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全員が俺だ ~6666回転生した記憶過積載者~  作者: 雨音トキ


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第53章 最弱の記憶・農民

暗闇。

リオンの意識が沈んでいる。

深い闇の中。

何も見えない。

何も聞こえない。

ただ暗闇。

その時、声が聞こえた。

静かな声。

穏やかな声。

「みんな、静かに」

暗闇の中から。

光が差す。

小さな光。

人影が現れる。

質素な服を着ている。

農民の服。

穏やかな顔。

優しい目。

農民トム。

円形劇場に立っている。

6666人格が一斉に振り返る。

騒ぎが止まる。

戦士アレクが言う。

「何だお前」

商人グレイが笑う。

「農民風情が」

学者ルシアンが続ける。

「黙っていろ」

魔法使いリズが言う。

「関係ないわ」

でもトムは動じない。

穏やかな顔のまま。

前に歩く。

ゆっくりと。

中央に向かって。

そして立ち止まる。

周りを見回す。

6666人格を。

全員を。

そして言う。

「お前たち全員、黙れ」

低い声。

だが力強い声。

響く声。

6666人格が黙る。

一斉に。

驚いている。

農民トムの声に。

デモンズが笑う。

「お前に何ができる」

トムを見る。

「ただの農民が」

トムが答える。

「リオンを救う」

デモンズが笑う。

「できるか?」

トムが頷く。

「できる」

続ける。

「お前たちではできない。でも俺にはできる」

戦士アレクが言う。

「何を言ってる」

トムが答える。

「お前は強い。でも優しくない」

商人グレイが言う。

「俺は?」

トムが答える。

「お前は賢い。でも冷たい」

学者ルシアンが言う。

「私は?」

トムが答える。

「お前は知識がある。でも柔軟性がない」

魔法使いリズが言う。

「私は?」

トムが答える。

「お前は強力だ。でも荒い」

忍者カゲロウが言う。

「俺は?」

トムが答える。

「お前は速い。でも冷酷だ」

神官ゼノンが言う。

「私は?」

トムが答える。

「お前は信仰がある。でも頑固だ」

錬金術師エルヴィンが言う。

「俺は?」

トムが答える。

「お前は創造的だ。でも危険だ」

6666人格が黙る。

トムの言葉に。

トムが続ける。

「お前たちは全員、何かに特化している」

「強さ」

「速さ」

「知識」

「魔法」

「信仰」

「だが」

周りを見回す。

「バランスがない」

デモンズが笑う。

「それがどうした」

トムが答える。

「リオンに必要なのはバランスだ」

続ける。

「お前たち全員を使いこなすことじゃない。必要な時に必要な人格を使うことだ」

6666人格が聞いている。

トムが暗闇に向かって歩く。

リオンが沈んでいる場所に。

「大丈夫か?」

優しい声。

リオンが答える。

弱々しく。

『トム……』

トムが近づく。

「聞こえるか?」

リオンが答える。

『ああ……』

『でも……俺は……もうダメだ……』

トムが首を横に振る。

「違う」

リオンの前にしゃがむ。

「お前は全員を使いこなそうとしすぎだ」

リオンが答える。

『だって……6666人いる……』

『全員を……』

トムが遮る。

「必要な奴だけ呼べばいい」

リオンが驚く。

『必要な奴だけ……?』

トムが頷く。

「そうだ」

続ける。

「戦う時は戦士。隠れる時は忍者。魔法を使う時は魔法使い。それだけでいい」

リオンが答える。

『でも……他の人格は……』

トムが言う。

「待ってればいい」

リオンが黙る。

トムが続ける。

「俺を見ろ」

胸を叩く。

「戦士でも魔法使いでもない。ただの農民だ」

続ける。

「だが、俺には俺の役割がある。土を耕し、種を蒔き、収穫する。それだけだ」

シンプルな言葉。

でも重みがある。

リオンが聞く。

『それが……答えか……?』

トムが頷く。

「そうだ」

微笑む。

「全員を使う必要はない。その時必要な奴だけでいい」

リオンが考える。

『必要な奴だけ……』

記憶が蘇る。

氷山での戦い。

戦士アレクを使った。

忍者カゲロウを使った。

魔法使いリズを使った。

その時必要だったから。

全員を使ったわけじゃない。

必要な人格だけ。

『そうか……』

リオンの目が開く。

暗闇の中で。

光が差す。

心の中に。

『シンプルに考えればいい……』

『複雑に考えすぎていた……』

『全員を使わなくていい……』

『必要な人格だけ……』

『それだけだ……』

トムが微笑む。

「わかったか」

リオンが頷く。

『ああ……』

立ち上がる。

暗闇の中で。

でも光が増えている。

リオンの周りに。

『ありがとう、トム……』

トムが頷く。

「どういたしまして」

リオンが周りを見る。

6666人格が見ている。

全員が静かに。

デモンズも立っている。遠くに。

邪悪な笑みで。

リオンは思った。

『今はまだ……力が足りない……。でも……いつか……デモンズを完全に封印する……』

決意する。

トムが言う。

「戻れ」

リオンが頷く。

『ああ』

光が強くなる。

精神世界が消えていく。

リオンの意識が現実に戻ろうとしている。

最後に見えたのは。

トムの微笑み。

そして6666人格の顔。

全員が見守っている。

リオンを。

光が全てを包む。


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