第23章 最初の仲間・エルフ少女
翌朝。
リオンは町を出た。
次の目的地に向かう。
街道を歩く。
しばらくして、街道を外れた。
森を通る近道がある。
町の人に聞いた。
「この森を抜けると、半日早く着く」
リオンは森に入った。
木々が茂る。
鳥が鳴く。
獣道を進む。
30分ほど歩いた。
その時、悲鳴が聞こえた。
「きゃああああ!」
女性の声。
リオンは走り出した。
声のする方へ。
木々を掻き分ける。
開けた場所に出た。
そこに、少女がいた。
木に縛られている。
縄で。
エルフだ。
長い耳。
金色の髪。
緑色の目。
そして、目の前に魔獣。
黒い狼。
巨大だ。
口から涎を垂らしている。
少女を狙っている。
リオンは叫んだ。
「おい!」
魔獣が振り向く。
赤い目。
リオンを見る。
唸る。
リオンは剣を抜いた。
「戦え」
つぶやく。
瞬間、目が変わる。
戦士アレクの目。
体が動く。
魔獣が飛びかかる。
リオンは避ける。
横に跳ぶ。
魔獣が地面に着地する。
リオンは踏み込む。
剣を振るう。
魔獣の脇腹を斬る。
「ガウッ!」
魔獣が吠える。
振り向く。
牙を剥く。
リオンに襲いかかる。
リオンは剣で受ける。
力が強い。
押される。
だが、踏ん張る。
魔獣を押し返す。
蹴りを入れる。
魔獣が後退する。
リオンは剣を構える。
魔獣が再び飛びかかる。
リオンは剣を突き出す。
魔獣の喉を貫く。
「グルル……」
魔獣が倒れる。
動かなくなる。
リオンは剣を抜く。
血を拭う。
振り返る。
少女を見る。
「大丈夫か?」
駆け寄る。
縄を切る。
少女が解放される。
地面に座り込む。
「はあ……はあ……」
荒い呼吸。
リオンは膝をつく。
「怪我は?」
少女が顔を上げた。
「ありがとう……」
震える声。
涙が頬を伝っている。
「助かった……」
リオンは微笑む。
「よかった」
立ち上がる。
手を差し伸べる。
「立てるか?」
少女が手を取ろうとした。
その瞬間。
少女の目が変わった。
鋭く。
冷たく。
殺気に満ちた目。
リオンは気づいた。
「まずい!」
少女が跳ね起きる。
ナイフを抜く。
どこから取り出したのか。
リオンに斬りかかる。
「殺す!」
低い声。
少女の声じゃない。
戦士の声。
リオンは後ろに跳ぶ。
ナイフが空を切る。
少女が追ってくる。
次々と攻撃。
リオンは剣で受ける。
「待て! 落ち着け!」
少女は聞かない。
攻撃を続ける。
リオンは防戦する。
攻撃しない。
相手は助けた少女だ。
「お前も記憶持ちか!」
叫ぶ。
少女の動きが一瞬止まる。
だが、すぐ再開。
斬りかかる。
リオンは受ける。
「答えろ!」
少女が涙を流している。
攻撃しながら。
「違う!」
叫ぶ。
「1回分だけ!」
リオンは目を見開いた。
「1回……?」
少女が続ける。
「でも制御できない!」
泣きながら攻撃。
「止められない!」
リオンは理解した。
「わかる……その苦しみ……」
少女の攻撃が激しくなる。
「わかるもんか!」
泣き叫ぶ。
「この苦しみが!」
リオンは剣を下ろした。
無防備になる。
少女のナイフが迫る。
リオンは叫んだ。
「戻れ!」
大きな声。
魂を込めた声。
少女の動きが止まる。
ナイフがリオンの喉元で止まる。
少女の目が揺れる。
二つの人格が戦っている。
リオンは続ける。
「お前の人格に言う! 戻れ! 今すぐ戻れ!」
少女の体が震える。
「う……ああ……」
苦しそうな声。
目が元に戻る。
緑色の、優しい目。
ナイフが手から落ちる。
少女が崩れ落ちる。
リオンが支える。
「はあ……はあ……」
荒い呼吸。
少女が涙を流す。
「どうやって……」
震える声。
「どうやって止めたの……」
リオンは座らせる。
地面に。
自分も座る。
「教えてやる」
少女が顔を上げる。
「俺は……記憶過積載者だ」
少女が目を見開く。
「記憶……?」
リオンが頷く。
