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全員が俺だ ~6666回転生した記憶過積載者~  作者: 雨音トキ


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第31章 黒騎士・カイン

ミラの顔は青ざめている。

呼吸が浅い。

血が服を染めている。

リオンは深呼吸した。

「癒せ……」

つぶやく。

瞬間、目が変わる。

治療師アンナの目。

優しい目。

女性の目。

リオンの体が動く。

女性的な動作。

手をミラの傷に当てる。

目を閉じる。

集中する。

「診断……」

小さく言う。

アンナの知識が流れ込む。

「肋骨……3本骨折……」

顔が曇る。

「内臓……損傷……」

震える声。

「これは……重傷……」

手を動かす。

傷を診る。

出血。

内出血。

痛々しい。

「治療……開始……」

手が光る。

淡い光。

緑色の光。

治癒魔法。

ミラの傷に注ぐ。

光が傷に染み込む。

出血が止まる。

少しずつ。

でも。

骨折は治らない。

内臓損傷も。

治癒魔法だけでは足りない。

アンナが言う。

いや、リオンが。

アンナの声で。

「薬草が必要……包帯も……」

立ち上がる。

荷物を漁る。

薬草を取り出す。

持っていてよかった。

水に薬草を入れる。

煎じる。

待つ。

5分。

薬ができる。

ミラの口に流し込む。

少しずつ。

飲ませる。

そして。

包帯を巻く。

傷を覆う。

丁寧に。

優しく。

1時間後。

治療が終わる。

リオンは座り込んだ。

「戻れ……」

つぶやく。

目が元に戻る。

リオンの目。

「はあ……はあ……」

荒い呼吸。

疲れた。

治癒魔法は体力を使う。

でも。

ミラを見る。

呼吸が安定している。

顔色も少し戻っている。

よかった。

リオンはミラの手を取った。

「すまない……」

小さく言う。

「俺が……弱いから……」

ミラが小さく動く。

目を開ける。

少しだけ。

「リオン……?」

弱々しい声。

リオンが顔を近づける。

「ミラ! 大丈夫か!?」

ミラが微笑もうとする。

でも、痛みで顔が歪む。

「ごめん……」

小さく言う。

「弱くて……」

リオンが首を横に振る。

「謝るな」

ミラの手を握る。

「俺が弱いんだ」

ミラが首を横に振ろうとする。

でも、痛い。

「そんなこと……」

リオンが遮る。

「いいから休め」

ミラが目を閉じる。

「うん……」

また眠りに落ちる。

リオンは椅子に座った。

ミラを見守る。

夜が更けていく。

リオンは眠れない。

ただ、窓を見つめる。

月が見える。

カインの言葉が頭を離れない。

「6666回戦って、まだ俺に勝てないのか」

リオンは拳を握る。

「くそ……」

小さく言う。

「どうすれば……」

3日が過ぎた。

ミラは回復した。

傷はまだ痛むが。

動けるようになった。

リオンは相変わらず眠れていない。

目の下に隈ができている。

ミラが心配そうに見る。

「リオン、寝てないの?」

リオンが首を横に振る。

「大丈夫」

ミラが続ける。

「嘘。顔に出てるわ」

リオンは黙る。

ミラが言う。

「カインのこと、考えてるのね」

リオンが頷く。

「ああ……」

窓の外を見る。

「勝てない……どうしても……」

ミラが立ち上がる。

まだ少し痛むが。

リオンの隣に座る。

「大丈夫。きっと方法がある」

リオンが答える。

「6666回負けた相手だぞ……」

ミラが微笑む。

「でも6667回目は違う。私がいる」

リオンも微笑もうとする。

でも、できない。

不安が大きすぎる。

その日の午後。

リオンは一人で市場に出た。

食料を買うため。

ミラは宿で休んでいる。

市場は賑やか。

人々が行き交う。

商人が叫ぶ。

「安いよ!」

「新鮮な魚だ!」

リオンは歩く。

露店を見て回る。

その時。

声がした。

「よう、リオン」

振り返る。

カインがいた。

黒い鎧ではない。

普通の服。

