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全員が俺だ ~6666回転生した記憶過積載者~  作者: 雨音トキ


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第4章 記憶カタログ作戦

深夜。

家族は眠っている。

リオンだけが起きていた。

机の上には羊皮紙の束。インク壺。羽ペン。

月明かりが部屋を照らす。

リオンはペンを握った。

「全員の名前を書き出す」

つぶやく。

決意を確かめるように。

ペン先をインクに浸す。

羊皮紙に文字を書く。

『1人目:原始人ゴル。狩人。槍使い』

最古の記憶。

言葉もろくに話せない時代。

獣を狩り、火を使い、洞窟で眠った人生。

『2人目:農民トム。畑を耕す。穏やか』

質素な人生。

だが、幸せそうだった。

『3人目:戦士アレク。剣士。古代王国の兵士』

母を襲おうとした人格。

強い。だが、制御が難しい。

リオンは書き続けた。

4人目、5人目、6人目。

商人、学者、職人、盗賊、神官。

様々な職業。様々な人生。

10人目を書き終えた時、手が少し震えた。

まだ6656人残っている。

「続ける」

20人目。30人目。50人目。

時間が経つ。

リオンの目が疲れてくる。

でも止まらない。

100人目を超えた。

詐欺師、暗殺者、王、船乗り、鍛冶師。

人生の多様さに驚く。

自分は、こんなにも多くの人間だったのか。

200人目。

手が痛い。

インクを補充する。

新しい羊皮紙を取り出す。

300人目。

まぶたが重い。

でも、眠るわけにはいかない。

400人目。

ペンを持つ手が震える。

文字が歪む。

500人目を書き終えた瞬間。

激痛が頭を貫いた。

「ぐあ……!」

リオンはペンを落とす。

頭を抱える。

記憶が逆流する。

500人全員の死に様が、同時に再生された。

剣で刺される。病で死ぬ。老衰。事故。処刑。餓死。

様々な死。

痛みが襲う。苦しみが襲う。

「やめろ……やめてくれ……」

リオンは床に倒れた。

体が痙攣する。

「殺される……また殺される……6666回……」

うわ言のようにつぶやく。

意識が遠のく。

暗闇が迫る。

そこで、母の悲鳴が聞こえた。

「リオン!」

扉が開く。

母が駆け寄る。

リオンを抱き上げる。

「リオン! しっかりして!」

リオンは母の顔を見た。

ぼやけている。

「母さん……」

そこで意識が途切れた。

暗闇。

夢の中で、6666人が立っている。

全員がリオンを見ている。

「無理をするな」

「まだ早い」

「体が持たない」

「でも、諦めるな」

様々な声。

リオンは答えられない。

ただ、暗闇に沈んでいく。

目を覚ました時、天井が見えた。

自分の部屋。

ベッドに寝かされている。

体が重い。

頭がぼんやりする。

横を見ると、母が椅子に座って眠っていた。

疲れた顔。

心配させてしまった。

リオンは体を起こそうとした。

痛い。

全身が筋肉痛のようだ。

時計を見る。

3日経っていた。

「3日……」

母が目を覚ました。

「リオン! 起きたの!」

抱きしめられる。

「よかった……ずっと眠ってて……高熱が下がらなくて……」

母が泣いている。

リオンは母の背中に手を回した。

「ごめん……心配かけた」

母が顔を上げる。涙を拭く。

「無理しないで。何をしてたの? 机の上、書類だらけで」

リオンは机を見た。

羊皮紙が散らばっている。

インク壺がこぼれている。

ペンが床に落ちている。

「記憶を……整理してた」

母が首を傾げる。

「記憶?」

リオンは頷いた。

「俺の中に……たくさんの人がいる。それを……把握しようとした」

母は何も言わなかった。

ただ、リオンの頭を撫でる。

「少しずつね。焦らないで」

リオンは微笑んだ。

「うん」

母が部屋を出て行く。

「スープ作るわ。食べなさい」

一人になる。

リオンは羊皮紙を拾い集めた。

1000人分の記録。

まだ5666人残っている。

「まだまだだな……」

でも、諦めない。

ノートを開く。

新しいページ。

『制御法の研究』

『段階的に記録する。無理をしない』

『1日10人ずつ』

計画を立てる。

これなら、体が持つかもしれない。

リオンはペンを握った。

「やり直す」

決意を新たにする。

窓の外、鳥が鳴いている。

朝だ。

新しい一日。

リオンは深呼吸した。

「行ける」

6666人。

全員を把握する。

そして、制御する。

長い道のり。

でも、歩き始めた。

リオンは書き始めた。

1001人目の名前を。


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