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全員が俺だ ~6666回転生した記憶過積載者~  作者: 雨音トキ


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第17章 「怪物」の烙印

翌朝。

リオンは家を出た。

村の井戸に水を汲みに行く。

母が頼んだ仕事だ。

「行ってきます」

「気をつけてね」

母の声が少し心配そうだった。

リオンは桶を持って歩く。

村人が見る。

視線を感じる。

でも、誰も話しかけてこない。

井戸に着く。

村人が数人、水を汲んでいる。

リオンが近づくと、村人が後退する。

「あ……」

小さく声を上げて、離れる。

リオンは気にせず井戸に近づく。

桶を井戸に下ろす。

水を汲む。

引き上げる。

その間、村人はリオンを遠くから見ている。

囁き声が聞こえる。

「あの子……」

「昨日、アニーが怖がってたって」

「目が……人間じゃないって……」

リオンは桶を持って立ち上がる。

村人を見る。

村人が目を逸らす。

リオンは何も言わず、家に戻ろうとした。

その時、子供たちが走ってきた。

リオンを見て、止まる。

「あ、リオンだ」

「逃げよう」

子供たちが走り去る。

リオンは立ち尽くした。

「逃げられた……」

桶を持ったまま、家に戻る。

途中、村の広場を通る。

村人が作業をしている。

リオンが通ると、作業が止まる。

みんながリオンを見る。

そして、また作業に戻る。

誰も話しかけてこない。

挨拶もしない。

リオンは家に着いた。

桶を母に渡す。

「ただいま」

母が受け取る。

「おかえり。ありがとう」

母は気づいている。

リオンの表情が暗いことに。

「リオン……」

リオンは首を横に振った。

「大丈夫」

部屋に戻る。

ベッドに座る。

窓から外を見る。

村人が歩いている。

普通の一日。

でも、リオンには普通じゃない。

孤立している。

避けられている。

リオンは視線を落とした。

「仕方ない……」

つぶやく。

でも、胸が痛い。

昼過ぎ。

リオンは外に出た。

散歩に行こうと思った。

村の外れに向かう。

畑がある。

村人が作業をしている。

リオンが通りかかると、村人が鍬を止める。

見る。

そして、また作業に戻る。

言葉はない。

リオンは畑の横を通り過ぎる。

後ろから囁き声。

「触るな、呪われる」

リオンは振り返らなかった。

歩き続ける。

村の外れ。

そこに、アニーがいた。

一人で花を摘んでいる。

リオンは立ち止まった。

「アニー……」

アニーが気づく。

振り返る。

リオンを見る。

顔が強張る。

「リオン……」

リオンが一歩近づく。

「昨日は……大丈夫だった?」

アニーが一歩後退する。

「う、うん……大丈夫……」

リオンがもう一歩近づく。

「よかった……」

アニーが二歩後退する。

「あ、ありがとう……助けてくれて……」

声が震えている。

リオンは気づいた。

アニーが怯えている。

俺を見て。

「アニー……俺、怖い?」

アニーが目を逸らす。

「そんな……ことない……」

嘘だ。

声が震えている。

体が震えている。

リオンは一歩下がった。

「ごめん……」

アニーが首を横に振る。

「ううん……」

でも、顔は恐怖に染まっている。

リオンは踵を返した。

「じゃあ、また」

歩き去る。

後ろから、アニーの小さな声。

「ごめんなさい……」

リオンは振り返らなかった。

胸が張り裂けそうだった。

夕方。

リオンは村の中を歩いていた。

特に目的はない。

ただ、歩いているだけ。

酒場の前を通りかかる。

中から声が聞こえる。

「あの子、危険だ」

「人間じゃない」

「化け物だ」

リオンは立ち止まった。

酒場の窓から中を覗く。

村人が数人、酒を飲んでいる。

「村から追い出すべきだ」

「でも、村を守ってくれたんだぞ」

「それはそうだが……でも、怖い……」

「目が……あの目は人間じゃない……」

リオンは拳を握りしめた。

窓から離れる。

歩き出す。

速く。

家に戻る。

部屋に入る。

扉を閉める。

ベッドに倒れ込む。

「化け物……」

つぶやく。

そう呼ばれた。

村人に。

俺を知っている人たちに。

俺を助けた人たちに。

リオンは枕に顔を埋めた。

「俺は……化け物なのか……」

6666の声が聞こえる。

「そうだ」

「違う」

「お前は特別だ」

「特別は異常だ」

「人間じゃない」

「でもお前は生きている」

様々な声。

リオンは叫びたかった。

でも、声が出ない。

ただ、枕を握りしめるだけ。

母が部屋に入ってきた。

「リオン……」

ベッドに座る。

リオンの背中を撫でる。

「大丈夫よ」

リオンは顔を上げた。

涙が出ていた。

「母さん……俺……」

母が抱きしめる。

「わかってる。あなたは優しい子。私が一番知ってる」

リオンは母の胸で泣いた。

「でも……村の人が……」

母が頭を撫でる。

「時間がかかるわ。でも、いつかわかってくれる」

リオンは首を横に振った。

「わからない……ずっと……怖がられる……」

母が優しく言う。

「それでも、あなたは生きる価値がある。私とお父さんは、あなたを愛してる」

リオンは泣き続けた。

母の胸で。

子供のように。

いや、リオンは子供だ。

3歳の子供。

でも、6666人の記憶を持つ。

その重さに、押し潰されそうになっている。

母が歌を歌い始めた。

子守歌。

優しい声。

リオンは少しずつ落ち着いてきた。

「ありがとう……母さん……」

母が微笑む。

「いつでもいるからね」

部屋を出て行く。

リオンは一人残された。

窓から外を見る。

夕日が沈んでいる。

村が赤く染まっている。

美しい風景。

でも、リオンには冷たく見える。

「化け物……」

その言葉が頭から離れない。

リオンは屋根の上に登った。

窓から這い出て。

屋根に座る。

村を見下ろす。

家々。

畑。

井戸。

広場。

俺が守った村。

でも、俺を受け入れない村。

リオンは膝を抱えた。

「俺は……どこにいればいい……」

6666の声が答える。

「ここだ」

「いや、別の場所だ」

「お前の居場所はない」

「いや、ある。お前の心の中に」

様々な声。

リオンは空を見上げた。

星が見え始めている。

無数の星。

「俺も……あの星みたいに……遠くから見られるだけなのかな……」

つぶやく。

答えはない。

ただ、風が吹くだけ。

冷たい風。

リオンは震えた。

寒いからじゃない。

孤独が、寒い。

屋根の上で、リオンは一人座り続けた。

夜が深まっていく。

星が増えていく。

でも、リオンの心は暗いままだった。


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