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全員が俺だ ~6666回転生した記憶過積載者~  作者: 雨音トキ


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第20章 村の決断

昼過ぎ。

リオンは家で過ごしていた。

窓から外を見る。

村人が歩いている。

いつもの光景。

でも、どこか違う。

視線を感じる。

リオンに向けられた視線。

その時、扉がノックされた。

父が出る。

「はい」

村長の声がした。

「ダリウス、村長会議だ。すぐ来てくれ」

父が振り返る。

リオンを見る。

心配そうな顔。

「わかった。すぐ行く」

扉が閉まる。

父が母を見た。

「エレナ……」

母が頷く。

「行ってらっしゃい」

父が出て行く。

リオンは立ち上がった。

「母さん、あれ……」

母が首を横に振る。

「わからないわ。でも……」

言葉が続かない。

リオンは窓から外を見た。

村の中央、集会所に村人が集まっている。

嫌な予感がする。

時間が過ぎる。

1時間。

2時間。

父が帰ってこない。

母が落ち着かない様子で部屋を歩く。

リオンはじっと座っている。

3時間後。

扉が開いた。

父が戻ってきた。

顔が暗い。

母が駆け寄る。

「どうだったの?」

父が答えない。

リオンを見る。

「リオン……」

リオンは立ち上がった。

「何があったの?」

父が深呼吸する。

「村長会議で……お前のことが議題になった」

リオンは息を呑んだ。

「俺の……こと……」

父が頷く。

「村人が……お前を恐れている」

母が叫ぶ。

「でも、リオンは村を守ったのよ!」

父が視線を落とす。

「わかってる。でも……」

リオンが問う。

「何が決まったの?」

父が顔を上げた。

苦しそうな顔。

「お前を……村から出すことになった」

リオンは固まった。

「追放……?」

母が父の腕を掴む。

「そんな! ダリウス、反対したでしょう!」

父が頷く。

「した。必死に」

父がリオンを見る。

「村長も迷っていた。お前が村を守ったことは認めている」

「でも……?」

父が続ける。

「村人の大半が怯えている。子供たちが夜泣きをする。お前の目が怖いって」

リオンは拳を握った。

「俺は……」

父が手を上げる。

「お前のせいじゃない。わかってる」

母が涙を流す。

「じゃあ、なんで……」

父が答える。

「多数決だった。村長一人じゃ決められない」

リオンは窓の外を見た。

村が見える。

守った村。

でも、追放される。

「いつ……出て行くの……」

父が答える。

「明日の朝」

短い時間。

リオンは頷いた。

「わかった」

母が叫ぶ。

「わかったじゃないわ! リオン、あなたは何も悪くない!」

リオンが母を見る。

「大丈夫、母さん」

微笑む。

「俺、世界を救うんだろ? ここにいても始まらない」

母が泣く。

「でも……」

リオンが母を抱きしめる。

「ありがとう。育ててくれて」

母が背中を掴む。

「リオン……」

父も近づいて、二人を抱きしめた。

三人で抱き合う。

しばらく、誰も何も言わなかった。

夜。

リオンは部屋で荷物をまとめていた。

服。

ノート。

ペン。

少しの食料。

それだけ。

窓から外を見る。

村は静かだ。

でも、緊張した静けさ。

その時、鐘が鳴った。

警鐘だ。

リオンは窓を開けた。

外から叫び声が聞こえる。

「帝国軍だ!」

「また来た!」

「今度は大軍だ!」

リオンは階段を駆け下りた。

父が武器を手に取っている。

「リオン、部屋にいろ!」

「ダメだ。俺も戦う」

母が止める。

「リオン、危険よ!」

リオンが首を横に振る。

「最後に……村を守る」

外に飛び出す。

村の入口に、帝国軍が並んでいる。

100人。

前回の5倍。

隊長が馬に乗っている。

「村人ども! 今度こそ従え!」

村人が震えている。

武器を持っているが、数が違いすぎる。

リオンは前に出た。

「俺が相手だ」

隊長がリオンを見た。

「小僧か。前回の生き残りから聞いた」

馬から降りる。

「だが、今回は違う。本気で潰す」

剣を抜く。

「かかれ!」

100人の兵士が襲いかかる。

村人が悲鳴を上げる。

リオンは村の中央に走った。

広場の真ん中に立つ。

深呼吸する。

「これが……最後だ……」

つぶやく。

目を閉じる。

精神世界に入る。

円形劇場。

6666人が座っている。

