第62章 記憶の融合
6666人格が動く。
リオンに向かって。
一斉に。
そして。
光になる。
体が光に変わる。
全員が。
原始人ゴルが光になる。
農民トムが光になる。
戦士アレクが光になる。
商人グレイが光になる。
学者ルシアンが光になる。
魔法使いリズが光になる。
忍者カゲロウが光になる。
神官ゼノンが光になる。
錬金術師エルヴィンが光になる。
6666人全員が光になる。
そして飛び込んでくる。
リオンに。
一つの光の流れとなって。
リオンの体に吸い込まれる。
胸に。
頭に。
全身に。
リオンの意識に流れ込む。
記憶が。
感情が。
人生が。
原始人ゴルの記憶。
狩りをする。
火を起こす。
生き延びる。
喜びを感じる。
獣を倒した喜び。
農民トムの記憶。
畑を耕す。
種を蒔く。
収穫する。
満足を感じる。
作物が育った満足。
戦士アレクの記憶。
剣を振るう。
敵を倒す。
仲間を守る。
誇りを感じる。
戦士としての誇り。
商人グレイの記憶。
商売をする。
金を稼ぐ。
交渉する。
達成感を感じる。
成功した達成感。
学者ルシアンの記憶。
本を読む。
研究する。
発見する。
興奮を感じる。
真理を見つけた興奮。
次から次へと。
6666の記憶が。
全てが同時に流れ込む。
喜び。
悲しみ。
怒り。
恐怖。
愛。
憎しみ。
希望。
絶望。
全ての感情が一度に。
リオンの頭が爆発しそうになる。
『うわああああ!』
叫ぶ。
精神世界で。
痛い。
激痛。
頭が割れる。
心が引き裂かれる。
『やめろ……もう……無理だ……』
意識が飛びそうになる。
暗闇に沈みそうになる。
その時。
温かいものを感じた。
手に。
誰かが握っている。
『この感覚は……』
温もり。
優しさ。
ミラ。
ミラの手。
『ミラ……』
温もりが広がる。
心に。
体に。
痛みの中で。
でも確かに感じる。
ミラの存在を。
『負けない……』
思う。
『ミラが待ってる……みんなが待ってる……カインも……グラムも……だから……負けない……』
耐える。
痛みに。
記憶の洪水に。
感情の嵐に。
耐え続ける。
時間が経つ。
どれくらいか分からない。
でも耐える。
そして。
痛みが弱まり始める。
記憶の流れが落ち着く。
感情が整理される。
6666の人生が。
リオンの中に収まる。
一つに溶け合う。
痛みが消える。
完全に。
静寂。
精神世界が静かになる。
リオンが目を開ける。
精神世界を見渡す。
円形劇場。
空っぽ。
誰もいない。
6666人格が消えた。
いや、違う。
消えたんじゃない。
リオンが感じる。
心の中に。
全員がいる。
戦士アレクが。
農民トムが。
魔法使いリズが。
全員が。
リオンの一部として。
存在している。
リオンが理解する。
『俺は……6667人目じゃない……』
『6667人全員だ……』
新しい自分を感じる。
完全な自分を。
統合された自分を。
リオンであり。
戦士であり。
農民であり。
学者であり。
全員である自分を。
『これが……俺だ……』
体が変わり始める。
精神世界で。
そして現実世界でも。
リオンの体が再構築される。
皮膚の亀裂が塞がる。
一つずつ。
光が収まる。
体が元に戻る。
いや、違う。
元ではない。
新しい体。
強化された体。
完全な体。
リオンの意識が現実に戻る。
目を開ける。
外の世界。
海底神殿。
繭が見える。
脈打っている。
触手が伸びている。
カインとグラムが戦っている。
ミラが手を握っている。
リオンの手を。
リオンが動く。
立ち上がる。
ゆっくりと。
でも力強く。
触手が襲いかかる。
でもリオンが手を伸ばす。
触手が止まる。
空中で。
動けなくなる。
リオンの力。
圧倒的な力。
ミラが驚く。
手を離す。
後ろに下がる。
リオンを見る。
顔を見る。
目を見る。
目が変わっている。
金色に輝いている。
美しい金色。
でもリオンの目。
ミラが聞く。
「リオン……?」
リオンが振り返る。
ミラを見る。
微笑む。
優しく。
「ああ、俺だ」
続ける。
「そして、俺たち全員だ」
声が変わっている。
少し。
深く。
力強く。
でもリオンの声。
カインが驚く。
「リオン……成功したのか……」
グラムが笑う。
「やったな!」
リオンが頷く。
「ああ」
繭を見る。
「ありがとう、みんな。でも、まだ終わってない」
繭が激しく脈打っている。
「ドクン! ドクン!」
触手が増える。
何本も。
リオンに向かってくる。
リオンが構える。
剣はない。
でも構える。
拳を握る。
金色の目が光る。
「来い」
静かに言う。
「お前の相手をする」
触手が襲いかかる。
リオンが動く。
速く。
触手を避ける。
掴む。
引きちぎる。
「バキッ!」
触手が千切れる。
また掴む。
また引きちぎる。
次々と。
速く。
正確に。
力強く。
触手が減る。
リオンが繭に近づく。
一歩ずつ。
触手を払いながら。
引きちぎりながら。
繭が脈打つ。
激しく。
「ドクン! ドクン! ドクン!」
リオンが止まらない。
近づき続ける。
繭に向かって。
三人が見ている。
驚いて。
リオンの姿を。
圧倒的な力を。
新しいリオンを。
完全体リオンを。
戦いが続く。
最後の戦いが。




