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豁ウ遉セ莨壻ココ縲�15譛�

40歳になった。

気付いたらなっていた、という方が正しい。


目覚ましは鳴る前に止めた。

決まった時間に起きて、決まった時間に電車に乗り、決まった席で仕事をする。

誰とも深く関わらず、波風も立てず、ただ一日を消費していく。

そんな生活を、もう何年続けたのだろう。


俺は小さな企業で経理事務の仕事をしている。

正確さと効率だけが求められる、数字の世界。

金額を確認して、仕訳を切って、会計ソフトに入力、差異があれば原因を洗い出す。

必要なのは会っているか、間違っているか、だけ。


いつの間にか課長と呼ばれる立場になっていた。

部下は何人かいるが、昼飯を一緒に食べる事もない。

ただ相談されれば話は聞くし、業務上の指導なんかもする。

でも、それ以上に踏み込む事はしない。


淡々と指示を出し「問題ありません」と言われればそれ以上は聞かない。

問題があれば処理する。

誰かが責められそうになれば、事実を拾い上げて「現状では断定できません」と言う。

余計な事をしないほうが、面倒がなくて済む。


深入りはしない。

期待もしまい。

される事も望まない。

その方が楽だと知ってしまったからだ。

後悔しているわけではないが、胸のどこかにずっと空洞がある。


何かを選ばなかったせいで開いた穴。

決断しなかった分だけ広がった隙間。


なぜ、俺はこんなふうに生きているんだろうか。

何度も思った。

でも答えが返ってこない事にももう慣れてしまった。


人生の分岐点なんてものは何度もあったはずだ。

でもその度に、俺は一歩引いた。

様子をみて、流れに任せて、誰か通った無難な道をなぞるように歩いてきた。


信じる事が苦手だった。

人も……自分も。

だから決断ができなくなっていった。

決断しなければ裏切られることも、間違える事もない。


いや、違うか。

それは後から、身に着けた言い訳だ。

もっと前に決定的に何かが壊れた瞬間があった。


思い出せる。最初のきっかけ。

あれは、高校の頃だ。

文化祭の準備期間。

クラスで集めた会費が消えた。

誰かが盗んだんじゃないかという、疑い。

疑われたのは集計係だった大人しくて目立たない、そんなやつだった。


証拠なんてなかった。

でも、空気はそいつを犯人にした。

誰も決定打を持っていないのに。

誰も責任を取る覚悟もないのに。


そして、そいつはいなくなった。

自殺だったと聞かされた。

教室で、担任が淡々と告げた声。

泣くやつも、黙るやつも、目を逸らすやつもいた。

俺は……どんな感情だっただろうか……。


あの日からだ。

何かを決断する事を避けるようになったのは。

人との関わりを持たないようになったのは。

誰かを救えなかった後悔を、関わらなければ傷つかないという形にすり替えて生きてきただけなのかもしれない。


窓の外では夕方の光が街を染めている。

あの日と同じように、世界は何事もなかったかのように続いていくだろう。


もしーー

あいつがここにいたら。

今の俺をみて何て言うのだろうか。

「逃げ続けた結果がそれか?」とでも言うだろうか。

わからない。


もし、やり直せるなら。

あの時立ち上がっていれば。

信じると口に出していれば。


それだけで、あいつは生きる事を選んでくれただろうか。

答えは返ってこないだろう。

当然だ。

俺には聞く資格すらない。


それでもこの胸の奥に残る問いだけは消えない。

もし、あいつが答えてくれるなら。

勇気を出せなかった俺に、あいつが何かを言ってくれるなら、俺はその言葉を、許しとして受け取ってしまうのだろうか。


暗くなってきたな。

さて、もう行かなければ。


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