旅人の格好。

茶色のマント。

剣も見えない。

でも、間違いない。

あの赤い目。

リオンは身構える。

「カイン……」

カインが微笑む。

「話がある」

リオンが警戒する。

「何の話だ」

カインが指差す。

「あそこの喫茶店で」

リオンは迷った。

罠かもしれない。

でも。

話を聞きたい。

なぜ、カインは自分を殺すのか。

「わかった」

カインが歩き出す。

リオンがついていく。

喫茶店に入る。

奥の席。

二人が座る。

店員が来る。

「ご注文は?」

カインが答える。

「コーヒー2つ」

店員が去る。

静寂。

カインが口を開く。

「本題に入ろう」

リオンが聞く。

「何の話だ」

カインが答える。

「俺の正体」

リオンが黙る。

カインが続ける。

「俺もお前と同じ、記憶保持者だ」

リオンが驚く。

「記憶保持者……?」

カインが頷く。

「ただし12回分」

リオンが目を見開く。

「12回……」

カインが続ける。

「その12回すべてで、お前を殺してきた」

リオンが震える。

「なぜ……」

カインが冷たく言う。

「なぜなら、お前は毎回最後に暴走して世界を滅ぼすからだ」

リオンが立ち上がる。

椅子が倒れる。

「嘘だ!」

周りの客が驚く。

カインは冷静。

「座れ」

リオンが睨む。

「俺が世界を滅ぼす? ふざけるな!」

カインが続ける。

「予言書を読んだだろう?」

リオンが黙る。

カインが続ける。

「『世界を滅ぼす力も持つ』……あれは本当だ」

リオンが震える。

「でも……俺は……」

カインが遮る。

「12回見てきた。お前は魔王を倒す。だがその後、6666の魂に飲まれる。そして暴走する」

リオンが座る。

力が抜ける。

「そんな……」

カインが続ける。

「だから俺は、お前を殺す。魔王を倒す前に」

リオンが顔を上げる。

「それじゃ……魔王は……」

カインが答える。

「他の誰かが倒す。お前じゃなくても」

リオンが拳を握る。

「信じない……」

カインが立ち上がる。

「信じなくていい」

コインをテーブルに置く。

「だが6667回目も、お前は失敗する」

歩き出す。

「世界を滅ぼす前に、俺がお前を殺す」

店を出る。

去っていく。

リオンは座ったまま。

震えている。

拳を握りしめる。

「嘘だ……」

小さく言う。

「俺は……世界を滅ぼさない……」

でも。

心の奥で。

不安がある。

予言の言葉。

カインの言葉。

そして。

ゼロの記録。

「暴走した……」

リオンは頭を抱える。

「どうすれば……」

店員が来る。

「お客様?」

リオンが顔を上げる。

「すみません……」

立ち上がる。

コインを置く。

店を出る。

街を歩く。

人々が楽しそうに歩いている。

笑っている。

リオンは思う。

『この人たちを……守りたい……』

『でも……もし俺が暴走したら……』

『この人たちを……殺すのか……』

拳を握る。

爪が食い込む。

血が滲む。

「絶対に……」

小さく誓う。

「暴走しない……」

宿に戻る。

部屋に入る。

ミラが迎える。

「おかえり」

リオンが微笑もうとする。

でも、できない。

ミラが気づく。

「どうしたの?」

リオンが首を横に振る。

「何でもない」

ミラが近づく。

「嘘。何かあったわ」

リオンは黙る。

そして。

ミラに抱きつく。

突然。

ミラが驚く。

「リオン……?」

リオンが言う。

「すまない……」

震える声。

「俺は……弱い……」

ミラが背中を撫でる。

「大丈夫よ」

優しい声。

「一緒にいるから」

リオンが涙を流す。

「ありがとう……」

二人は抱き合ったまま。

しばらく。

窓の外。

太陽が沈んでいく。

赤い空。

リオンの心も。

揺れている。

不安と。

決意と。

恐怖と。

希望と。

全てが混ざり合っている。

でも。

一つだけ確かなこと。

ミラがいる。

それだけで。

少し。

強くなれる気がする。


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