第22章 盗賊団との遭遇
旅の3日目。
リオンは街道を歩いていた。
朝から歩き続けている。
疲れた。
でも、止まらない。
次の町まで、あと半日。
そこで食料を補給する予定だ。
街道は森の中を通っている。
木々が両側に茂る。
薄暗い。
リオンは警戒していた。
こういう場所は危ない。
盗賊が出る。
その時、前方から声がした。
「おい、そこの旅人」
リオンは立ち止まった。
前を見る。
男が5人、道を塞いでいる。
汚れた服。
武器を持っている。
剣、斧、槍。
盗賊だ。
リオンはため息をついた。
「面倒だな……」
盗賊の一人が笑う。
「面倒? お前が面倒なことになるんだぜ」
別の盗賊が剣を抜く。
「金を出せ。大人しく渡せば命は取らない」
リオンは荷物を下ろした。
「金? ないよ」
嘘じゃない。
本当に少ししかない。
盗賊が近づく。
「嘘つくな。荷物を調べさせてもらう」
リオンは首を横に振った。
「ダメだ」
盗賊が怒る。
「なら、力ずくだ!」
5人が一斉に襲いかかる。
リオンは冷静だった。
「戦え」
つぶやく。
瞬間、リオンの目が変わる。
戦士アレクの目。
鋭く、冷たく。
体が動く。
最初の盗賊の剣を避ける。
踏み込む。
拳を腹に叩き込む。
「ぐはっ!」
盗賊が倒れる。
次の盗賊が斧を振り下ろす。
リオンは横に跳ぶ。
斧が地面に突き刺さる。
その隙に、脚を払う。
盗賊が転ぶ。
3人目の盗賊が槍で突く。
リオンは槍を掴む。
引き寄せる。
盗賊がバランスを崩す。
肘を顔面に叩き込む。
「ぎゃっ!」
盗賊が倒れる。
3人が地面に転がっている。
残り2人。
彼らは震えていた。
「化け物か……」
「逃げよう!」
二人が踵を返す。
走り出そうとした。
その時、リオンの口が勝手に動いた。
「待て」
低い声。
リオンの声じゃない。
盗賊団長ダグの声。
二人が立ち止まる。
振り返る。
リオンが……いや、ダグが立っている。
目つきが変わった。
冷酷で、計算高い目。
リオンの内側で、自我が叫ぶ。
『何だ! 勝手に出てくるな!』
だがダグは無視する。
体を完全に支配している。
ダグが盗賊たちに近づく。
ゆっくりと。
「お前ら、下手くそだな」
盗賊が困惑する。
「え……?」
ダグが続ける。
「5人で一人を襲って、3人やられる。話にならない」
盗賊の一人が反論する。
「でも、あんた強すぎるし……」
ダグが笑う。
「俺が教えてやる」
盗賊が目を丸くする。
「教える……?」
ダグが頷く。
「盗賊のやり方をな」
リオンの内側で、自我が暴れる。
『やめろ! 何を教える気だ!』
だがダグは止まらない。
倒れている盗賊を見る。
「まず、人数で襲うなら、同時に攻撃しろ。一人ずつじゃ意味がない」
盗賊が頷く。
「そ、そうか……」
ダグが続ける。
「それに、この街道は獲物が少ない」
盗賊が首を傾げる。
「じゃあ、どこが……」
ダグが森の奥を指す。
「この森には、別の道がある。商隊が通る道だ」
盗賊の目が輝く。
「商隊!」
ダグが頷く。
「そっちを襲え。金目の物が山ほどある」
盗賊が興奮する。
「すげえ! 兄貴、詳しいな!」
もう一人が言う。
「兄貴、仲間になってくれよ! 一緒にやろう!」
二人が近づく。
期待の目。
ダグが微笑む。
「断る」
リオンの内側で、自我が全力で押し返す。
『戻れ! 今すぐ戻れ!』
ダグが抵抗する。
『まだ話が……』
『戻れええええ!』
リオンの意志が勝つ。
ダグが引いていく。
リオンの目が元に戻る。
体の主導権が戻る。
盗賊が困惑する。
「え……?」
リオンは深呼吸した。
「はあ……」
盗賊の一人が問う。
「兄貴……じゃなくて、お前……」
リオンが答える。
