第54章 農民の教え
精神世界。
リオンが立っている。
光の中で。
トムが隣にいる。
6666人格が周りで見ている、静かに。
トムが言う。
「6666人全員と仲良くする必要はない。必要な時に、必要な奴だけ。それ以外は眠らせておけ」
リオンが頷く。
「わかった」
でも不安そうに聞く。
「でも、デモンズは?」
トムが答える。
「あいつも必要な時が来るかもしれん。だが今は封印だ」
リオンが驚く。
「必要な時?」
トムが頷く。
「ああ。邪悪な力が必要な時もある。だが今じゃない」
リオンが考える。
そして決意する。
立ち上がる。
デモンズを見る。
遠くに立っている、邪悪な笑みで。
リオンが歩く。
デモンズに向かって。
デモンズが笑う。
「来たか」
リオンが止まる。
デモンズの前で。
「お前は今は不要だ。眠れ」
デモンズが怒る。
「ふざけるな!」
駆ける。
リオンに向かって。
でもリオンは動じない。
手を伸ばす。
デモンズの胸に当てる。
「俺の体だ。俺が決める」
力を込める。
デモンズが押される。
後ろに。
「くそ……!」
足が浮く。
地面から離れる。
暗闇に向かって。
デモンズが叫ぶ。
「離せ!」
暴れる。
でもリオンの手が離れない。
デモンズを押し続ける。
暗闇に。
深く。
深く。
デモンズの声が遠のく。
「覚えてろ…いつか…必ず…」
暗闇に沈む。
完全に。
見えなくなる。
リオンが手を下ろす。
「終わった……」
トムが近づく。
「よくやった」
リオンが振り返る。
6666人格を見る。
全員が見ている、静かに。
リオンが深呼吸する。
そして宣言する。
「お前たちは俺の力だ。でも、全員を同時に使うことはしない。必要な時に呼ぶ。それ以外は休んでてくれ」
戦士アレクが前に出る。
「わかった」
剣を収める。
商人グレイが笑う。
「悪くない取引だ」
学者ルシアンが頷く。
「合理的だ」
魔法使いリズが微笑む。
「いいわ」
忍者カゲロウが頷く。
「了解」
神官ゼノンが祈る。
「神のご加護を」
錬金術師エルヴィンが言う。
「呼ばれるのを待つ」
6666人格が頷く。
全員が。
理解した。
受け入れた。
そして座る。
円形劇場の席に。
それぞれの席に。
静かに。
円形劇場が静まる。
秩序が戻る。
リオンが周りを見る。
全員が座っている。
静かに待っている。
リオンを。
トムが言う。
「これでいい」
リオンが振り返る。
「ありがとう、トム」
トムが微笑む。
「いつでも呼んでくれ。俺も待ってる」
自分の席に向かう。
座る。
他の人格と同じように。
リオンが一人立っている。
円形劇場の中央に。
周りを見回す。
6666人格が座っている。
全員が、静かに。
リオンが微笑む。
「じゃあ、また」
手を振る。
人格たちが手を振り返す。
光が包む。
精神世界が消えていく。
リオンの意識が現実に戻る。
洞窟。
目を開ける。
天井が見える。
石の天井。
体を動かす。
手首に鎖。
でも違和感がない。
力が戻っている。
完全に。
リオンが鎖を見る。
そして力を込める。
腕に。
筋肉が膨らむ。
鎖が軋む。
「ギギギ……」
音がする。
リオンがさらに力を込める。
「うっ……」
鎖が伸びる。
限界まで。
そして。
「バキッ!」
壊れる。
鎖が千切れる。
リオンの手が自由になる。
立ち上がる。
体を伸ばす。
問題ない。
完全に回復している。
リオンが微笑む。
「もう大丈夫だ」
洞窟の中を歩く。
入口に向かって。
でも出ない。
入口の手前で止まる。
座る。
待つ。
三人が戻ってくるのを。
リオンは思った。
『トム、ありがとう……必要な人格だけを使う……シンプルに……』
決意を新たにする。
洞窟の外から夕日が差し込む。
もうすぐ夜になる。
三人はまだ戻らない。
リオンは待ち続ける。
静かに。
落ち着いて。
デモンズは封印された。
人格の制御を学んだ。
もう暴走しない。
リオンは確信している。
夜が来る。
暗くなる。
でもリオンは待つ。
仲間を。
ミラ、カイン、グラムを。
長い夜が始まる。




