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全員が俺だ ~6666回転生した記憶過積載者~  作者: 雨音トキ


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第18章 母の告白

朝。

リオンは屋根の上で目を覚ました。

そのまま眠ってしまったらしい。

体が冷えている。

起き上がる。

村はもう動き出していた。

煙突から煙が上がる。

畑に向かう村人。

井戸に集まる女性たち。

普通の朝。

でも、リオンにとっては違う。

窓から部屋に戻る。

体を拭う。

着替える。

階段を下りる。

食卓には父がいた。

朝食を食べている。

「おはよう、リオン」

「おはよう」

短い挨拶。

父は新聞を読んでいる。

リオンは椅子に座った。

パンを一切れ取る。

噛む。

味がしない。

母が台所から出てきた。

「リオン、昨夜はどこに……?」

心配そうな顔。

「屋根」

「屋根? 危ないじゃない」

リオンは何も答えなかった。

黙ってパンを食べる。

父が新聞を置いた。

「リオン、今日は家にいろ。村には出るな」

「……なんで?」

父が視線を逸らす。

「村人が……少し警戒してる。時間が必要だ」

リオンは頷いた。

「わかった」

それ以上は何も言わない。

朝食が終わる。

父が仕事に出る。

母が皿を片付ける。

リオンは部屋に戻ろうとした。

その時、母が呼び止めた。

「リオン、待って」

振り返る。

母が真剣な顔をしている。

「話があるの」

リオンは立ち止まった。

「……何?」

母が食卓の椅子を引く。

「座って」

リオンは座った。

母も向かいに座る。

二人きりの食卓。

静かな部屋。

時計の音だけが響く。

母が深呼吸した。

「リオン、あなたに話さなきゃいけないことがある」

リオンは母を見た。

母の顔が緊張している。

「大事な話よ」

リオンは頷いた。

「……聞く」

母がテーブルに手を置く。

震えている。

「リオン、あなたは……私が産んだ子じゃない」

リオンは固まった。

「……え?」

母が続ける。

「本当のことを言うわ。あなたは……私たちの本当の子供じゃない」

リオンの心臓が激しく打つ。

「どういう……こと……?」

母が視線を落とす。

「3年前、私たちは森であなたを見つけたの」

「見つけた……?」

母が頷く。

「そう。森の奥で。赤ん坊のあなたが、一人でいた」

リオンは呼吸が浅くなる。

「俺は……拾われた子……?」

母が顔を上げる。

涙が滲んでいる。

「ごめんなさい。でも、あなたを見つけた瞬間、私は決めたの。この子を育てるって」

リオンは机を掴んだ。

「なんで……今まで黙ってたの……」

母が涙を拭う。

「言えなかった。あなたが普通に育ってほしかった」

リオンは立ち上がった。

椅子が音を立てる。

「普通? 俺のどこが普通なんだ!」

母が驚く。

「リオン……」

リオンは叫ぶ。

「俺の中には6666人いるんだ! どうやって普通に育つんだ!」

母が立ち上がる。

「リオン、落ち着いて……」

リオンは壁を殴った。

小さな拳。

でも、怒りが込められている。

「俺は……何なんだ……誰なんだ……」

母が近づく。

「リオン、聞いて。あなたを拾った時、すぐわかったの」

リオンが振り返る。

「何が……」

母が真剣な目で言う。

「あなたは普通の赤ん坊じゃなかった」

リオンは息を呑んだ。

「赤ん坊だったのに、目が……普通じゃなかった」

「目……?」

母が頷く。

「深い目をしてた。まるで、たくさんのことを見てきたような……老人みたいな目」

リオンは震えた。

「最初から……わかってたのか……」

母が近づく。

「怖かったわ。でも、抱き上げた時、あなたが泣いたの。普通の赤ん坊みたいに」

母が微笑む。

涙を流しながら。

「その時、思ったわ。この子は特別かもしれない。でも、この子は私の子だって」

リオンは涙が出そうになった。

「母さん……」

母が続ける。

「あなたを拾った場所に、古い祭壇があった」

リオンは目を見開いた。

「祭壇……?」

母が頷く。

「石で作られた、古代の祭壇。文字が刻まれてたの」

「何て……書いてあったの……」

母が真剣な顔で答える。

「『救世の器』って」

リオンは後ずさった。

「救世の……器……」

6666の声が反応する。

小さく、ざわめく。

「そうだ」

「俺たちの器」

「選ばれた存在」

リオンは頭を抱えた。

「やめろ……静かにしてくれ……」

母が駆け寄る。

「リオン!」

リオンが叫ぶ。

「俺は……作られた存在なのか! ただの器なのか!」

母が肩を掴む。

「違う!」

強い声。

リオンが母を見る。

母が涙を流しながら言う。

「あなたは器かもしれない。でも、それだけじゃない」

母がリオンを抱きしめる。

「あなたは私の息子。それだけは本当」

リオンは母の胸で震えた。

「でも……血は繋がってない……」

母が頭を撫でる。

「血なんて関係ない。あなたを育てた。笑顔を見た。泣き顔を見た。怒った顔も見た」

母が優しく言う。

「それが親子よ。血じゃない。心よ」

リオンは涙が溢れた。

「母さん……」

母が背中を撫でる。