全員がリオンを見ている。

リオンが叫ぶ。

「全員、出ろ!」

6666人が立ち上がる。

「ついに……」

「解放か……」

「行くぞ!」

一斉に光となって、リオンに飛び込む。

現実世界。

リオンの体が光り始める。

眩い光。

村人が目を覆う。

帝国軍が止まる。

「何だ……あれは……」

リオンの目が開く。

金色に輝く瞳。

体が光に包まれている。

「戦え!」

戦士アレクが現れる。

剣を振るう。

5人の兵士が吹き飛ぶ。

次の瞬間。

「隠れよ!」

忍者カゲロウに切り替わる。

影に溶ける。

背後に回る。

10人を無力化。

「燃やせ!」

魔法使いリズが現れる。

炎が渦巻く。

兵士たちが逃げ惑う。

人格が次々切り替わる。

戦士。

魔法使い。

忍者。

狂戦士。

弓使い。

槍使い。

剣士。

暗殺者。

制御なし。

ただ、全員が解放されている。

リオンの体が光の中で揺らめく。

人格が1秒ごとに変わる。

いや、同時に複数が現れる。

右手が戦士。

左手が魔法使い。

足が忍者。

声が狂戦士。

帝国軍が恐怖に染まる。

「化け物だ!」

「逃げろ!」

だが、逃げられない。

リオンの動きが速すぎる。

10分。

ただ10分間。

帝国軍100人が全滅した。

倒れている。

気絶している。

逃げている。

村の広場に、リオンだけが立っている。

光が消える。

リオンの体が揺れた。

「うっ……」

膝をつく。

口から血が流れる。

「がはっ……」

大量の血。

体が限界を超えた。

リオンは倒れた。

地面に崩れ落ちる。

意識が遠のく。

『もう……ダメか……』

最後の思考。

暗転。

朝。

リオンは目を覚ました。

自分の部屋。

ベッドに寝ている。

「……生きてる……」

つぶやく。

体が重い。

動かない。

扉が開いた。

母が入ってくる。

「リオン!」

駆け寄る。

「目が覚めたのね!」

涙を流している。

リオンは微笑んだ。

「母さん……」

母が手を握る。

「よかった……本当によかった……」

リオンが問う。

「村は……?」

母が頷く。

「無事よ。あなたが守ってくれた」

リオンは安堵した。

「よかった……」

母が立ち上がる。

荷物を持ってくる。

リオンのリュック。

「これ……」

母が涙を拭う。

「行きなさい」

リオンは目を見開いた。

「母さん……」

母が微笑む。

泣きながら。

「世界を救うために」

リオンは起き上がろうとする。

体が痛い。

でも、動く。

母が支える。

「無理しないで」

リオンは立ち上がった。

ふらつく。

母が肩を貸す。

二人で階段を下りる。

玄関に、父がいた。

荷物を持っている。

「リオン」

「父さん……」

父が荷物を渡す。

「食料と水。それと、少しの金貨」

リオンは受け取った。

「ありがとう……」

父が肩を叩く。

「強く生きろ」

リオンは頷いた。

三人で外に出る。

村人が集まっている。

見送りではない。

ただ、見ている。

リオンは村人を見た。

誰も目を合わせない。

リオンは歩き出した。

母と父が付いてくる。

村の出口まで。

そこで、リオンは振り返った。

「母さん、父さん」

二人を見る。

「ありがとう。全部」

母が泣く。

「リオン……」

父が涙を堪える。

「元気でな」

リオンは微笑んだ。

「うん」

踵を返す。

歩き出す。

村を出る。

後ろから、母の声。

「リオン! また会いましょう!」

リオンは手を振った。

振り返らない。

涙が出そうだから。

前を向く。

道が続いている。

長い道。

リオンは歩く。

村が遠ざかる。

振り返らない。

ただ、前を向く。

「さよなら……」

小さく、つぶやく。

涙が頬を伝う。

でも、止まらない。

歩き続ける。

新しい旅が始まる。

世界を救う旅が。

リオンは一人、道を歩いた。

空が広い。

雲が流れている。

「これから……どうなるんだろう……」

つぶやく。

答えはない。

でも、リオンは進む。

前に。

運命に向かって。

村が完全に見えなくなった。

リオンは立ち止まった。

最後に、振り返る。

村の方角を見る。

「守れた……」

つぶやく。

「それだけで、十分だ」

また前を向く。

歩き出す。

一歩。

また一歩。

リオンの旅が始まった。

6666人の記憶を持つ少年の。

世界を救うための。

長い、長い旅が。


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