第8章 封印呪文の開発
翌朝。
リオンは目を覚ました。
体はまだ重いが、動ける。
ベッドから起き上がる。
窓から外を見る。
村人が遠くを歩いている。
リオンの家を避けるように。
「やっぱりな」
リオンは机に向かった。
ノートを開く。
昨夜の反省を書く。
『黒狼戦:成功。だが暴走した』
『問題点:封印が不安定。時間がかかる』
『改善策:封印呪文の開発』
ペンを置く。
「戻れ」だけじゃ足りない。
もっと強力な言葉が必要だ。
リオンは本棚から古い本を取り出した。
村の図書館から借りてきたもの。
『言霊魔法の基礎』
ページをめくる。
言霊。
言葉に力を込める魔法。
「これだ」
リオンは読み進めた。
『言霊は、意志と言葉を結びつける。強い意志があれば、言葉は力を持つ』
『自分の名を使うと、効果が増す』
リオンは考えた。
自分の名。
リオン。
それを使う。
「我が名においてリオンに戻れ」
試しに唱えてみる。
何も起きない。
当然だ。今は誰も召喚していない。
実践で試す必要がある。
リオンは立ち上がった。
外に出ようとする。
母が心配そうに見る。「森に行くの?」
「訓練する」
母が眉をひそめる。「危ないわ」
「でも、制御しないと……もっと危ないことになる」
母は黙った。リオンの目を見る。真剣な目。
ため息をつく。「……わかった。でも日が暮れる前に帰ってきて。遅かったらお父さんが探しに行くから」
「ありがとう」
リオンは家を出た。
村人が横目で見る。
囁き声が聞こえる。
「また行くのか」
「怖いわ」
リオンは無視して、森に向かった。
木々に囲まれた空き地。
誰もいない。
深呼吸。
「試してみる」
まず、戦士を召喚する。
「戦え!」
視界が変わる。
戦士アレクが降臨。
アレクが周囲を見渡す。
「敵は?」
リオンの内側で叫ぶ。
『いない。すぐ戻る』
新しい呪文を唱える。
「我が名においてリオンに戻れ!」
意志を込める。
強く。
アレクが驚く。
「なんだ……この力……」
引っ張られるように、引いていく。
「くそ……」
アレクが消える。
リオンの体が元に戻る。
「成功……」
膝をつく。
疲労はある。
でも、前より楽だ。
「戻れ」だけの時より、スムーズだった。
リオンは立ち上がった。
「もう一度」
次は商人を試す。
「商え!」
商人グレイが出る。
「この木、金になるな」
すぐに呪文を唱える。
「我が名においてリオンに戻れ!」
グレイが驚く。
「え? もう?」
引いていく。
「せめて計算させてくれよ」
消える。
リオンの体が元に戻る。
「いい……速い……」
前より確実に速い。
リオンは笑った。
「できた……」
封印呪文の完成。
これで、暴走のリスクが減る。
次々試す。
「癒せ!」
治療師アンナ。
「我が名においてリオンに戻れ!」
即座に封印。
「隠れよ!」
忍者カゲロウ。
「我が名においてリオンに戻れ!」
封印。
「燃やせ!」
魔法使いリズ。
「我が名においてリオンに戻れ!」
封印。
全てスムーズ。
1時間後。
リオンは木に寄りかかっていた。
疲れている。
でも、満足感がある。
「これなら……使える……」
ノートに記録する。
『封印呪文:完成』
『「我が名においてリオンに戻れ」』
『効果:即座に封印可能』
『消耗:変わらず。1日1回が限界』
ペンを置く。
空を見上げる。
「まだ限界はある」
1日1回。
それ以上は体が持たない。
でも、大きな進歩だ。
召喚できる。
封印できる。
制御の第一段階は完成した。
リオンは立ち上がった。
村に戻る。
歩きながら考える。
『次は何を改善する?』
消耗を減らす方法。
複数の人格を同時に使う方法。
課題は山積みだ。
でも、一歩ずつ進んでいる。
村に戻ると、母が待っていた。
「おかえり。大丈夫だった?」
リオンは頷いた。
「うん。進歩があった」
母が微笑む。
「そう。よかったわ」
家に入る。
父はいない。
仕事に出ているのだろう。
リオンは自分の部屋に戻った。
ノートを机に置く。
ベッドに座る。
疲労が襲ってくる。
「少し寝よう」
横になる。
目を閉じる。
精神世界が見える。
6666人が座っている。
静かだ。
戦士アレクが立ち上がる。
「リオン、悪くなかったぞ」
商人グレイも頷く。
「封印が速くなった。これなら協力しやすい」
治療師アンナが微笑む。
「無理しないでね」
6666人が、それぞれ頷く。
リオンは心の中で答える。
『ありがとう。お前たちの力、借りるよ』
戦士アレクが笑う。
「当然だ。俺たちはお前だからな」
リオンは微笑んだ。
精神世界から離れる。
現実に戻る。
ベッドで横になったまま、つぶやく。
「次は……もっと強くなる」
目を閉じる。
深い眠りに落ちた。
夢の中で、6666の声が優しく囁いた。
「頑張れ」
「お前ならできる」
「俺たちがいる」
「一人じゃない」
リオンは安らかに眠った。