「あなたがどこから来たのか、私にはわからない。でも、あなたは私の子」

リオンは泣き続けた。

言葉が出ない。

ただ、母の温もりを感じる。

しばらくして、リオンは顔を上げた。

涙を拭う。

震える声で言う。

「ありがとう……母さん」

母が微笑む。

優しい顔。

「いつでもそばにいるからね」

リオンは頷いた。

でも、心の中で疑問が渦巻く。

『なぜ俺が……』

『なぜ6666人も……』

『救世の器って……何を救うんだ……』

答えは見つからない。

母が椅子に座る。

リオンも座り直す。

二人は向かい合っている。

沈黙。

でも、嫌な沈黙じゃない。

母が口を開く。

「リオン、焦らなくていいのよ」

リオンが母を見る。

「少しずつ、答えが見つかるわ」

リオンは窓の外を見た。

村が見える。

俺を避ける村。

俺を怖がる村。

でも、ここに母がいる。

父がいる。

俺を愛してくれる人がいる。

リオンは母を見た。

「母さん」

「何?」

「俺……知りたい」

母が首を傾げる。

「何を?」

リオンが答える。

「なんで俺が生まれたのか。なんで6666人も記憶があるのか」

母が頷く。

「わかったわ」

母が立ち上がる。

リオンの肩に手を置く。

「一緒に探しましょう。でも、今日はゆっくり休んで」

リオンは微笑んだ。

涙の跡が残っている。

でも、少しだけ希望が見えた気がする。

俺は器。

でも、ただの器じゃない。

俺にはまだわからないことが多い。

でも、母がいる。

それだけで、少し強くなれる気がする。

母が台所に向かう。

「お昼ご飯、作るわね」

リオンが頷く。

「うん」

母が料理を始める。

リオンは食卓に座ったまま、考えた。

救世の器。

俺は何を救うんだ?

誰を救うんだ?

答えはまだない。

でも、いつか見つける。

必ず。

窓の外、雲が流れている。

青い空。

リオンはそれを見つめた。

「俺は……リオン」

つぶやく。

「器でも、俺はリオンだ」

小さな決意。

でも、確かな決意。

母の声が聞こえる。

「リオン、ご飯よ」

リオンは立ち上がった。

食卓に戻る。

母が微笑む。

「たくさん食べなさい」

リオンは頷いた。

「うん」

スープを飲む。

温かい。

母の愛情が詰まっている。

パンを食べる。

ゆっくりと。

母が見守っている。

食事が終わる。

母が皿を片付ける。

リオンは手伝おうとした。

母が首を横に振る。

「いいのよ。あなたは休んで」

リオンは頷いた。

部屋に戻る。

ベッドに横になる。

天井を見つめる。

6666の声が聞こえる。

今日は静かだ。

リオンは目を閉じた。

少しだけ眠ろう。

明日、また考えよう。

答えを探そう。

リオンの呼吸が深くなる。

眠りに落ちる。

静かな部屋。

窓から光が差し込む。

リオンは眠っている。

穏やかな顔で。

母が扉を開けて覗く。

微笑む。

そっと扉を閉める。

「おやすみ、リオン」

小さく囁く。

部屋に静寂が戻る。

リオンは夢を見ている。

どんな夢かはわからない。

でも、穏やかな夢であることを願う。

午後の光が部屋を満たす。

温かい光。

リオンはまだ眠っている。

時間が過ぎる。

ゆっくりと。

夕方が近づく。

リオンが目を覚ます。

「ん……」

体を起こす。

窓の外を見る。

夕日が沈み始めている。

「もうこんな時間か……」

リオンは立ち上がった。

机に向かう。

ノートを開く。

ペンを取る。

書く。

『俺は誰だ?』

『なぜ生まれた?』

『何を救う?』

大きく、力強く。

そして、その下に書く。

『答えを見つける』

リオンはノートを閉じた。

窓の外を見る。

村が夕日に染まっている。

赤い村。

リオンは思った。

明日、また新しい一日が始まる。

その時、俺は何を知るのか。

それはまだ、わからない。

でも、進む。

前に。

答えを探して。

リオンは窓を閉めた。

部屋を出る。

階段を下りる。

母が夕飯の準備をしている。

「起きたの?」

「うん」

母が微笑む。

「もうすぐ夕飯よ」

リオンは頷いた。

食卓に座る。

父が帰ってくる。

「ただいま」

「おかえりなさい」

母と父が言葉を交わす。

父がリオンを見る。

「リオン、大丈夫か?」

リオンは頷いた。

「大丈夫」

父が微笑む。

「そうか」

三人で食卓を囲む。

夕飯が始まる。

会話は少ない。

でも、温かい空気。

リオンは思った。

俺には家族がいる。

それだけで、十分だ。

今は。

夕飯が終わる。

リオンは部屋に戻った。

ベッドに座る。

窓の外、星が見え始めている。

リオンは星を見つめた。

「明日……何が待ってるんだろう……」

つぶやく。

答えはない。

でも、リオンは待つ。

明日を。

答えを。

リオンは横になった。

目を閉じる。

今日は長い一日だった。

母の告白。

自分の出生。

救世の器。

たくさんのことを知った。

でも、まだ足りない。

もっと知りたい。

リオンは眠りに落ちた。

静かな夜。

星が輝いている。

リオンは夢を見ている。

今度は何の夢だろう。

それは、リオンだけが知っている。


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