

近くで見ると、かなり大型だ。それは、カプセルのようになっており、蓋が空いている。そこには、コックピットのような座席があった。


「そこに座って、目を閉じるだけでいいわ。後は、こちらでやるから。」

「はイ。」


イーラはコックピットのような座席に座った。

カプセルの蓋が閉じられる。すると、外部からの音が完全に遮断された。

イーラが目を閉じると、通信でのアヤの声が響いた。


「イーラ。準備はいい?」

「はイ。」


イーラが返事をすると、何やら機会音が聞こえた。そして、アヤの声。

何を言っているのかわからないが、その声は次第に遠退いて行き、やがて聞こえなくなった。


気がつくと、イーラは立っていた。

目前を見たが、何もない、ただ広い空間だけが広がっている。

イーラはただ、前へと歩くしかなかった。

前と言っても、方向が全くわからない。今自分が向いている方向へ歩くだけだった。

しばらく歩いても、状況は変わらなかった。


「ここハ・・・一体ドコ?」


誰もが思うであろう疑問を口にしたとき、ミランの声が、聞こえた気がした。


「ミラン??」

「・・・ラ・・・イー・・ラ……」

「ミラン? ミラン!!」


やはり自分を呼ぶ声だ。

しかしはっきり聞こえない?

遠すぎるのか?と思ったとき。唐突に、ミランの声がはっきり聞こえた。


「イーラ! イーラ! おい!」


気がつくと、イーラは自分が倒れていたことに気が付いた。目を開けると、心配そうに覗き込むミランの顔があった。


「イーラ! 大丈夫か?」

「うン・・・。何ガあっタの?」

「多分、うまく飛べなかったんだ。」

「飛べナかっタ?」

「あぁ。『DIVE』は、飛ぶ人の精神状態が良くないと、上手く飛べない事があるんだ。初めてだったから、余計にだと思うけど。」


イーラは立ち上がり、辺りを見回した。


「大丈夫か?」

「うン。」


そこは、町だった。しかし何かがおかしい。


「ここが、『ヒズミ』の中だ。」

「こコガ……。」


そこは、静寂に包まれた場所だった。辺り一面白黒の世界。


「『ヒズミ』の中は、現世界と繋がってるんだ。鏡みたいに。」

「鏡ノ・・・世界……。」

「今はいつだ?」


そう言って、ミランは何やら、携帯端末を操作し始めた。


「そレ、何?」

「これか? これは、アヤ博士達と通信ができるんだ。今、私らが居る場所と時間は来てみて初めて判るからな。」


ピッピッっとボタンのプッシュ音が響く。


「博士。聞こえるか?」

「そんなに大きな声出さなくても聞こえてるわよ。」「ここはどこだ?」

「そこは日本よ。」

「日本?」


どうやらここは日本らしい。

一面白黒の世界の真ん中に一軒の2階建ての家が目を引く。


「今回のヒズミの出所は、その家よ、中に入っていろいろ調べてちょうだい。」

「了解。」


イーラとミランは目前の家へと進んで行く。

試しに玄関をノックしてみるが、返事はない。


「ミラン? 何やってるの? そこはヒズミなのよ、あなた達以外に人はいないわ。」

「礼儀としてやっただけだよ!」


アヤにからかわれ、イラッときたミランは、それでも黙って、ドアノブに手をかける。

あいにく扉は空いていた。

キィィという音を立てて、扉は開いた。


「簡単ニ開いタ。」

「ま、ヒズミの中だしな。」

「そういう自覚があるなら、少しは警戒してくださいよ。先輩。」


その場に現れたのは、先程図書館で会ったセオだった。


「セオじゃんか!?」

「居ちゃいけません? 私はイアン先輩の代わりに来たんですよ?」


あの体では、戦いはしばらく無理だろうとの結果を下した、医療班からの派遣だ。

彼女は二人の後輩であるため、先輩の代わりをするのは当然であろう。


「たっ頼もしいけどな…。」

「本当にそう思ってるんですか?」


どうやら男勝りなミランの上を行く存在であるらしいセオは、先陣を切って、家へと入って行く。

三人分の足音が響く。

入って左にリビングに続くであろう扉が、目の前には2階へ続く階段があり、三人はリビングへの扉を開け、セオを先頭として入って行く。

すると、シンプルな4人掛けのテーブルが目に入った。奥にはキッチンが、右側の空間にはソファーがあり、テレビもあった。

セオとミランはハンドガンを持ち、警戒しながら慎重に進んで行く。

その後をイーラは複雑な想いを抱きながら、ついていく。


なぜ、自分がこんな気持ちになるのか、わからないが……。


キッチンのすぐ横には、隣室へと続く扉があり、セオが慎重に開く。

すると、室内はベッドルームになっていたが、これと言って異常は見当たらなかった。


「ここに一体何があるって言うんだ?」

「まだ2階がのこってます。慎重に行きましょう。」「イーラ、大丈夫か?」

「はイ。」


そして一行は2階へ。

ギシギシと音を立てて軋む階段を上った先には、ふた部屋分の扉が。

向かって右側の扉には『child room』と書かれた扉があり、左側にも扉があった。


「どちらから行きます?」

「左だな。」


セオが扉を開く。

今度は物置のような部屋だった。又しても何もない。


「残るは子供部屋……。」


ミランが先頭を切り、部屋の扉を開けた時だった。




『よく来たね・・・さあ、パーティーの始まりだよ。』



そこには、不適な笑みを浮かべた少女が立っていた…。

(続)


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