「悪いな」
盗賊を見る。
「俺は善人だ」
盗賊が唖然とする。
「善人……?」
リオンが頷く。
「盗賊の仲間にはなれない」
荷物を拾う。
背負う。
「商隊を襲うのもやめろ。捕まるぞ」
盗賊が反論する。
「でも、さっき教えてくれたじゃ……」
リオンが首を横に振る。
「あれは俺じゃない」
盗賊が混乱する。
「どういうこと……」
リオンは答えない。
歩き出す。
盗賊を避けて。
倒れている3人を越えて。
「じゃあな」
手を振る。
去っていく。
盗賊二人は呆然と立っている。
「何だったんだ……あいつ……」
「わからん……」
倒れていた3人が起き上がる。
「痛っ……」
「やられた……」
5人が顔を見合わせる。
「あいつ、化け物か……」
「最初は強かったのに、途中で人が変わったみたいだった……」
「商隊の話、どうする?」
沈黙。
そして、一人が言う。
「……やめとこう」
他の4人も頷く。
「だな……」
「怖い……」
5人は森の奥に消えていった。
リオンは街道を歩き続けている。
「くそ……勝手に出てきやがって……」
つぶやく。
頭の中でダグの声が聞こえる。
『悪かったな。でも、あいつら下手すぎて見てられなかった』
リオンが答える。
「お前は盗賊団長だろ! 教えるなよ!」
『昔の話だ。今は記憶だけだ』
「それでも!」
リオンは立ち止まった。
深呼吸する。
「落ち着け……」
自分に言い聞かせる。
「怒っても仕方ない……」
歩き出す。
ダグの声がまた聞こえる。
『しかし、お前は本当に善人なんだな』
リオンが答える。
「当たり前だ」
『俺たち6666人の中には、悪人もいるぞ』
リオンは知っている。
暗殺者。
詐欺師。
盗賊。
犯罪者。
たくさんいる。
「わかってる」
つぶやく。
「でも、俺は俺だ」
ダグが笑う。
『面白い奴だ』
リオンは無視した。
歩き続ける。
太陽が高く昇っている。
暑い。
汗が流れる。
でも、止まらない。
町まで、もう少し。
リオンは考えた。
『勝手に人格が出てくる……』
これは問題だ。
前回は、自分で召喚した。
でも、今回は勝手に。
『制御が甘いのか……』
危険だ。
いつ、誰が出てくるかわからない。
リオンは決めた。
「もっと訓練しないと……」
つぶやく。
「完全に制御できるように……」
でも、どうやって?
答えはまだない。
リオンは歩き続けた。
街道を。
一人で。
でも、心には6666人。
その中には、善人も悪人もいる。
全員を制御しなければならない。
それがリオンの課題だ。
午後。
町が見えてきた。
城壁。
門。
人の姿。
リオンは安堵した。
「着いた……」
町に入る。
門番が見る。
「通行料は1銅貨だ」
リオンは財布から銅貨を出す。
渡す。
「どうぞ」
門をくぐる。
町の中。
人が多い。
活気がある。
リオンは宿を探した。
看板を見る。
「旅人の宿」
入る。
「いらっしゃい」
主人が声をかける。
「一泊いくらですか?」
「3銅貨だ。食事付きなら5銅貨」
リオンは考えた。
残りの金貨を計算する。
「食事付きでお願いします」
「部屋は2階だ」
鍵を受け取る。
階段を上る。
部屋に入る。
狭いが、清潔だ。
ベッドがある。
窓がある。
リオンは荷物を下ろした。
ベッドに倒れ込む。
「疲れた……」
天井を見つめる。
「盗賊か……」
つぶやく。
「これから、もっと危険なことがあるんだろうな……」
ダグの声が聞こえる。
『当然だ。世界を救うんだろ?』
リオンは微笑んだ。
「そうだな」
目を閉じる。
「休もう。明日、また出発だ」
静かな部屋。
窓から町の音が聞こえる。
リオンは眠りに落ちた。
次の町へ。
次の冒険へ。
リオンの旅は続く。




