花火大会の夜➂
……花火大会なんて外で暑いし、人混みで移動は大変だし。
快適な部屋で動画でも見てる方がよっぽどいい。
だから――俺はいいよ。
そう言った自分の声がどこかで響く。
いつの記憶だったろうか……思い出せない。
覚えているのは諦めみたいな感情のようなものだけだ――
花火大会の最寄りの駅に着くと、そこはもうすでにお祭り状態だった。
屋台が並んで、人の声と音楽がごちゃ混ぜになっている。
月島と小波さんは浴衣できていた。
月島は動きづらいと文句を言いながらも、どこか楽しそうだ。
小波さんは裾を気にしながら、少し控えめについてきている。
「浴衣の女の子と花火」
そのシチュエーションだけで陽斗は崩れるほど感涙していた。
佐伯も多分、同じだっただろう。
まったく……男ってやつは、どうしてこう単純なんだろうな。
……俺も含めて。
「よっしゃ、まずは腹ごしらえだな!」
陽斗が当然みたいに言って、先頭を歩く。
焼きそば、たこ焼き、かき氷。
それぞれ好きなものを手に取って、立ち止まってはみんなでワイワイと食べる。
くじ引きの屋台では陽斗が家庭用花火セットを当てた。
「それ絶対今日いらないやつ!」
当然みたいに、全員からツッコミが入る。
そんな調子で、俺たちは祭りを回り続けた。
なんだか、もう数日分は笑ったように思える。
――夕方。
花火の開始時間が近づくにつれて、人はどんどん増えていった。
海沿いの大きな公園は、どこもすでに人で埋まっていた。
「うっわ、無理だな、ここ」
陽斗が遠くまで見渡しながら言う。
「どこか落ち着いて見れる場所があればいいんだけど」
「仕方ねえ、手分けしていい場所さがそうぜ」
「バカね」と月島が即座に返す。
「こんなとこで散り散りになったら合流できないわよ」
結局みんなで移動することになったが、どこに行っても似たようなものだった。
「ここもあんま見えないね」
「……しょうがねえ、もう少し歩くかー」
--ドン。
遠くで、最初の花火の音が鳴った。
「そうだ、小波さん。これ……」
と、振り返って気付く。
さっきまで横にいた小波さんの姿が見えなくなっていた。




