第10章 複数人格連続召喚
翌朝。
村人会議が開かれた。
村長の家。
村の男たちが集まっている。
父がリオンの情報を伝える。
「帝国軍が来る。3日以内だ」
村人がざわめく。
「本当か?」
「誰から聞いた?」
父が答える。
「息子が偵察した」
沈黙。
村人が顔を見合わせる。
「あの子が……」
「信用できるのか?」
村長が手を上げる。
「落ち着け。とにかく、警戒を強めよう。見張りを増やす。武器を用意する」
村人が頷く。
会議は終わった。
だが、不安は残る。
帝国軍が本当に来るのか。
来たとして、村は守れるのか。
2日後の夜明け。
見張りの鐘が鳴り響いた。
村人が飛び起きる。
リオンも目を覚ました。
窓から外を見る。
村の入口。
松明の明かりが見える。
たくさんの明かり。
20人以上。
帝国軍が来た。
リオンは服を着て、外に出た。
村人が集まっている。
武器を持っている。
槍、斧、鍬。
だが、顔は恐怖に染まっている。
帝国軍の隊長が前に出た。
大柄な男。
重装鎧。
剣を抜く。
「この村を帝国領とする。抵抗すれば皆殺しだ」
村人が後退する。
村長が前に出る。
「待ってくれ。話し合おう」
隊長が笑う。
「話し合いは終わった。降伏するか、死ぬか選べ」
村人がざわめく。
リオンは前に出た。
小さな体。
だが、真っ直ぐ隊長を見る。
「俺がやる」
村人が驚く。
「リオン!」
母が叫ぶ。
「ダメ!」
リオンは振り返らない。
隊長を見つめる。
「お前たちを倒す」
隊長が笑った。
「子供が何を言ってる」
リオンは深呼吸した。
『できる。俺にはできる』
心の中で確認する。
戦士アレク。
忍者カゲロウ。
魔法使いリズ。
全員の力を借りる。
連続で。
「戦え!」
視界が変わる。
戦士アレクが降臨。
リオンの目が鋭くなる。
地面から棒を拾う。
剣の代わり。
構える。
帝国兵が5人、襲いかかる。
アレクが棒を振るう。
1人目の兵士の剣を弾く。
反転。
2人目の兵士の脇腹を打つ。
兵士が倒れる。
3人目が槍を突く。
アレクが回避。
棒で槍を叩き折る。
膝を蹴る。
兵士が倒れる。
4人目と5人目が同時に襲う。
アレクが跳ぶ。
空中で回転。
着地と同時に棒を薙ぐ。
2人とも倒れる。
5人撃破。
だがリオンの体が悲鳴を上げる。
『きつい……でも、まだだ』
即座に封印。
「我が名においてリオンに戻れ!」
アレクが引く。
「まだ戦えるぞ」
『ありがとう。次を呼ぶ』
視界が戻る。
一瞬の隙。
兵士が3人、背後から襲う。
リオンは叫ぶ。
「隠れよ!」
忍者カゲロウが降臨。
体が影のように軽くなる。
兵士の攻撃を回避。
影に溶け込む。
兵士が見失う。
「どこだ!」
カゲロウが背後に回る。
兵士の首筋を打つ。
気絶。
次の兵士。
足を払う。
転ばせる。
3人目。
腕をひねる。
武器を落とさせる。
3人無力化。
リオンの鼻から血が出る。
『まずい……体が……』
封印。
「我が名においてリオンに戻れ!」
カゲロウが引く。
視界が戻る。
頭がくらくらする。
でも、まだ10人残っている。
隊長も含めて。
『もう一度……』
リオンは叫ぶ。
「燃やせ!」
魔法使いリズが降臨。
手に魔力が集まる。
炎の球。
兵士の群れに向かって放つ。
爆発。
10人が吹き飛ぶ。
地面に倒れる。
動かない。
隊長だけが立っている。
傷ついているが、まだ戦える。
「小僧……貴様……」
リオンの口から血が出る。
体が震える。
『限界……でも……』
リズを封印。
「我が名においてリオンに戻れ!」
リズが引く。
「無理しないで」
視界が戻る。
リオンの膝が折れる。
倒れそうになる。
隊長が剣を構える。
「終わりだ」
襲いかかる。
リオンは棒を構えた。
震える手。
だが、諦めない。
『まだだ……まだ戦える……』
「戦え!」
アレクが再び降臨。
だが、体が応えない。
動きが鈍い。
隊長の剣が迫る。
アレクが棒で受け止める。
火花が散る。
押し負ける。
「くそ……」
リオンの内側で、全ての人格が叫ぶ。
「頑張れ!」
「負けるな!」
「お前ならできる!」
6666の声。
リオンに力が戻る。
アレクが押し返す。
「うおおお!」
棒を振り上げる。
隊長の剣を弾き飛ばす。
反転。
隊長の頭を打つ。
隊長が倒れる。
動かない。
アレクが棒を落とす。
「勝った……」
封印する余力もない。
アレクが自然に引いていく。
リオンの体が元に戻る。
その場で倒れる。
地面に膝をつく。
両手をつく。
血を吐く。
村人が歓声を上げる。
「やった!」
「勝った!」
「リオンが守ってくれた!」
母が駆け寄る。
「リオン!」
父も来る。
「大丈夫か!」
リオンは答えようとした。
だが声が出ない。
視界が暗くなる。
意識が遠のく。
『これが……限界か……』
最後にそう思った。
そして、暗闇に沈んだ。
遠くで、声が聞こえる。
母の泣き声。
父の声。
村人の声。
でも、リオンは答えられない。
ただ、暗闇の中を漂っていた。
精神世界。
6666人が立っている。
全員が拍手している。
戦士アレクが微笑む。
「よくやった」
商人グレイが頷く。
「完璧だ」
治療師アンナが心配そうに言う。
「でも、無理しすぎよ」
農民トムが言う。
「休め。ゆっくり」
6666人が口々に言う。
「よく頑張った」
「お前は強い」
「俺たちの誇りだ」
リオンは微笑んだ。
心の中で答える。
『ありがとう……みんな……』
そして、深い眠りに落ちた。
平和な眠り。
村は守られた。
それだけで十分だった。




