第24章 二人の記憶制御訓練
夕方。
リオンとミラは川辺に着いた。
野営する場所を探していた。
「ここがいいわ」
ミラが指差す。
平らな地面。
川が近い。
木々が風を遮る。
リオンは頷いた。
「ここにしよう」
二人は荷物を下ろした。
リオンが火を起こす。
ミラが川で水を汲む。
しばらくして、焚き火が燃えている。
二人は火を囲んで座った。
簡単な夕食。
パンと干し肉。
水。
食事が終わる。
リオンが立ち上がった。
「ミラ、訓練しよう」
ミラが頷く。
「うん」
立ち上がる。
リオンが説明する。
「さっき、森で少しやったな」
ミラが頷く。
「『守れ』で呼んで、『戻れ』で封印」
リオンが頷く。
「そうだ。でも、まだ完璧じゃない」
ミラが視線を落とす。
「すぐ暴走する……」
リオンが肩を叩く。
「大丈夫。訓練すれば制御できる」
ミラが顔を上げる。
「本当に?」
リオンが微笑む。
「俺ができたんだ。お前もできる」
ミラは決意した。
「わかった。やる」
リオンが少し離れる。
「じゃあ、もう一度。キーワードを決めろ」
ミラが考える。
「『守れ』でいい?」
リオンが頷く。
「お前が決めることだ。お前の人格は?」
ミラが答える。
「エルフの戦士。名前はシルヴィア」
リオンが頷く。
「シルヴィアは何をする人格だ?」
ミラが答える。
「戦う。守る」
リオンが提案する。
「じゃあ『守れ』か『戦え』がいい」
ミラが頷く。
「『守れ』にする」
リオンが頷く。
「いいだろう。じゃあ試してみろ」
ミラが深呼吸する。
目を閉じる。
そして叫ぶ。
「守れ!」
瞬間、ミラの目が変わる。
鋭く。
冷たく。
シルヴィアの目。
体が戦士の構えを取る。
剣を持っていないのに、構える動作。
1秒。
2秒。
3秒。
ミラの体が震え始める。
暴走の兆し。
リオンが叫ぶ。
「封印呪文!」
ミラが叫ぶ。
「戻れ!」
シルヴィアが引いていく。
ミラの目が元に戻る。
膝をつく。
「はあ……はあ……」
リオンが駆け寄る。
「大丈夫か?」
ミラが頷く。
「うん……でも、3秒しか持たない……」
リオンが微笑む。
「最初はそんなもんだ」
ミラが驚く。
「あなたも?」
リオンが頷く。
「俺も最初は数秒だった。でも、訓練で伸びる」
ミラが立ち上がる。
「もう一回やる」
リオンが止める。
「待て。連続はダメだ。体が持たない」
ミラが不満そうな顔をする。
「でも……」
リオンが首を横に振る。
「焦るな。少しずつだ」
ミラは頷いた。
「わかった……」
リオンが言う。
「封印呪文は『戻れ』でいいな?」
ミラが頷く。
「それで成功したから」
リオンが続ける。
「じゃあ、それを覚えておけ。『守れ』で呼んで、『戻れ』で封印」
ミラが繰り返す。
「『守れ』で呼んで、『戻れ』で封印」
リオンが微笑む。
「完璧だ」
ミラも微笑んだ。
「ありがとう、リオン」
リオンが振り返る。
「じゃあ、俺も訓練する」
ミラが首を傾げる。
「あなたも?」
リオンが頷く。
「新しい技を試したい」
ミラが興味深そうに見る。
「どんな?」
リオンが答える。
「多人格同時起動」
ミラが目を見開く。
「同時に……?」
リオンが頷く。
「そうだ。一人じゃなく、二人同時に呼ぶ」
ミラが心配そうな顔をする。
「危険じゃない……?」
リオンが微笑む。
「多分な」
両手を広げる。
深呼吸する。
「見ててくれ」
ミラが少し離れる。
リオンは集中した。
精神世界に意識を向ける。