「6666回分の転生記憶を持ってる」
少女は信じられない顔をする。
「嘘……」
リオンが微笑む。
「本当だ」
少女が震える。
「6666回……」
リオンが続ける。
「お前は1回分だろ? それでも苦しいはずだ」
少女が頷く。
「苦しい……毎日……」
涙が止まらない。
「制御できない……いつ出てくるかわからない……」
リオンが肩に手を置く。
「わかる。俺もそうだった」
少女がリオンを見る。
「でも……あなたは制御してる……」
リオンが頷く。
「訓練した。今も完璧じゃない。でも、少しずつできるようになった」
少女が目を輝かせる。
「教えて……」
リオンが微笑む。
「いいぞ」
少女が涙を拭う。
「私……ミラ。エルフの村から来た」
リオンが名乗る。
「リオン。人間の村から……追放された」
ミラが驚く。
「追放……?」
リオンが頷く。
「記憶のせいでな」
ミラが視線を落とす。
「私も……村にいられなくなった……」
二人は似ている。
同じ苦しみを持つ。
リオンは立ち上がった。
手を差し伸べる。
「一緒に来い」
ミラが顔を上げる。
「え……?」
リオンが微笑む。
「お前は一人じゃない」
ミラが震える。
「でも……私……危険よ……いつ暴走するか……」
リオンが首を横に振る。
「俺もだ。でも、一人より二人の方がいい」
ミラが涙を流す。
「本当に……いいの……?」
リオンが頷く。
「ああ。一緒に旅しよう」
ミラはリオンの手を取った。
立ち上がる。
「ありがとう……」
リオンが微笑む。
「こちらこそ。仲間ができて嬉しい」
ミラも微笑んだ。
涙の跡が残っている。
でも、笑顔だ。
「私も……嬉しい……」
二人は森を歩き出した。
並んで。
リオンが話す。
「制御法を教える。まず、キーワードを決めるんだ」
ミラが頷く。
「キーワード……?」
リオンが説明する。
「人格を呼ぶための言葉だ」
ミラが首を傾げる。
「どうやって……」
リオンが答える。
「お前の中の人格は誰だ?」
ミラが答える。
「エルフの戦士……名前はシルヴィア」
リオンが頷く。
「じゃあ、『守れ』とか『戦え』とか、シルヴィアに関係ある言葉を選ぶんだ」
ミラが考える。
「『守れ』……?」
リオンが頷く。
「試してみろ」
ミラが深呼吸する。
「『守れ』!」
瞬間、目が変わる。
シルヴィアの目。
ミラの体が戦士の構えを取る。
だが、3秒で暴走し始める。
リオンが叫ぶ。
「封印呪文! 『戻れ』だ!」
ミラが必死に叫ぶ。
「戻れ!」
シルヴィアが引いていく。
ミラの目が元に戻る。
崩れ落ちそうになる。
リオンが支える。
「大丈夫か?」
ミラが頷く。
「できた……初めて……自分で戻せた……」
涙が溢れる。
嬉しい涙。
「ありがとう……リオン……」
リオンが微笑む。
「これからだ。もっと訓練しよう」
ミラが頷く。
「うん!」
二人は森を抜けた。
街道に出る。
太陽が高く昇っている。
リオンが言う。
「次の町まで、あと2日だ」
ミラが頷く。
「一緒に行くわ」
リオンが微笑む。
「ああ」
二人は歩き出した。
並んで。
リオンは思った。
『やっと仲間ができた』
心が軽い。
一人じゃない。
ミラも思った。
『やっと……理解してくれる人に会えた』
二人の旅が始まる。
記憶を持つ者同士の。
世界を救うための。
長い旅の。
最初の一歩。
街道を二人が歩く。
リオンとミラ。
太陽が二人を照らす。
温かい光。
これから、どんな困難が待っているのか。
それはまだわからない。
でも、二人はもう一人じゃない。
共に歩む仲間がいる。
それだけで、強くなれる気がする。
リオンが言う。
「ミラ、お前の人格、シルヴィアは強いな」
ミラが頷く。
「でも、怖いの。いつ出てくるか……」
リオンが答える。
「大丈夫。俺が教える」
ミラが微笑む。
「ありがとう」
二人は歩き続ける。
次の町へ。
次の冒険へ。
新しい仲間との旅が始まった。




