第30章 前世の仇敵
図書館都市の北門。
リオンとミラは門をくぐろうとした。
その時。
目の前に人影が現れた。
黒い鎧。
全身を覆う漆黒の鎧。
大きな剣を背負っている。
リオンは立ち止まった。
ミラも止まる。
黒騎士が立ちはだかる。
門の向こう側に。
逃げ道を塞ぐように。
黒騎士が口を開いた。
「久しぶりだな、リオン」
低い声。
冷たい声。
リオンの全身が震える。
この声。
知っている。
いや、知りすぎている。
過去生の記憶が一斉に反応する。
ゴルの記憶。
「黒い戦士に殺された……」
トムの記憶。
「あいつが村を襲った……」
アレクの記憶。
「一騎打ちで負けた……」
ルシアンの記憶。
「研究所を襲撃した……」
カゲロウの記憶。
「影の中から殺された……」
6666の記憶が叫ぶ。
「こいつだ……」
「殺された……」
「勝てなかった……」
「逃げられなかった……」
リオンが震える声で言った。
「お前は……カイン……!」
黒騎士が兜を脱ぐ。
ゆっくりと。
顔が現れる。
若い男。
黒い髪。
赤い目。
冷たい笑み。
「覚えていてくれたか」
カインが微笑む。
「嬉しいな」
リオンは剣に手をかける。
震えている。
恐怖。
怒り。
憎しみ。
全てが混ざっている。
カインが続ける。
「6666回、お前を殺した」
冷たく言う。
「覚えているか?」
リオンが歯を食いしばる。
「忘れるか……」
カインが笑う。
「そうか。なら話は早い」
剣を背中から抜く。
大剣。
黒い刃。
不吉な光を放つ。
「6667回目も同じだ」
構える。
リオンに向かって。
「お前を殺す」
襲いかかる。
速い。
一瞬で距離を詰める。
リオンが叫ぶ。
「戦え!」
目が変わる。
戦士アレクの目。
剣を抜く。
カインの剣を受ける。
「ガキィン!」
金属音。
衝撃。
リオンの腕が痺れる。
重い。
カインの剣が。
力が違う。
カインが笑う。
「その程度か」
剣を引く。
再び斬りかかる。
リオンは受ける。
また受ける。
防戦一方。
攻撃できない。
カインが言う。
「遅い」
剣を振るう。
リオンの剣を弾く。
そして蹴り。
腹に。
「ぐはっ!」
リオンが吹き飛ぶ。
地面を転がる。
ミラが叫ぶ。
「リオン!」
リオンは立ち上がった。
「隠れよ!」
アレクを引かせる。
カゲロウを呼ぶ。
目が変わる。
忍者カゲロウの目。
体が影に溶ける。
地面を滑る。
カインの背後に回る。
剣を振るう。
だが。
カインが振り向く。
剣で受ける。
「見えているぞ」
冷たく言う。
蹴りを入れる。
リオンに当たる。
「うっ!」
また吹き飛ぶ。
リオンは転がりながら叫ぶ。
「戻れ! 燃やせ!」
カゲロウを引かせる。
リズを呼ぶ。
目が変わる。
魔法使いリズの目。
手を突き出す。
「炎よ!」
炎が噴き出す。
カインに向かって。
だが。
カインは避ける。
横に跳ぶ。
炎が空を切る。
カインが笑う。
「それも見た」
地面を蹴る。
リオンに迫る。
リオンは炎を向ける。
でも当たらない。
カインが速すぎる。
そして。
カインの剣がリオンに迫る。
リオンは炎を止めた。
「戻れ! 戦え!」
リズを引かせる。
アレクを呼ぶ。
剣で受ける。
「ガキィン!」
また衝撃。
カインが言う。
「6666回戦って、まだ俺に勝てないのか」
冷たく笑う。
「進歩がないな」
剣を振るう。
連撃。
リオンは受ける。
受ける。
受ける。
でも。
防ぎきれない。
カインの剣がリオンの肩を切る。
「ぐあっ!」
血が飛ぶ。
リオンが膝をつく。
剣を地面に突き立てる。
支えにする。
「はあ……はあ……」
荒い呼吸。
カインが近づく。
剣を構える。
「終わりだ」
その時。
ミラが叫んだ。
「守れ!」
目が変わる。
シルヴィアの目。
カインに突進する。
拳を振るう。
カインが剣で受ける。
「邪魔だ」
剣を振るう。
ミラに向かって。
ミラは避けようとする。
でも。
間に合わない。
カインの剣の腹がミラに当たる。
「うっ!」
ミラが吹き飛ぶ。
壁に叩きつけられる。
「がっ……」
地面に倒れる。
動かない。
リオンが叫ぶ。
「ミラ!」
立ち上がろうとする。
でも。
カインの剣が喉元に突きつけられる。
冷たい刃。
リオンは動けない。
カインが言う。
「殺さない」
リオンが見上げる。
「なぜ……」
カインが微笑む。
「まだ楽しみたい」
剣を引く。
「次に会うとき、お前を殺す」
リオンを見下ろす。
「準備しておけ」
そして。
カインは背を向けた。
歩き出す。
門を通って。
北へ。
消えていく。
リオンは何もできなかった。
ただ見送るだけ。
悔しさに拳を握る。
爪が手のひらに食い込む。
血が滲む。
「くそ……」
小さく言う。
「くそ……くそ……」
涙が出そうになる。
その時。
うめき声が聞こえた。
「う……」
ミラだ。
リオンは立ち上がった。
駆け寄る。
「ミラ!」
ミラは倒れている。
目が元に戻っている。
シルヴィアが引いた。
リオンがミラを抱き起こす。
「ミラ! 大丈夫か!?」
ミラが目を開ける。
「リオン……」
弱々しい声。
「ごめん……役に立てなかった……」
リオンが首を横に振る。
「いや、お前のおかげで助かった」
ミラが微笑もうとする。
でも、痛みで顔が歪む。
「痛い……」
リオンが見る。
ミラの脇腹。
血が滲んでいる。
剣で切られている。
深い傷。
リオンが焦る。
「治療しないと……」
ミラを抱き上げる。
「我慢してくれ」
門を通る。
街に戻る。
人々が驚く。
「何があった!?」
「怪我人だ!」
リオンが走る。
宿に向かって。
「道を開けてくれ!」
人々が道を開ける。
リオンは宿に着いた。
階段を駆け上る。
部屋に入る。
ミラをベッドに寝かせる。
優しく。
ミラの顔は青ざめている。
呼吸が浅い。
血が服を染めている。
リオンが焦る。
「ミラ! しっかりしろ!」
ミラが弱々しく答える。
「リオン……ごめん……」
リオンが首を横に振る。
「謝るな!」
涙が溢れる。
「俺が……弱いから……」
ミラが微笑もうとする。
でも、痛みで顔が歪む。
「痛い……」
リオンが決意した。
「今すぐ治療する」
ミラの手を握る。
「待っててくれ」
ミラが頷く。
「うん……」
目を閉じる。
意識が朦朧としている。
リオンは拳を握りしめた。
「必ず……治す……」
小さく誓う。
「絶対に……」
窓の外。
月が昇っている。
静かな夜。
でも、リオンの心は荒れている。
悔しさ。
怒り。
そして。
決意。
「カイン……」
小さく言う。
「次は……負けない……」
ミラを見る。
「まず……お前を治す……」
深呼吸する。
治療の準備を始める。
長い夜が始まった。




