第63章 真の力の解放
リオンが手を見る。
自分の手を。
開いたり。
閉じたり。
感じる。
力を。
新しい力を。
頭の中に知識がある。
6666人分の知識。
技術がある。
6666人分の技術。
経験がある。
6666人分の経験。
全てが同時に使える。
戦士の剣技。
忍者の体術。
魔法使いの呪文。
神官の祈り。
錬金術師の知識。
商人の交渉術。
学者の智慧。
農民の忍耐。
全て。
リオンの中に。
一つに統合されている。
リオンが微笑む。
「試してみる」
右手を伸ばす。
空中に。
剣が現れる。
光の剣。
魔法で作られた剣。
掴む。
構える。
体が動く。
自然に。
戦士の構え。
でも違う。
忍者の軽さも加わっている。
狂戦士の力も加わっている。
魔法使いの魔力も加わっている。
全てが同時に。
一つの動きに。
リオンが剣を振る。
一振り。
ただの一振り。
でも。
「ゴオオオオ!」
空気が裂ける。
海水が割れる。
神殿の前の海が。
真っ二つに。
巨大な水の壁ができる。
左右に。
海底が見える。
一瞬だけ。
やがて水が戻る。
「ザアアアア!」
大きな音。
波が立つ。
神殿が揺れる。
カインが驚愕する。
「なんだ、この力……」
剣を握りしめる。
信じられない。
グラムが呆然とする。
「化け物か……」
ハンマーを落としそうになる。
ミラも驚いている。
言葉が出ない。
リオンが振り返る。
三人を見る。
微笑む。
「大丈夫。制御できてる」
剣を消す。
光が消える。
「心配するな」
続ける。
「俺は俺だ。変わってない」
カインが頷く。
「そうか……」
でもまだ信じられない顔。
グラムが笑う。
「頼もしいな」
ハンマーを拾う。
ミラが微笑む。
「よかった……」
リオンが頷く。
「ああ」
繭に向き直る。
激しく脈打っている。
「ドクン! ドクン! ドクン!」
触手が伸びている。
何本も。
でもリオンに届かない。
リオンの力が押し返している。
見えない壁のように。
リオンが歩く。
繭に向かって。
一歩ずつ。
触手が襲いかかる。
でもリオンが手を払う。
触手が吹き飛ぶ。
また襲いかかる。
また払う。
次々と。
リオンが繭の前に立つ。
見上げる。
巨大な繭。
黒い霧でできた繭。
中に何かがいる。
魔王が。
リオンが言う。
「お前を倒すために、6666回の人生があった」
静かに。
でも力強く。
「全ての人生が、この瞬間のために」
手を翳す。
繭に向かって。
集中する。
体の中の魔力を。
全ての人格の魔力を。
戦士の力。
魔法使いの魔力。
神官の祈り。
錬金術師の知識。
全てを集める。
一つに。
手のひらに。
光が集まる。
金色の光。
まぶしい。
強い。
リオンが叫ぶ。
「消えろ」
光を放つ。
繭に向かって。
光の奔流。
巨大な光の流れ。
繭に当たる。
「ドゴオオオオ!」
爆発。
光と闇がぶつかる。
繭が抵抗する。
黒い霧を放つ。
でも光が勝る。
貫く。
繭を。
完全に。
繭が砕け始める。
「バキ……バキ……」
ヒビが入る。
何本も。
広がる。
そして。
「バキイイイン!」
繭が砕け散る。
破片が飛び散る。
黒い霧の破片。
消えていく。
空中で。
中から何かが現れる。
黒い影。
人の形。
でも巨大。
3メートルの高さ。
黒いローブ。
顔は見えない。
でも目が光っている。
赤く。
邪悪に。
魔王。
でも完全体ではない。
半透明。
体が透けている。
まだ実体化していない。
魔王が言う。
低い声。
邪悪な声。
「遅かったな……」
リオンを見る。
「もう少しで完全復活だった」
リオンが答える。
「させない」
剣を構える。
また光の剣を作る。
魔王が笑う。
「ハハハ……。6667回目の挑戦者か」
リオンを見る。
「面白い」
続ける。
「お前は特別だ。全ての記憶を統合した。6666人全員を受け入れた。初めてだ」
リオンが黙っている。
聞いている。
魔王が続ける。
「他の転生者は皆、記憶に潰された。制御できなかった。暴走した。でもお前は違う」
手を広げる。
「素晴らしい」
神殿が震える。
ゴゴゴゴ……
大きな音。
柱が揺れる。
床が割れる。
カインが叫ぶ。
「神殿が崩壊する!」
グラムが叫ぶ。
「逃げるぞ!」
でもリオンは動かない。
魔王を見つめている。
魔王もリオンを見つめている。
二人は向き合っている。
神殿が崩れ続けている。
でも二人は動かない。
緊張が走る。
戦いが始まろうとしている。
最後の戦いが。
リオンと魔王の。
6667回目の転生者と魔王の。
世界の運命をかけた戦いが。