二つの人格を同時に呼ぶ。
「戦え、隠れよ、同時に!」
叫ぶ。
瞬間、リオンの体が光る。
右半分と左半分で色が違う。
右は赤い光。
戦士アレク。
左は青い光。
忍者カゲロウ。
リオンの体が動く。
右手が剣を振る動作。
左手が影を操る動作。
右足が踏み込む。
左足が滑るように動く。
二つの動きが同時に。
リオンは近くの木に向かう。
右手で木を斬る動作。
空気が裂ける音。
木に傷がつく。
同時に、左半身が影に溶ける。
半透明になる。
ミラが驚く。
「すごい……」
リオンは木の周りを回る。
斬りながら。
影に溶けながら。
二つの人格が同時に動いている。
成功だ。
だが、次の瞬間。
リオンの頭に激痛が走る。
「うぐ……」
膝をつく。
二つの人格が暴れ始める。
互いに主導権を奪い合う。
「戻れ! 両方とも戻れ!」
叫ぶ。
人格が引いていく。
リオンの体が元に戻る。
倒れ込む。
ミラが駆け寄る。
「リオン!」
支える。
「大丈夫!?」
リオンが答える。
「大丈夫……ただ、頭が……」
額を押さえる。
激しい頭痛。
ミラが心配そうに見る。
「無茶しないで!」
リオンが微笑む。
「でも……成功した……」
ミラが首を横に振る。
「成功でも、倒れたら意味ないわ!」
リオンが立ち上がろうとする。
ミラが支える。
「ゆっくりして」
リオンは座り込んだ。
焚き火の前に。
ミラも座る。
「無理しないで」
リオンが頷く。
「わかった」
でも、心の中で思う。
『これができれば……もっと強くなれる』
ミラがリオンを見る。
「あなた、いつもそうね」
リオンが首を傾げる。
「何が?」
ミラが答える。
「無理する」
リオンは微笑んだ。
「仕方ない。俺には使命がある」
ミラが頷く。
「わかってる。でも、死んだら意味ないわ」
リオンは黙った。
その通りだ。
ミラが続ける。
「一緒に訓練しましょう。お互いに」
リオンが顔を上げる。
「一緒に……?」
ミラが頷く。
「私も強くなりたい。あなたを助けたい」
リオンは微笑んだ。
「ありがとう、ミラ」
ミラも微笑む。
「どういたしまして」
二人は焚き火を見つめた。
炎が揺れる。
温かい。
リオンが言う。
「明日も訓練しよう」
ミラが頷く。
「うん」
リオンが続ける。
「お前は『守れ』の持続時間を伸ばす」
ミラが頷く。
「わかった」
リオンが続ける。
「俺は……多人格同時起動の制御を極める」
ミラが心配そうに見る。
「無理しないでね」
リオンが頷く。
「わかってる」
夜が深まる。
二人は焚き火の前で話し続けた。
訓練のこと。
記憶のこと。
過去のこと。
互いを知る時間。
ミラが言う。
「リオン、あなたに会えてよかった」
リオンが微笑む。
「俺もだ」
ミラが続ける。
「一人じゃないって……嬉しい」
リオンが頷く。
「ああ。俺も同じだ」
二人は微笑み合った。
焚き火の光が二人を照らす。
温かい光。
星が輝いている。
静かな夜。
川のせせらぎ。
リオンが言う。
「寝よう。明日、また訓練だ」
ミラが頷く。
「うん」
二人は寝袋に入った。
焚き火が燃え続ける。
リオンは目を閉じた。
『明日も……頑張ろう』
心の中で決意する。
ミラも目を閉じた。
『私も……強くなる』
二人の呼吸が深くなる。
眠りに落ちる。
焚き火が静かに燃える。
二人を見守るように。
夜が過ぎる。
朝が来る。
新しい訓練の日が。
二人の成長の日が。
そして、世界を救うための。
一歩が。




