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【本好きの下剋上 二次創作】エルヴィーラお母様の方向転換 〜ネタに詰まったエルヴィーラお母様。ローゼマインに相談したら……〜

作者: ぽてち
掲載日:2026/10/03

ローゼマインと母エルヴィーラとの掛け合いです。

ある日エルヴィーラお母様が相談にやって来た。


「ローゼマイン、わたくしこの頃スランプ気味で。ネタも尽きかけてきたというか。そこで何か良い案はないものかしら?」

「そうですねぇ、恋愛物以外の小説を考えてみるのも良いかもしれません」


SFだと科学文明が未発達だから母様には難しいだろうし。転生無双物も神話が身近な世界では無理だろな。冒険物だとユルゲンシュミットは閉じた世界だから想像が及ばないだろうし。そうだホラー小説や推理小説ならあるいは。


「恐ろしい小説なんて誰が読むというのでしょう? 私はそんな怖い話は嫌ですよ?」

「世の中、意外と怖いもの好きがいたりするんですよ」

「そうなのですか?」


そうなのです。『フランケンシュタイン』で後世に多大な影響を与えたメアリー・シェリーも女性作家だったし。恐怖怪奇小説は恐怖の中にもカタルシスを感じて好む人も多いはず。ならばお母様にも怪奇小説が書けるかも。


「怪奇小説ねぇ、では書いてみるのも一興というところですね。例えばどんな話なら良いのかしら?」


私は例えとして四代目鶴屋南北の代表作である四谷怪談を思い出しながら語ってみた。これって確かお芝居の台本だっけか? そこら辺曖昧だけど、まぁ良いか。これは芝居の演目として有名になった小説と言っても良いかもしれない。私としては吸血鬼やゾンビより、こちらの方が怖い。あくまでも私の集めた平民社会の話として話すけど。そして雰囲気作りのために側近に指示を出す。


「カーテンで窓を閉ざしてロウソクを用意して下さいませ」

「かしこまりました」

「ローゼマイン、なぜ部屋を暗くしてロウソクを灯すのです?」

「あくまでも雰囲気作りです、雰囲気」

「確かに怖いお話を聞くのに部屋が暗いと恐怖が増しますね」


貴族は死ぬと魔石になるから、この世界に幽霊の概念はない。

死んだら神々の下、高みに上るという貴族用語があるくらいだ。故に怨霊や死霊(レイス)またはアンデッドという概念を説明しにくいなぁ。

だから形をなした怨念が伊右衛門を追い詰める話として、こちら風に世界観を変えながら話を改変する。


大雑把に話すとこうだ。

結婚当初は仲の良かったイェーモンとイワーヌでしたが、やがてイェーモンは新たな娘に目を付けました。

その娘の実家は裕福で、気を引いてもらうために家財や妻の寝具まで売り払いお金を工面します。

やがてイェーモンの努力は実り、相手方の家から好意的に見られ結婚話まで持ち上がります。

財産目当てで愛人と結婚するためにイェーモンは妻であるイワーヌに毒を盛りました。

毒のためイワーヌの髪は抜け落ち、顔の形は崩れ片目が腫れ見えなくなってしまうのです。

そんな体の弱ったイワーヌをイェーモンは無情にも斬り殺し、川に投げ捨て最初から妻などいなかった風を装い愛人のもとに行ってしまいます。

夫の裏切りと非道にイワーヌの無念や怨念は形をなし、イェーモンに取り付き始めたのでした。


私の語る物語にお母様は興味深そうに聞いていた。

時にはイワーヌに同情し怒りに満ち、時には不気味そうに。


「そしてイェーモンを追い詰めたイワーヌは言います。おのれイェーモン、この怨み晴らさでおくものかぁと」


死して怨念の塊となったイワーヌに怯えて逃げるイェーモン。どこまでも逃げるイェーモンを追うイワーヌの怨念。ついには剣を操りイェーモンを倒したのです。

湿度が高そうなジメジメとしたイワーヌの情念は、話しを聞く者に纏わり付く感じがしてくるようだ。


「んまあ! 実に恐ろしいお話ね。それにしてもイェーモンはなんという男なのでしょう、貞淑なる妻にそんな酷いことを許せませんわ。

 私がイワーヌだったら、真っ先に領主様のところへ陳情に行きますね。そして厳罰を与えていただかないと」

「まあまあお母様、これは創作のお話ですから」


この有名な四谷怪談はあくまでも鶴屋南北の創作だ。

史実として舞台となった地域にモデルではないが、同名の岩という女性は普通に暮らしていたという。


「そのお話は下町で有名なのかしら?」

「私の創作ですから誰も知らないと思いますよ」

「こんなお話を思い付くなんてローゼマインの頭の中はどうなっているのでしょうね。良ければそのお話に私の思いや案を混ぜてお話を書いてみても良いかしら?」

「出来上がったらぜひ読みたいです」


この話の著作権はどうなのか知らないけど、心理を扱う恋愛小説にこういう怪談は相性が良さそうだ。

エーレンフェストの貴族の間で恐怖小説が評判になり皆震え上がった。

同時に下町は恐ろしい所だと誤解も広まったらしいけど、哀れなイワーヌを悼む声もある。

あまりにも好評だったので芝居化の計画も上がったとか。

そしてエルヴィーラのペンネーム『エラントゥーラ』は恐怖の象徴になってしまった。


……あぁぁ、エルヴィーラお母様が鶴屋南北のようになっている。

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